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ジャンプ能力を高める「一言」の力: ブレーキ局面に着目した言語指示がリアクティブストレングス指数を向上させる
- Posted
- Wed, 27 May 2026
概要
ジャンプやスプリントなどの瞬発的動作では、筋と腱の伸張―短縮サイクル(SSC)が重要です。本研究では、リバウンドジャンプ中に「ブレーキ局面で強く押す」という言語指示を与えることで、リアクティブストレングス指数(RSI)が即時的に向上するかを検証しました。その結果、簡単な言語指示でも神経筋活動が変化し、RSIが有意に向上することが明らかになりました。
これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)
ジャンプやスプリント、方向転換など多くのスポーツ動作では、筋と腱が一度伸びてからすぐに縮む伸張―短縮サイクル(Stretch–Shortening Cycle: SSC)が重要です。SSC動作では、着地直後に筋と腱が伸ばされるブレーキ局面と、その直後に筋と腱が短縮し身体を押し上げる推進局面が短時間で連続して起こり、筋と腱の相互作用によって効率的な力発揮が可能になります。
この能力を評価する指標の一つがリアクティブストレングス指数(Reactive Strength Index: RSI)であり、ジャンプ高を接地時間で割った値で広く用いられています。これまでの研究ではプライオメトリックトレーニングなどの長期的介入によりSSC能力が向上することが知られています。一方、スポーツ指導では言語指示が動作に影響することが経験的に知られていますが、SSC動作の特定の局面に焦点を当てた指示の効果は十分に検討されていませんでした。
今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
本研究では、リバウンドジャンプというSSC能力を評価する運動を用い、「ブレーキ局面で地面を強く押す」という言語指示がパフォーマンスに与える影響を検証しました。その結果、この指示を受けた群ではRSIが有意に向上しました。一方、通常のジャンプ指示のみを繰り返した対照群では、そのような変化はみられませんでした。
筋電図による分析では、ジャンプ動作中の筋活動そのものではなく、接地直前にヒラメ筋の活動が高まるプレアクティベーションが増加していることが確認されました。これは、地面に接触する前から筋が準備された状態となり、短い接地時間の中で効率的に力を発揮できるようになった可能性を示しています。これらの結果は、わずかな言語指示でも神経筋制御の戦略が変化し、SSCパフォーマンスが向上する可能性を示しています。
そのために新しく開発した手法
本研究では、これまでに報告してきた基礎研究(Hirayama et al., 2012; 2017)に基づき、SSC運動におけるブレーキ局面での力発揮を意識させるキューイング(言語指示)がパフォーマンスを向上させるのではないかと考えました。従来、ジャンプ動作では地面を強く蹴る推進局面に注意が向けられることが多いですが、本研究ではその直前のブレーキ局面に着目しました。
具体的には、リバウンドジャンプを行う際に「ブレーキ局面で地面を強く押す」という指示を与えることで、筋腱相互作用の最適化を促すことを意図しました。このキューイングがSSCパフォーマンスにどのような影響を与えるかを検証するため、フォースプレート、足関節角度センサー、筋電図を用いてジャンプ動作を解析しました。

研究の波及効果や社会的影響
本研究は、スポーツ指導における「言葉」の重要性を示しています。長期間のトレーニングを行わなくても、適切な言語指示によって神経筋の使い方が変化し、瞬発的パフォーマンスが即時的に向上する可能性が示されました。この知見は、競技スポーツのコーチングだけでなく、トレーニング指導や身体教育など幅広い場面で応用できる可能性があります。また、RSIはトレーニング評価に広く用いられる指標であるため、測定時の指示内容を標準化する必要性も示唆されました。
今後の課題
本研究の対象者はプライオメトリックトレーニング経験のない男性であり、結果が他の集団にも当てはまるかは明らかではありません。また、本研究ではヒラメ筋のみを測定しているため、他の筋の役割や長期的なトレーニング効果については今後の研究が必要です。
研究者のコメント
本研究は、私たちがこれまで行ってきた基礎研究(Hirayama et al., 2012; 2017)から導いた仮説を実証したものです。ジャンプでは地面を蹴る推進局面に注目しがちですが、その前のブレーキ局面での力発揮が筋腱相互作用を最適化し、SSCパフォーマンスを左右する可能性があります。基礎研究の知見と、現場で日常的に用いられるコーチングの言葉を結び付けた研究と位置付けています。
用語解説
※1 リアクティブストレングス指数(Reactive Strength Index: RSI)
ジャンプ高を接地時間で割ることで算出される指標で、接地してから再び跳び上がるまでの動作をどれだけ効率よく行えるかを示す。伸張―短縮サイクルを利用した瞬発的パフォーマンスの評価に広く用いられる。
※2 伸張―短縮サイクル(Stretch–Shortening Cycle: SSC)筋と腱(もしくは主に腱だけ)が一度伸ばされた直後に素早く短縮することで、大きな力を発揮する筋-腱の動態。ジャンプ、スプリント、方向転換など多くのスポーツ動作において重要な役割を果たす。
論文情報
雑誌名:Frontiers in Sports and Active Living
論文名:Enhancing reactive strength index through braking-phase focused verbal instruction
執筆者名・所属機関名:Kuniaki Hirayama¹, Shingo Nakai², Takafumi Kubo³⁴, Seiichiro Takei³⁵
¹ Faculty of Sport Sciences, Waseda University, Tokorozawa, Japan
² Faculty of Sport Science, Shizuoka Sangyo University, Iwata, Japan
³ Graduate School of Sport Sciences, Waseda University, Tokorozawa, Japan
⁴ Sendai 89ers, Sendai, Japan
⁵ Teikyo University Institute of Sports Science and Medicine, Hachioji, Japan
Publishment Date(Local Time):To be announced (TBD)
Publishment Date(Japan Time):To be announced (TBD)
(オンライン掲載の場合/For online publication)
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fspor.2026.1698649
DOI:10.3389/fspor.2026.1698649
研究助成(外部資金による助成を受けた研究実施の場合)
研究費名:なし
研究課題名:なし
研究代表者名・所属機関名:なし
平山 邦明
研究者詳細 – 平山 邦明