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- 【開催報告】「泰山タイルからひもとく、戸山キャンパスの意匠―大学アーカイブズの実践」Exploring the Design of the Toyama Campus: A Perspective from Taizan Tiles
【開催報告】「泰山タイルからひもとく、戸山キャンパスの意匠―大学アーカイブズの実践」Exploring the Design of the Toyama Campus: A Perspective from Taizan Tiles
Dates
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SAT 2026- Place
- 早稲田大学戸山キャンパス36号館382教室
- Time
- 13:00~17:00
- Posted
- Wed, 21 Oct 2026
泰山タイルからひもとく、戸山キャンパスの意匠―大学アーカイブズの実践
Exploring the Design of the Toyama Campus: A Perspective from Taizan Tiles
1962年に、早稲田大学創立80周年事業の一環として、第一文学部・第二文学部移転のために戸山キャンパスが再整備されました。この時、校舎の設計を担ったのが、早稲田大学建築学科卒業生の村野藤吾(1891-1984)です。1960年12月に着工し1962年3月の竣工後、同年4月より現在にいたる戸山キャンパスの新しい歴史が始まりました。村野設計の校舎では、彫刻家・辻晉堂(1910-81)の石彫やタイルモザイク、画家・長谷川路可(1897-1967)のデザインに基づく床モザイク(武蔵野美術学校FMグループ作成)が、建築に彩りを与えていました。石、ガラス、タイル、スチールと様々な材料によって醸し出される豊かな表情がこの建築の魅力であり、中でも床や壁面、そして辻晉堂の作品にも多用されている泰山タイルは、深みのある独特の色と質感で、空間に躍動感を与えていました。
その後も戸山キャンパスは、1981年の34号館竣工、92年の181大教室の取り壊し及び38・39号館竣工(菊竹清訓設計)と絶え間なく変化を続け、2011年には村野設計による高層棟であった旧33号館が取り壊され2012年に現在の建物へと建て替えが行われました。取り壊しに先立って、旧33号館の一部を構成していた辻晉堂のタイルモザイクや長谷川路可の床モザイクの切り取り保存がなされ、現在は、新しい33号館やその周辺に再設置されています。このシンポジウムでは、泰山タイルを軸に、村野藤吾設計の旧校舎の建築史、美術史上の意義を再発見し、現在の戸山キャンパス内に再設置された辻晉堂タイルモザイク作品の魅力を発見することを目指しました。

総合人文科学研究センター「デジタル人文学の理論と実践」部門代表・師茂樹(早稲田大学文学学術院教授)による開会の挨拶では、開催経緯の説明とともに、場所や建物をめぐる知識と身体的記憶の齟齬、記憶や想起をいかに(デジタル)アーカイブに組み込んでいくか、大学アーカイブズにおける文書中心主義といった問題が提起されました。その後、泰山タイル研究の第一人者である、京都精華大学准教授・中村裕太先生に「泰山タイルのモザイク術」と題した講演をしていただきました。中村先生は、ご自身も陶磁器を用いた作品制作をしているアーティストとしての観点、また京都における泰山タイル制作の歴史と使用実例の歴史を研究して来られた研究者としての観点の両面から、手作業で制作される泰山タイルが建築にもたらす魅力を多くの実例を挙げて講じてくださいました。加えて、近代初頭、西洋からの建築技法が受容される中で、タイルやテラコッタなど陶器材料が壁面や床面に用いられるようになり、それが日本的な感性に適応していった経緯を文献や古写真から追い、そのような流れの中から登場した泰山タイルを歴史的に位置付ける視点を示されました。ご講演の最後に、近年は京都の再開発に際して徐々に失われつつある建築タイルの保全と記録の難しさなどにも論及されましたが、これはまさに戸山キャンパスを通じて、我々が経験していることでもあります。
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続いて、文化の異種混淆性に関心を持って研究しておられる同志社大学教授・佐藤守弘先生に「京都の街角タイル―物質文化と近代性」と題したご講演をしていただきました。佐藤先生は、近代建築におけるタイルの使用が衛生という概念と深くかかわることを指摘され、タバコ屋(薬局に準じる)、食材店、理髪店、銭湯、そして遊郭といった業種の建物に多く見られることを、数多くの写真や資料から説明してくださいました。タイルという着眼点で建築を見ていくことで、日本の近代化の痕跡を、今日でも京都の街角に見出すことができるというご指摘は、物質文化に関心を持って研究に従事する私たちに、歴史の証言者としての「モノ」の意義を再認識させる刺激に満ちたものでした。
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最後に、旧33号館の取り壊しが議論された2007年当時、これに反対し、取り壊し決定後には辻晉堂や長谷川路可の作品を保全し新たな校舎周辺に再構築することに尽力された、早稲田大学名誉教授・丹尾安典先生に「早稲田大学戸山キャンパスの建築・タイル・モザイク・フレスコ」と題したご講演をしていただきました。丹尾先生がスライドで見せてくださった古い写真は、戸山キャンパスがその前身である早稲田大学高等学院校舎であった1950年代に始まり、1962年竣工直後の旧33号館、2011年に始まったその解体工事の様子から翌年にかけてのタイルモザイクの再構築作業へと続き、私たちが現在見ているキャンパスの姿が、あくまで歴史の一幕であることを実感しました。会場には、旧33号館の床モザイク制作に、長谷川路可の指揮下「武蔵野美術学校FMグループ」の一員として加わっておられ、2012年の再設置作業にも従事してくださった原田恭子先生(モザイク作家)、長谷川路可のフレスコ画修復を手掛けてくださった有田巧先生(フレスコ画家、崇城大学名誉教授)にもご来場いただき、丹尾先生からの呼びかけに応じて、制作当時、修復当時のエピソードを語っていただきました。

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上記の講演終了後には、丹尾先生主導で、中村先生、佐藤先生、原田先生、有田先生を交えて、来場者を31号館から33号館ロビーに案内したキャンパスツアーを実施しました。当日の参加者は75名、かつて戸山キャンパスで学んだという校友の皆様の姿も多く見られ大盛況でした。キャンパスツアーは31号館、33号館にとどまらず、39号館前の中庭やスロープにも広がり、予定時間を超過して戸山キャンパスの空間の魅力を、参加者全員で語り合いながら再発見する機会となりました。


開催情報
- 日時:2026年10月3日(土) 13:00~17:00
- 会場:戸山キャンパス36号館382教室
主催等情報
主催:早稲田大学総合人文科学研究センター「デジタル人文学の理論と実践」部門、WCANS「環境人文学の基盤形成―いのちをめぐる真正性」プロジェクト
※本イベントに関するお問い合わせは、[email protected] まで





