人間科学研究科 新川裕奈
このキャンプに参加して一番に思ったのは、「もっと早くに知って参加したかった」ということである。このキャンプでは、日中韓の歴史や文化について深い学びが得られただけでなく、あらゆるコミュニケーションにおいて普遍的に求められる、重要な考え方やスキルについても学ぶことができた。そして、今後も繋がり続け、互いに良い刺激を与え合える関係を築けたら嬉しいなと強く思える、貴重な出会いもたくさんあった。
キャンプを通して最も印象に残ったのは、メインプロジェクトの合間に取り入れられているたくさんのアイスブレイクが、非常に考え込まれていたことである。特に感銘を受けたのはバーンガというゲームで、異文化コミュニケーションの難しさを痛感した。それぞれの文化が持つ異なる「正しさ」を理解し、受け入れ、尊重することの大切さに気づく。異文化コミュニケーションの縮図を体験したようで、非常に重要だが忘れてしまいがちなことにハッと気づかされるような感動があった。
また、他の様々なゲームでも、3カ国の文化の違いを知る機会があった。ジェスチャーゲームでは、「麻雀」と書かれたカードを見て、日本人はゲームの麻雀をする動作を、中国人は鳥のスズメが羽ばたく動作をした。隣国だからこそ漢字という共通の文化を共有しつつも、その意味が異なっていることを体感し、非常に興味深かった。
このキャンプの特に良かった点は、「違い」だけに注目するのではなく、「似ている点」にもたくさん気づけるように設計されていたことである。例えば、ある写真がどこの国の景色なのかを当てたりするゲームがあった。「絶対に日本だ」と確信した景色が、実は中国で撮影された写真であるなど、似ている景色や文化がたくさんあることを体感できた。また、Itoという価値観の違いを体感するゲームでも、互いの価値観がうまく一致し、順番に並べることができる場面があるなど、隣国同士であるからこそ、互いの文化が重なり合っていることを実感できる瞬間がたくさんあった。
このように、異文化理解を前提としたコミュニケーションの工夫だけでなく、人と人との距離を縮めるための様々な工夫も随所に盛り込まれていた。私は臨床心理学を専攻しており、心理的に脅かされることのない安心できる居場所をつくることや、心地の良いコミュニケーションを成立させることに強い関心を持っている。その視点からも、アイスブレイクの内容やキャンプ全体の設計は非常に参考になるものであり、今後他の場面でも活用したいと思える学びがたくさん得られた。
プロジェクトでは、政治や歴史に関するテーマについてリサーチを行い、様々な形式でディスカッションを重ねながら理解を深め、最終日に発表を行った。チームで話し合って決めた「本音で語り合う」ことを実現させるルールのうち、特に重要だと感じたものは以下の5つである。主語を大きくしすぎない、否定と批判を混同しない、みんなの正しさを尊重する、主観的事実も客観的事実も事実として受け止める、白黒つけようとしない。政治や歴史に関して本音を率直に語り合うと、どうしても不穏な空気感になる可能性が高く、それを恐れて普段はなかなか話すことができない。しかし今回は、それを恐れて発言を濁したり曖昧な表現で片付けたりするのではなく、それぞれが互いを尊重し合いルールを守ることで、「本音」の議論を成立させることができた。設計の工夫のおかげで、自然と相手の立場に立って考えることができ、多角的な視点で柔軟に話し合う意義深い議論となった。
私は「歴史和解」をテーマにプロジェクトを進めたが、これまで自身が受け身な姿勢で教育を受けてきたことに強い危機感を覚えた。ただ学校に通い、テストのために勉強をし、なんとなくテレビで流れているニュースをながら見するだけでは、たくさんの知るべきことを全く知らずに過ごしてしまうのだということを痛感した。受動的に教育を受け、その内容を鵜呑みにし、なんの違和感もなくそれを「正しい」と思い込んでしまうことで、無意識のうちに誰かを傷つけてしまっていたかもしれない、無知な発言によって誰かを憤らせてしまっていたかもしれない。そう考えると怖くなった。そして、「無知」であったことにすら気づけなかった自分、気づこうとせずに目を背けていた自分に情けなさと腹立たしさも感じた。受け身のまま浴び続けている情報を鵜呑みにすることの危険性を痛感するとともに、自分にとっての、そして世間にとっての「当たり前」に対して常に批判的な視点を持って考え続けること、そして、自ら積極的に知ろうとする姿勢の重要性を改めて気付かされた。
最終日の発表では、全チームの発表が本当に興味深く、たくさんの学びが得られた。参加者全員がそれぞれ異なる背景を持ちながらも、共通して「日中韓」に関心があり、「本音で話してみたい」「深く学びたい」という思いを共有している非常に稀有な集まりであった。そのため、質疑応答の時間にも本質を突く鋭い意見がたくさん出され、良い刺激を受けることができた。何より、「ただやらされている」という感覚が一切なく、全員が主体的に関心を持ってプロジェクトに取り組んだことが、プレゼンという成果物からもよく伝わってきた。改めて、このような貴重な機会に参加できたことへのありがたさと喜びを感じた。
私は学生最後の年にこのキャンプに参加することができた。たくさんの学びと、これまでの常識を覆すような気づきを得られるこの機会を、ぜひ多くの人に、より早い時期に掴み取ってほしいと思う。




