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【開催報告】オックスフォード大学 ジェニファー・ゲスト先生講演会
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TUE 2025- Place
- 早稲田大学戸山キャンパス33号館3階第1会議室
- Posted
- 2025年12月9日(火)
オックスフォード大学 ジェニファー・ゲスト先生講演会
‘The sign of the newt: chastity and illicit romance in the language of Toshiyori zuinō‘
「ゐもりのしるし-「俊頼髄脳」に見える貞節と密通の歌ことば」

オックスフォード大学准教授ジェニファー・ゲスト先生の講演会「‘The sign of the newt: chastity and illicit romance in the language of Toshiyori zuinō‘ 「ゐもりのしるし-「俊頼髄脳」に見える貞節と密通の歌ことば」」を、2025年12月2日(火)に戸山キャンパス33号館第一会議室にて開催しました。
ジェニファー・ゲスト先生は、日本古典文学を専門とされ、とくに10世紀から13世紀にかけての日本における漢籍の受容と文学に関わる教育、翻訳、文語の普及をテーマとして研究を展開しておられます。今回は、7か月間にわたる早稲田大学での訪問研究の成果の一端をお話しいただきました。
源俊頼の著作『俊頼髄脳』は12世紀初めに藤原勲子のために作成された歌学書で、講演ではその中にみえる「ゐもりのしるし」にまつわるエピソードと歌を取り上げ、考察が展開されました。「ゐもりのしるし」とは、守宮(いもり)のしるし(血)を女性の腕に塗ると、不思議なことにそれはいつまでも消えることはないが、女性が密通を犯すとしるしが消え、密通が露見するというもので、もとは『漢書』東方朔伝の顔師古注や『法華経玄賛』などの中国の古文献にみえるエピソードであり、講演ではその故事がいかにして和歌のことばとなり、歌学書で論じられるようになったのか、また、『俊頼髄脳』における「ゐもりのしるし」のごとき女性への教訓的な文脈をいかなるものとして読み取ることができるかなど、幅広い検討が繰り広げられました。関連資料を駆使して進められる論述は、着実かつさまざまな思考へと聴き手をいざなうものでした。
講演に続いて、コメンテーターのブリティッシュ・コロンビア大学准教授のクリスティーナ・ラフィン先生から、講演内容に対するコメントが述べられました。クリスティーナ・ラフィン先生は、まず、今回の講演内容が、きわめて緻密な読解に基づくものであり、また、たいへん丁寧に各種資料を渉猟したうえで、考察対象とする言説の意義や問題を立体的、体系的に解き明かすものであることを高く評価されました。そして、日本国内外においてはいまだ『俊頼髄脳』にかかわる研究が不足している状況にも触れつつ、『俊頼髄脳』の言説が平安期の皇族女性に対する教育に実際どれほど結びつき、どのように貢献するものであったのか、あるいはまた、今回考察対象とされた「ゐもり」や「虫」といった語の翻訳の難しさなどにも触れられるなど、講演の内容を起点としてさまざまな論点が引き出されました。
その後、講演に参加した方々からも質問や意見が次々と活発に出され、充実した質疑応答、ディスカッションが行われ、盛況のうちに講演会は終了しました。

開催概要
- 開催日時:2025年12月2日(火)15時30分〜17時00分
- 開催方式:対面(会場名:33号館3階第1会議室)
- 主催:早稲田大学総合人文科学研究センター角田柳作記念国際日本学研究所