M.T.
文化構想学部 非常勤講師
このプログラムには教員にも参加資格があると知り、早速フランス語でのエクスチェンジに応募しました。私は語学留学および国際機関勤務のため、合計6年ほどパリに住んでいたことがあり、その頃はフランス語を日常的に使っていました。しかし、フランスを離れて早10年以上。今は使う機会がほとんどないのがとても残念で、使う機会を求めていたのです。それと同時に、勇気と好奇心を持って日本に留学している学生たちが、日本を少しでもよく理解し、豊かな時間を過ごせるよう応援したい気持ちもありました。
ICC がマッチングしてくれたのはフランス語圏の大学から1セメスターの交換留学で来ている修士課程の大学院生 2 人でした。スイスのフランス語圏出身の E さんは 24 歳、パリ生まれパリ育ちで、東南アジア華僑系フランス人の A くんは 21 歳。私とは親子ほども年齢が離れているので、このマッチングにがっかりしたのではないか、キャンセルしたいのではないか、、、と心配しました。しかし、意外にも二人は気にしないとのこと。話題が尽きることもなく春学期を通して楽しくエクスチェンジを続けることができました。
二人とも早稲田では英語での修士プログラムで学んでいる上、半年だけの日本留学なので、日本語を初歩レベル以上に身につけようとは考えていない、とのことでしたので、時々英語を交えつつ、もっぱらフランス語で会話しました。
月曜日の 5 時に対面で集まろうと決め、戸山キャンパス内または早稲田駅近くのカフェで3人で、私とどちらかとの 2 人で、ほぼ毎週1、2時間ほどおしゃべりをしました。話題は彼らの日本語クラスでの疑問や、日本での生活、日本内外の旅の思い出話やこれから行く先の計画、お互いの家族やホームタウン、日仏スイスの大学の制度や学生の姿勢の比較など、全くランダムにその日の気分で語りました。ちょうどパレスチナのガザの情勢がどんどん悪化していっている時期でしたので、それぞれの国での若者がガザでの惨状についてどの程度関心を持ち、行動しているかも話してくれました。
特に印象深かった話題は、E さんから聞いたスイスの言語環境の複雑さと、そのために国内での就職もややこしく、また全国共通の有名人やコンテンツが不在であること。そして、A くんが話してくれた、東南アジアのある国からご両親がそれぞれフランスへ移民した時のご苦労話です。
時には、気分を変えようと、早稲田にもほど近い神楽坂の散策もしました。日本情緒が残り、フランス好きが集まるこの街で、小さな神社にお参りし、お茶屋さんでほうじ茶で一服し、締めは私の気に入りのお蕎麦屋さんでお蕎麦を味わいました。また、終盤には、東京郊外の観光地ではない普通の日本の暮らしも体験してもらいたいと考え、ある週末に神奈川県の海辺のまちにある私の実家に招きました。海に飛び込みたいくらい暑い日でしたが、海岸沿いをてくてく散策し、海の家で冷たいジュースで涼みました。
今回のエクスチェンジは、運よくメンバーの相性がよく、3人の「ゆるく」「続けたい」という意思のレベルにも大きくズレがなかったために上手くいったのではないかと思います。気軽に参加してみて大正解でした。ICC の皆さんと、E さん、A くんに感謝しています。

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