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24時間行動を簡便に評価する尺度の開発/ Development of a brief questionnaire to evaluate 24-Hour movement behaviours

24時間行動を簡便に評価する尺度の開発/ Development of a brief questionnaire to evaluate 24-Hour movement behaviours
Posted
2025年12月23日(火)

24時間行動を簡便に評価する尺度の開発

Development of a brief questionnaire to evaluate 24-Hour movement behaviours

概要

身体活動、座位行動、睡眠は合わせて「24時間行動※1」として知られており、さまざまな健康指標との関連が報告されています。そこで、大規模調査等で利用可能となる24時間行動を簡便に評価するための尺度を開発しました。本研究では35名の一般成人参加者から得られたデータを分析したところ、本尺度の良好な妥当性※2および信頼性※3が確認されました。

これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

24時間行動と健康指標の関連を明らかにし、疾病予防に寄与する行動パターンを解明しようという試みが数多く行われてきました。これまでの研究では、24時間行動を評価する手法として三軸加速度計※4や各行動を評価するための単独の質問紙(例えば、ピッツバーグ睡眠質問票※5)が利用されてきました。しかしながら、加速度計の使用は参加者と研究実施者への負担が高い、単独の質問紙は全ての24時間行動を評価できないという問題点がそれぞれありました。

 

今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

全ての24時間行動を簡便に評価できる質問紙を開発しました。本質問紙は、1つの設問と付随する4つの項目から構成されており、回答者は各項目に対して該当する数値を記入します。本質問紙を利用することで、全ての24時間行動を適切に評価できることが明らかになりました。また、本質問紙は項目数が少ないため、回答者への負担も少ないことが特徴です。。

研究の波及効果や社会的影響

本研究から、新たに開発した質問紙が大規模調査で有用であることが示唆されました。これによって、さまざまな人に調査を行い、24時間行動と各種健康指標との関連を明らかにするための研究をより推進できると考えられます。また、知見が積み重なれば、厚生労働省が策定している現行の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド※6」に加え、将来的には座位行動や睡眠を含めた24時間行動の単位で、国民の健康づくりのための行動ガイドラインの策定が可能になることが期待されます。

今後の課題

本研究では成人を対象にしたため、本質問紙が他の集団(たとえば、高齢者や子ども)において有用であるかはわかっていません。また、本研究への参加者は比較的教育歴や世帯収入が高かったため、今後は代表サンプルに近い集団で検討をすることで、本質問紙の有用性をより強調できると考えています。

研究者のコメント

本研究から得られた成果により、24時間行動を簡便に評価できるようになりました。客観的に行動を計測できる三軸加速度計を装着することは負担であると感じる人も少なくないため、少ない負担で回答できることは本質問紙の強みです。また、本研究にはオーストラリアの研究者が参画したため、この尺度は英語版でも公開されています。そのため、今後世界中でこの尺度を用いて24時間行動を評価することが可能であり、健康指標との検討についてさらなる研究が期待できます。

用語解説

※1 24時間行動

24時間を軸に配置した行動の概念。1日の行動は、起きている時間の行動(覚醒行動)と睡眠に分類でき、さらに覚醒行動は身体活動(アクティブな活動)と座位行動(非アクティブな活動)に分類できるという考えから、睡眠、身体活動、座位行動を合わせて24時間行動と表す。

※2 妥当性

尺度が測定しようとしているものを実際に測っているかどうか、その程度を表す概念。

※3 信頼性

尺度の測定数値の安定性・一貫性・正しさを表す概念。

※4 三軸加速度計

x軸、y軸、z軸の三方向への加速度を検知し、加速度の度合いから動きの強度を推定し、装着している人の活動量を定量化する装置のこと。活動量計と呼ばれることもある。

※5 ピッツバーグ睡眠質問票

睡眠障害のスクリーニングならびに、経過観察や治療効果の判定などに用いられる検査。過去1ヶ月間の睡眠の質を総合的に評価する記入式の質問票であり、項目の一つとして睡眠時間を問うものがある。

※6 健康づくりのための身体活動・運動ガイド

身体活動・運動の量が多いことが、生活習慣病や精神疾患の発症・罹患リスクの低下と関連していると明らかにされていることから、身体活動・運動の取り組みを推進するために策定された指針。

論文情報

雑誌名/Journal:Journal of Epidemiology

論文名/Title:Validity and Reliability of a Self-Administered Questionnaire for 24-Hour Movement Behaviors

執筆者名・所属機関名/Authors and Affiliated Organisation:北山愛野(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科)、石井香織(早稲田大学)、柴田愛(筑波大学)、安永明智(青森県立保健大学)、ブロンウィン・クラーク(クイーンズランド大学)、ネビル・オーウェン(ベイカー心臓・糖尿病研究所、スウィンバーン工科大学)、デイビッド・ダンスタン(ベイカー心臓・糖尿病研究所、ディーキン大学)、岡浩一朗(早稲田大学)

Publishment Date(Local Time):6 September 2025

Publishment Date(Japan Time):6 September 2025

(オンライン掲載の場合/For online publication)

URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20250185/_article

DOI:https://doi.org/10.2188/jea.JE20250185

研究助成

研究費名/Research Fund:JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2128)

研究課題名/Research Subject:就労者における身体活動、座位行動、睡眠による24時間行動の適正化に向けた総合的エビデンスの構築

研究代表者名・所属機関名/Research Representative and Affiliated Organisation:北山愛野(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科)

研究費名/Research Fund:厚生労働科学研究費(JPMH22FA1004)

研究課題名/Research Subject:健康づくりのための身体活動・運動の実践に影響を及ぼす原因の解明と科学的根拠 に基づく対策の推進のためのエビデンス創出

研究代表者名・所属機関名/Research Representative and Affiliated Organisation:澤田亨(早稲田大学)

研究分担者名・所属機関名/Research Representative and Affiliated Organisation:岡浩一朗(早稲田大学)