Center for Entrepreneurship 早稲田大学 アントレプレナーシップセンター

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田口一成氏が語る、ソーシャルアントレプレナーの育成

ボーダレス・ジャパン代表・田口CEOが来校

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  • #在学生の方へ
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Wed 21 Oct 26

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2026年9月15日、早稲田大学アントレプレナーシップセンターに、ソーシャルビジネスの前線で活躍するボーダレス・ジャパンの田口一成氏が来校。須賀晃一副総長らとの会談、学生に向けた講演イベントを行いました。

ボーダレス・ジャパンはソーシャルビジネスを展開する企業。早稲田大学は同社と連携し、ソーシャルアントレプレナーの育成プログラム「W-SEED」を学生に提供しています。

本記事では、社会課題解決とビジネスの融合、大学教育の可能性を語り合った、当日のレポートをお届けします。

※イベント登壇者の発言は、抜粋や要約によるものです。
※所属・肩書は2026年9月取材時のものです。

社会課題をビジネスで解決する、ボーダレス・ジャパンの活動

「総合知による人類への貢献」を掲げる早稲田大学は、創立150周年記念事業を推進しています。「貢献」「研究」「教育」は事業の3本柱であり、ビジネスによる社会課題の持続的な解決、ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)の育成は、重要なテーマの一つです。

こうした背景から、早稲田大学アントレプレナーシップセンターと株式会社ボーダレス・ジャパンは、2025年に「W-SEED」をスタートしました。「W-SEED」は、現役学生を対象としたソーシャルアントレプレナーの育成プログラム。昨年度は応募者数が100名を超える反響があり、2026年度の継続実施に至っています。

ボーダレス・ジャパンは、気候変動や貧困、人権、ダイバーシティなど、さまざまな社会課題にアプローチする企業です。世界15カ国、48事業のソーシャルビジネスを展開し、100億円を超える売上を達成しています。

代表取締役CEOの田口一成氏は、本学の商学部を卒業後、25歳でを創業。同社を社会起業家が集う「プラットフォームカンパニー」へと成長させ、2026年には『Forbes JAPAN』の表紙を飾るなど、ソーシャルビジネスの第一線で活躍しています。その知見を現役学生に共有すべく、今回のイベントが企画されました。

早稲田大学の理念とソーシャルビジネスの親和性

早稲田キャンパスのアントレプレナーシップセンターにて、田口氏、「W-SEED」を担当した同社の半澤節氏、須賀晃一副総長、アントレプレナーシップセンターの石井裕之所長(理工学術院教授)が、会談を行いました。「ボーダレス・ジャパンの活動は、早稲田大学の理念と一致する」と、須賀副総長は語ります。

須賀「早稲田大学は教育において、『総合知で世界人類に貢献する人材の育成』を目指しています。その中核は社会課題の解決であり、学生は災害復興や地域連携など、さまざまな活動に取り組んできました。ただし、活動の多くはボランティアで成り立っています。就職後も社会課題と向き合おうとする場合、多忙な仕事と両立しなければなりません。結果として、活動を続ける卒業生には限りがあるのも事実です。こうした背景を受け、本学は近年、ソーシャルアントレプレナーに注目しています。起業やビジネスを通じ、サステナブルに社会課題にアプローチするモデルが、田口さん率いるボーダレス・ジャパンでした」

田口「大学がソーシャルビジネスと向き合うのは、素晴らしい試みです。私自身、自分の生き方を見つけ出したのは大学時代でした。社会に出る前の最終局面である時期、『自分は何に関心を持つ人間か』を徹底的に見つめる。そして社会的な視座を高め、自分のエネルギーを全て投入できる領域を問い詰める。こうしたプロセスを踏むのは、実社会に出てしまうと結構難しいものです。若い世代に考える時間と一定のフレームワークを提供することは、教育機関として重要だと思います」

田口一成氏(商学部卒業)

田口一成氏(商学部卒業)

須賀「創立者・大隈重信は『一身一家、一国のためのみならず、進んで世界に貢献する抱負が無ければならぬ』という言葉を残しました。つまり、『一身一家、一国のため』は全て利己の範疇であり、世界人類に貢献して初めて、早稲田大学の存在意義があると説いているのです。こうした考えは大学教旨である『模範国民の造就』にも表れています。そして今日、社会貢献はますます重要になっていると感じます」

須賀晃一副総長

須賀晃一副総長

田口「人間は社会的な生き物です。社会に対してどう関わり、どう貢献できるかに、若い世代の関心も高まっているのでしょう。私たちは海外でも活動を行っていますが、日本の平和に対する貢献意識の高さは、国際的に認知されていることも実感します。日本社会の未来を考えても、経済的戦略だけで太刀打ちするのは難しいのが現実です。ピースフルなリーダーシップを構築し、世界に発信していくことも、今後は重要になるのかもしれません」

