スポーツ科学研究センター所長 宮下政司
スポーツ科学研究センターは、スポーツ科学学術院の研究機関として2006年に創設されました。その役割は、幅広い学問分野である「スポーツ科学」を多角的な視座より、当センターの研究員と国内外の研究機関・各種企業・行政機関・スポーツ関連団体と協働し推進するとともに、研究成果を広く社会に還元することにあります。当センターの事業として、1)研究・調査の実施、2)研究成果の発表、3)研究会や講演会、4)大学と外部機関を結ぶ窓口として、研究・調査の受託や指導の実施を基盤に事業を展開しております。
研究・調査の実施について、スポーツ科学研究センターの研究員である、スポーツ科学学術院の教員、客員研究員、招聘研究員から構成される約160名が、基礎的な研究から実践研究まで多様な専門領域より、先端的かつ独創的な研究を実施しています。さらに、得られた成果を国内外の学会や大学等での発表や招待講演をとおし発信するのみならず、当センターのホームページでニュースリリースを介し、成果を広く社会に発信するために努めております。
研究会や講演会として、「スポーツサイエンス研究会」の開催も当センターの重要な事業のひとつです。所沢キャンパスおよび東伏見キャンパスにて、年10-15回程度の頻度で開催し、特に国際的に活躍する国内外の研究者を招き、当センター研究員のみならず、学生・大学院生および一般の方々にも最新の知見と動向を広く提供しています。当センターの最も重要な任務は、各種企業・行政機関・スポーツ関連団体等と協働した、共同研究や受託研究の推進であります。当センター研究員が取り組む研究をさらに広く社会に還元し、実装化するために、健康増進、スポーツ競技の向上、怪我の予防やリハビリテーション、スポーツに関する政策・文化・教育などの研究活動を協働で実施することで、成果を社会問題の解決のために応用し、世の中に広く普及させる取り組みを行っています。
また人材育成として、2017年度より「スポーツMBA Essence」(Sport Master of Business Administration Essence) を開講しております。これは、スポーツマネジメントやビジネスに関する知識習得に関心を持つ社会人を対象とする学位取得を目的としない教育プログラムです。特色として、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センターとの共同事業であり、すでに多くの修了者を輩出し、スポーツビジネス界にて活躍しています。
これらの事業の背景には、文科省グローバルCOEプログラム「アクティヴ・ライフを創出するスポーツ科学」(2009年に国際的に卓越した教育研究拠点を形成することを目的としたプログラムで本研究センター内に設置)による、国際競争力のある大学づくりの形成をとおし、有力な大学との協定を結び、教育・研究の交流のため多くの優秀な国内の学生および留学生がスポーツ科学研究科に集まり、博士学位を取得した後に世界で大活躍している実績があります。さらに当該プログラムのレガシーは、文科省スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)「健康スポーツ科学モデル拠点」(2014年度から2023年度)でも受け継がれ、新たなパートナーシップを含め、さらに強固なネットワーク形成より、世界トップレベルの大学との交流・連携を深めて参りました。
そして、2023年の9月に設立されたスポーツに関する世界的な大学ネットワークである「Global Sport University Network」の評議メンバー(Council Members)として、ひとつの機関では解決できない地球規模の課題解決につながるための活動に対し、大学、各種企業、行政機関、スポーツ関連団体等と連携し、これからも着実に推進して参ります。
現在、早稲田大学は「アジアのリーディングユニバーシティ」を担うべく、さらには世界を牽引し、世界に貢献し続ける大学となるべく、国際的プレゼンスの向上を目指し、教育・研究を推進しています。学際的な展開が可能なスポーツ科学は、社会課題における取り組みに対し、益々、期待が寄せられることと思います。早稲田大学スポーツ科学研究センターが、その一旦を担う機関であることを確信しています。
2024年9月21日