Nami(学生スタッフリーダー)
2021年12月7日に、国際アートセラピー色彩心理協会と協力してオンラインアートセラピーワークショップイベントを開催しました。名前の通り、同協会は心のケアのために色彩心理を活用したアートセラピー活動を行っています。今回のイベントでは、同協会から3名のセラピスト、代表理事の末永 蒼生様、理事の佐久本 恵様、理事の馬目 佳世子様にお越しいただき、ワークショップのファシリテーターをしていただきました。
背景・趣旨
コロナの影響により、私たちは人との交流やスキンシップが制限され、孤立した生活に適応することを余儀なくされました。その結果、多くの人が新しい日常生活の中で困難に直面し、精神的に苦しんでいます。私もその一人です。パンデミック以来、不眠症と不安症が悪化し、心身ともに不健康な生活を送ってきました。しかし、自分はこのような経験をしている何百人もの学生のうちの一人に過ぎません。私のように多くの大学生、特に新入生は、仲間との本当の繋がりを持てずに孤立した状況で勉強をしなければならないため、もがいています。
このパンデミックを受けて、問題解決のためにテレセラピーが多くの国で一つのセラピー方法として注目を集めています。しかしながら、セラピーは比較的コストがかかることは否定できません。そのような中、ストレス解消や不安に対処するために人々が選択する数多くのセラピーの中でも、アートセラピーはより身近で手頃な方法の一つです。その理由は、個人でもグループでも行うことができる楽しい活動だからです。また、作品を完成させることだけが目的ではなく、アート制作の創造的なプロセスにある楽しみが魅力的なポイントであり、個人やコミュニティの生活を豊かにする代替的な癒しの方法であると考えられています。このような背景があり、私は早稲田大学の学生たちがアートを活かしてストレスを解消し、心のケアの代替となるセラピー方法を学べる機会を提供したいと思いました。
イベント企画の段階
全体として、企画と予定管理は効率的に出来たと思います。その背景には様々な理由がありますが、このレポートでは3つの重要なポイントを共有します。1つ目は、企画書を早めに書き終えることで、今回のイベントでICCと協力していただくのに最適な協会を見つけることができたことです。
2つ目は、対応が早く、大変協力的で、プロフェッショナルな協会と組むことができたことです。その結果、かなり早い段階でイベントの日程を確定することができ、準備やPRの時間を十分に確保できました。
3つ目は、イベントのターゲットとなる学生を惹きつけるために、適切なPR方法に着目したことです。早稲田大学で心理学やメンタルヘルスについて研究されている、あるいは教えられている教員を探すことに力を入れました。そのような教員を通じての広報に加えて、普段のPR方法による広報も行った結果、このイベントのテーマに興味を持っているにも関わらず、普段はICCのイベントに参加していない層も惹きつけることができました。
当日
末永様のご講演 (Image by ICC)
まず、末永様によるアートセラピーについてのプレゼンからイベントを開始し、色彩心理の研究者とアートセラピストとしての見解を共有していただきました。末永様は、色彩を活用して、あらゆる年齢の人々のメンタルヘルスを向上したり、ストレスを緩和したり、不安を落ち着かせられることをご紹介いただきました。色彩を通して感情を表現し、潜在意識を発散することで、セラピー効果が得られ、感情のコントロールがしやすくなるとのことです。また、トラウマを抱えた子どもたちのぬり絵を見せてくれました。参加者はそのような子供たちがぬり絵を通じて、どう自身の感情と向き合い、アートと色彩がどのように役立ったかを見て取ることができたものと思います。
末永様のプレゼンテーションの後は、イベントのメインアジェンダであるアートセラピーワークショップを行い、その後質疑応答の時間も設けました。 ワークショップは約1時間程度行い、参加者は3つのブレイクアウトルームに分かれ、3名のアートセラピストのうち、1名と直接対話する形式で行いました。また、イベントの前に、国際アートセラピー色彩心理協会が提供してくださったぬり絵に参加者全員が事前に取り組んでいただきました。ワークショップ中は末永様、佐久本様、馬目様から、各参加者のぬり絵を分析し、参加者一人一人に丁寧にフィードバックをしていただきました。また、事前に参加者が塗り絵に取り組むとの同じ体験を経たことで、自分の感情を共有し、自由に話せる、フレンドリーで安心を感じさせる環境作りにも繋がったものと思います。
最後に、ワークショップをふまえて、さらに聞きたい、深めたいことについて参加者からの質疑応答の時間を設け、イベントを締めくくりました。質疑応答時は、アートセラピーやメンタルヘルスに深い関心を持っている参加者の方々から普段の色遣いとその心理状況等、興味深い質問もいただきました。イベントの最後には、参加者アンケートを含め、末永様、佐久本様、馬目様の素晴らしいトークとアートセラピーのセッションに対して、多くの参加者から感謝の言葉が寄せられました。
課題
一昨年、コロナ禍の前に本イベントを提案しましたが、2つの理由でこのイベントを実施することができませんでした。1つ目は、このイベントのテーマがICCのビジョンとミッションに共鳴していないのではないかと周囲に考えられ、理解されるには至れなかったことがあります。2つ目は、私がインターンなどで忙しくなってしまったからです。つまり、その際はタイミングが悪かったのだと思います。そして、コロナ禍だからこそ、チャンスだと捉え、再度企画の提案に挑戦しようと思いました。ありがたいことに、今度は他のスタッフも、このイベントの重要性、そしてICCのビジョンやミッションとの関連性を理解してくれました。時として、自分のアイデアが理解されないことはありますが、それは意義がないからではなく、単に時代が追い付かないということもあります。そのため、イベントを提案する前に、タイミングを検討し、自分のイベントが今の時代にどのように適合するかを検討することも重要だということを学びました。
振り返り
今回の企画は参加者にアートセラピーを体験してもらうことをまずは考えました。また、学生が自分の感情と向き合い、探求し、伝えることで、メンタルヘルスとウェルビーイングの重要性について認識を高めることに繋がればと思いました。また、1対1でセラピーを行うのではなく、あえてグループでセラピーを行うことにより、互いに学び合い、自身を振り返る機会も設けたいと感じていました。参加者アンケートからも、「他の方の分析を聞けることもすごく学びになりました」、「自分以外の人の絵を観ることで自分のことも少しわかった気がした」という興味深いコメントもいただけました。今回のイベントの成果を数値化して示すことは難しい部分もありますが、このように目的は達成できたと感じています。また、参加してくれた学生が、自分の潜在意識や感情に向き合っていく上で、抑圧された感情が何であるかを確かめるために色彩やアートが活用できることをいつでも思い出してくれればと思います。
今回のイベントは私にとって初めてのオンラインワークショップであり、ICCでの最後のイベントとなりました。振り返ってみると、多くの課題や困難な状況に直面しましたが、どのような問題であっても、私は常に参加者のこと、参加者の体験を第一に優先し、決断してきました。このことは自分自身にとって貴重な教訓となりました。このような貴重な機会を与えてくださったこと、そしてこのイベントの実現にご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
記念の一枚 (Image by ICC)
イベント終了後、Instagramに写真を投稿し、ICCのフォロワーとイベントの様子を共有しました。
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