ソーシャルアントレプレナーシップを育む、大学の可能性

アントレプレナーシップセンターの石井裕之所長は、ロボット工学の研究者として、自身も起業活動に関わってきました。

石井「ロボット歯ブラシを手がける大学発ベンチャーの株式会社Genicsで、技術開発と研究の監修を行なっています。全自動で歯を磨ける『g.eN』(ジェン)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなど、難病・障がいを抱える方に使用していただくケースも多く、人々の健康や自立促進に貢献できると考えています。社会で困っている人に対し、何をデザインし、どうアプローチしていくか。それを仲間と一緒に考えられるのが、早稲田大学の魅力です。『W-SEED』でボーダレス・ジャパンに協力いただいたのは、学生が互いに視座を高め合うプログラムを開発したい思いもありました」

石井裕之所長(理工学術院教授)

石井裕之所長(理工学術院教授)

半澤「『W-SEED』では、社会課題をビジネスで解決する“ボーダレスメソッド”の習得を目指し、ワークショップなども取り入れながら、起業計画を疑似体験してもらいました。ボランティア活動を行いながら、その事業化を模索する学生も多く、積極的なスタンスに私たちも刺激を受けています」

「W-SEED」の概要

2025年度に実施した第1期「W-SEED」では、「社会起業家としての基礎理解」「ビジネスモデル設計と戦略」「マネタイズ・資金調達の技術」を基軸に、第一線で活躍する社会起業家がソーシャルアントレプレナーの思考や技術を伝えました。理論と実践の両面からプロジェクトを構想する、チャレンジングな学びを特徴としています。

【講義形式】
対面(リアル)形式とオンライン形式

【定員・対象】
本学の正規学生・大学院生 40名

【講義回数】
秋学期 全6回

 

ボーダレスアカデミー代表の半澤節氏

ボーダレスアカデミー代表の半澤節氏

田口「事業を成長させる人間は、多様な他者と関わり合い、常に新しい視点を吸収し、実験することを繰り返しています。『W-SEED』も、より多くの人からインスピレーションを受けるプログラムへと発展させたいです」

半澤「『W-SEED』は、実際に起業する学生のみならず、『社会課題に関心がある』『フレームワークを学びたい』など、幅広い学生に開かれています。すぐに成果として結実しなくとも、数年後に経験が生かされる場合もあると思います。今後は卒業生など縦のつながりを強化するなど、ネットワーク構築も目指していきたいですね」

田口「ソーシャルビジネスのエコシステム構築においても、大学には可能性があります。例えば卒業生から資金を集め、“ソーシャルアントレプレナーシップ基金”として運用し、学生のチャレンジに充てるのも一つの手でしょう。また、“起業休学”のような制度を設け、在学中に1年程度、起業に挑める環境をつくるのも面白いかもしれません」

須賀「実にユニークなアイデアですね。大学は教育機関である以上、会社員や研究者のみならず、ソーシャルアントレプレナーも育つ環境をつくらなければなりません。サステナブルに社会課題を解決していくためにも、エコシステムの拡充に努めていくべきでしょう」

撮影=早稲田キャンパス アントレプレナーシップセンター

撮影=早稲田キャンパス アントレプレナーシップセンター

自己と向き合う学生生活が、その後の人生を変える

学生を対象にしたイベントでは、田口氏、半澤氏、NPOボーダレスファウンデーション理事の中村涼香氏が講演・トークセッションを実施。参加学生が積極的に質問する姿も見られました。

田口氏が説明するビジネスと非営利活動の違い、社会課題へのアプローチ方法には、多くの学生が関心を示します。

田口「ビジネスは、一度成立すればサステナブルに成長させられる点が強みですが、軌道に乗せるまでには時間を要します。一方の非営利は、今すでにあるお金を、世の中のために有効に使う活動です。両者の特性を理解した上で、ハイブリッドする思考を念頭に置きながら、各ステップで必要な手法を選択していくと、難しい問題にもアプローチできます」

自身の経験や事業事例も交えながら、田口氏は学生たちにメッセージを送りました。

田口「私は大学時代、『本当に自分がやりたいことは何か』について、毎日朝まで考えていた時期があります。偶然テレビに映ったアフリカの貧しい子どもを見て、『これだ』と直感しました。同じような映像は過去にも見ていたはずですが、アンテナが立っていなかったのでしょう。その日から次々と行動に移し、出会った人の話を吸収する中で、ビジネスの側から社会課題にアプローチする方向が見えていきました。アンテナを張りながら、フットワークを軽くし、何かを掴もうとしていると、必ず出会いがあるはずです。それを繰り返せば、人生を捧げるべき領域が見つかるかもしれません。在学中にやりたいことが見つればラッキーです。敏感な吸収力と軽やかな行動力を大切に、とことん自分と向き合ってみてください」

イベントは大盛況の中、無事に終了。第二期の「W-SEED」の説明も行われ、多くの学生が参加意欲を示しました。ソーシャルアントレプレナーの可能性は、今後いっそう広がっていきます。

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