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スポーツから新天地へ~町田樹氏が語る、アスリートのセカンドキャリア論 企画者レポート

Tina(学生スタッフリーダー)

2021年10月29日(金)にICCオンライントークセッション「スポーツから新天地へ~町田樹氏が語る、アスリートのセカンドキャリア論~」を開催しました。学生、教職員を含め、80名以上の参加者にご参加いただきました。元日本のトップフィギュアスケーター、現國學院大學助教の町田樹氏をお招きし、スポーツ選手のセカンドキャリアについて語っていただきました。

企画背景

この企画を考え始めた原点は、私がフィギュアスケート好きというところからです。私が高校生の時、世界選手権を会場で観戦して以来、フィギュアスケートのファンになると同時に、早稲田大学は数々のトップクラスのフィギュアスケートスケーターの母校であることに知り、誇りに思うようになりました。その中で、アスリートから研究者に転身された町田さんが、スポーツ界に関することだけではなく、アカデミックな世界のことについてもご自身の経験を踏まえて詳しく伝えていただくことで、多く方にとって学びに繋がったり、あるいは新しいことに挑戦する勇気を得られる機会になると感じ、是非お招きたいと考えました。

当初は、町田さんには、ご自身の経験談を踏まえて、チャレンジ精神の重要性や、競技引退後のアスリートの転身について語っていただく計画を立てていました。しかし、町田さんとお話しさせていただく中で、アスリートに特化した形の話ではなく、いかなる分野の方々にもお聞きいただける内容にしていこうと考えるようになりました。そうすることで、スポーツに限らず長年一つの物事に専念してきた方々や、コロナ禍で新しいことにチャレンジする勇気を失ないかけている学生の皆さんにとって、新たな一歩を踏み出すきっかけになるようなイベントにできるのではないかと期待しました。

講演会の様子(開催報告)

当日、町田さんは「セカンドキャリア問題の本質」「キャリアデザインのポイント」と「元アスリート・町田樹の奮闘記」などのトピックについて熱く語っていただきました。講演後の質疑応答の際にも、参加者の皆さんからいただきました質問に対し丁寧にお答えいただき、おかげさまで、イベントが更に盛り上がりました。

特に印象に残ったのが、アスリートのセカンドキャリア問題の本質は、アスリートの「自分-競技≒ゼロ」という自我意識にあるというお話でした。ご自身が25年間フィギュアスケートを続けられた理由として、世間で思われている根性と競技への愛情の観点だけではなく、自分からフィギュアスケートをとったら、何も残らないのではないかという不安があり、スケートを続けざるを得なかったと告白されておりました。このような心情のまま競技から離れてしまうと、長年自分を支えてきたアスリートとしてのアイデンティティを喪失したと同時に、自分を見失ってしまうかもしれません。このような事態を防ぐためにも、ファーストキャリアからセカンドキャリアへキャリアチェンジする際には、「移行期」を設けることが大事だということです。町田さんは、大学復学から大学院卒業までの期間中に、フィギュアスケートの活動と学業を両立しながら、その過程で研究者という今まで考えていなかったセカンドキャリアを見出されたとのこと。アスリートは、自らのセカンドキャリアを考え始めることで、「私は○○競技しかいない」という劣等感から解放されると説明されていました。そしてその劣等感からの解放されたアスリートは、一つ一つの競技や試合で余計な不安に悩まされることなく、自分本来の力を発揮できるようになるそうです。真の意味の文武両道とは、自分の能力を文と武に半分ずつ配分するような犠牲的両立ではなく、文と武が互いに相乗していくような相乗的両立なのだという町田さんの見解は、非常に大事な点だと感じました。

ご講演の様子 image by ICCご講演の様子 (image by ICC)

また、元アスリートやアイドルが執筆したセカンドキャリアに関する本などを踏まえ、町田さんがキャリアを探す際に大事なポイントを挙げてくださいました。その大事なポイントとは、「今までの経験に理想とするセカンドキャリアのヒントがある」、「好きを掘り下げる」、「スポーツ以外のものにも常に意識して注力する」、「とにかくスポーツから離れて他の職業に飛び込んでみる」という4つです。アスリートから別のキャリアに転身しようと考えている方のみならず、学生や社会人のキャリア形成を考える上でも非常に良い参考になると思いました。講演中に町田さんがおっしゃっていた「誰もがみんな闘っている。だから、あなたは決して一人ではない」というメッセージも、きっと参加者の心に響いたものと思います。

講演後の質疑応答では、参加者の皆さんが積極的に町田さんに質問し、キャリアデザインやチャレンジ精神への理解を深めただけではなく、早稲田大学時代の学生生活の様子など、普段メディアの報道等だけでは聞けなかったようなお話も沢山うかがわせていただきました。町田さんのファンであるという学生からは、フィギュアスケート関連の質問がありました。また、本学教員からは学問的観点からの質問もありました。こうした多岐にわたる質問に対して、町田さんがご自身の考えをもとに一つ一つ丁寧に回答していた姿が特に印象的でした。町田さんの考えの深さと誠実な人柄に感動された参加者も多くいらっしゃったものと思います。

質疑応答の様子 (image by ICC)

イベントを終えて

今回の講演会ではキャリアデザインに関する様々なお話をうかがうことができ、学ぶことが非常に多かったです。また、イベントの企画者として、準備段階から気づきが多いイベントになり、とても貴重な経験となりました。

イベント後、参加者の方々から「自分のキャリア選択にとっても、非常に有意義なお話が聞けた」「町田様の体験を含め参考になる部分が多く、自分の将来設計に生かすことができそうだ」などといったご感想をいただくことができました。また、町田さんからも「久々に早稲田の方々と交流できて、とても嬉しかったです」とのコメントをいただきました。画面越しのオンライン講演ではありましたが、有意義なイベントになったと感じています。

記念の一枚  (image by ICC)

最後に

私はフィギュアスケート好きだけではなく、スポーツ観戦に関して全般的に興味があります。特に、この夏はオリンピックの選手村でのボランティア活動を通して、初めてスポーツ選手や関係者の近くで共に時間を過ごすことができました。その為、現役引退後のアスリートたちの第二の人生について語っていただく町田さんのご講演を、自分自身がとても楽しみにしていました。実際に、町田さんご自身の奮闘記やキャリアデザインのお話を聞き、改めて悩みや不安を抱えているにもかかわらず、限界に挑戦し続ける精神的な強さと、過去の栄光に縛られずに、新しい人生を歩んでいく方々の決意に感動しました。また、アスリートだけではなく、挑戦をしているすべての人達を応援したいと感じるようになりました。

今回のイベントの企画、準備、そして当日の運営において、特に準備段階においては不安もありましたが、町田さんの真摯なご対応、学内の各箇所の広報のご協力、そしてICCの仲間たちのサポートのおかげで、無事に今回のイベントを参加者の皆様に届けられて良かったと思います。当日参加してくださった皆様の笑顔と温かいメッセージを見て、心の中は喜びと達成感でいっぱいですが、イベントを通して、自分の対応力と語学の不足にも気づき、今後さらに精進していきたいと思っています。

改めて、貴重な機会を提供してくださった町田さん、イベントにお越しくださった参加者の皆様、そして協力してくださった皆様に感謝の気持ちを申し上げます。本当にありがとうございました!

 

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