- ニュース
- 【開催報告】第六回中日古典学ワークショップ
【開催報告】第六回中日古典学ワークショップ
Dates
カレンダーに追加1122
SAT 20251123
SUN 2025- Place
- 北京大学中文系李兆基人文学苑3205室
- Posted
- 2025年12月4日(木)
第六回中日古典学ワークショップ
2025年11月22日(土)、23日(日)の2日間にわたり、北京大学中文系李兆基人文学苑3205室にて第六回中日古典学ワークショップを開催しました。

このワークショップは、日本における日本古典学と、中国における中国古典学の研究と研究者の新たな架け橋とすべく、開催に向けた協議、準備期間を経て、2018年に第一回目のワークショップを早稲田大学で行い、以後、早稲田大学と北京大学とで交互に開催してきたものです。途中コロナの影響により、やむなく中断やオンラインでの実施を余儀なくされたこともありましたが、北京大学および早稲田大学の関係機関や関係者の積極的な支援と努力により、2023年からは北京大学での対面による会議を再開し、2024年は早稲田で、そして今回は再び北京大学での開催を実現することができました。
このワークショップは、毎回中日の古典学にかかわる具体的テーマを設定して行っており、今回のテーマは「文書・文体・文章学」としました。今回はこれらのテーマに対して、中国側は文献学、経学、古典文学、文芸理論、言語学、日本側からは文学、書誌学、歴史、美術史、思想など、古典学を基盤とするさまざまな領域を専門とする日中の研究者が集い、相互に研究対象となる資料や史料、研究方法、新たな研究の視角、動向などを報告し合い、ディスカッションを行う、貴重な学術交流の場を設けることができました。
ワークショップは、北京大学中文系副主任程蘇東教授の司会による開会式で幕を開けました。北京大学中文系主任杜暁勤教授は開幕の挨拶において、第一回ワークショップ以来の本ワークショップの経緯を振り返りつつ、回を重ねるごとに緊密な連携と充実した学術的な議論が積み上げられてきたことを評価されるとともに、本ワークショップにかかわる活動や成果論集が関連の学界にインパクトを与えるものとなっていることを述べられました。また、第二回ワークショップからは次世代研究者の育成を目指して青年論壇の開催にも力を注いできたことにも触れられました。続いて早稲田大学文学学術院教授河野貴美子からは、日本側参加者の招聘や発表資料の翻訳など各方面に渉る周到な準備に対する謝礼、および本ワークショップの活動が未来の古典学研究のプラットフォームにつながっていくことへの期待が語られました。また、今回のテーマである「文書・文体・文章学」は、古典学に携わる者にとってきわめて重要なテーマであり、かつ、近年とくに注意され、盛んに研究成果が提出されている領域であることに触れ、例えば、いわゆる古文書研究、古文書学についてみても、日本のみならず、中国においても中国古文書学という学科が比較的最近新たに打ち立てられ、関連の専門学術雑誌も2023年に創刊されたことに言及されました。
続いて、第一日目は、第一セッションから第五セッションまで、中日双方合計18名の教員による発表と討論が行われ、第二日目には、青年論壇として第六セッションから第八セッションまで、両校から合計11名の大学院生、キャリア初期研究者の発表と討論が行われました。
ワークショップでは、発表原稿を事前に両言語に翻訳して用意し、各セッションの司会者は事前に発表原稿を熟読し、司会進行とともにコメンテーターの役割も担いました。発表時には通訳はおかず、コメントと質疑応答の時のみ、学生による通訳を介することとしましたが、今回は新たにAIを用いた翻訳字幕のスクリーン投影も試験的に行われました。なおこのことは、人文学におけるAI利用の可能性や問題を確認、共有する機会ともなりました。
2日間のワークショップを締めくくる閉幕式では、早稲田大学文学学術院吉原浩人教授から、ワークショップを通して古典学における注釈研究をはじめ、精緻な資料研究が重要である点があらためて指摘され、また、今後のワークショップをより活性化させ、持続発展させていくために、次世代の研究者への連携が今後ますます重要になることが強調されました。続いて北京大学中文系劉玉才教授からは、今回のテーマをめぐって専門の領域を超えた対話が実現し、中日古典学にかかわる詳細な比較や新たな理論構築に向けた議論が展開するなど、実り多いワークショップとなったこと、また、本ワークショップでかつて発表した大学院生がすでに研究者として巣立っており、大学院生の国を超えた交流もますます盛んになっていることから、ワークショップの活動が今後の中日古典学のさらなる活力になっていくことへの願いも述べられました。
なお、本ワークショップは、北京大学中国語言文学系、中国古典学研究平台、早稲田大学総合人文科学研究センター角田柳作記念国際日本学研究所、SGU国際日本学拠点の主催、早稲田大学総合研究機構日本古典籍研究所、JSPS科研費基盤研究B(25K00442)、JSPS科研費基盤研究B(24K00045)の共催にて行われました。
ワークショップの詳細
11月22日(星期六上午/土曜日の午前)
-
開幕式及合影(開会式および記念撮影):9:00—9:30
主 持(司会)程蘇東
致 辞(開会挨拶)杜曉勤,河野貴美子 - 第一場(第1セッション):9:40—10:50文字與圖像:文書研究(文字と図像:文書研究)
主持·評議(司会·討論):周興陸,陣野英則佐々木孝浩 和本における文字種と造本の関係について
山本聡美 『源氏物語』に内在する唐代画論―やまと絵成立の背景を探る
李林芳 出土文獻視域下校勘學的理論問題
周興陸 辭章傳統與中國文學觀念的古今演變 - 第二場(第2セッション):11:00—12:20宗教與想像:敘事文體研究(宗教と想像:叙事文体研究)
主持·評議(司会·討論): 李銘敬,吉原浩人高松寿夫 日本古代の仏教言説における譬喩―『浄名玄論略述』を中心に―
潘建國 晚明的一次俗文學文體實驗及其學術啓示——以明刊《新鋟京板評林韓湘子出身十二度升仙傳》為例
海野圭介 天野山金剛寺蔵『遊仙窟』の新出残簡について
程蘇東 原始察終:《史記》的時間結構及其意義
11月22日(星期六上午/土曜日の午前)
- 第三場(第3セッション):14:00—15:00交融與演進:文章學研究(融合と変容:文章学研究)
主持·評議(司会·討論):潘建國,田中史生陣野英則 萩原廣道『源氏物語評釈』の文章学――その先駆性――
陸 胤 漢文脈中的Rhetoric:近世東亞文教環流與近代修辭學之接引
李成晴 柳宗元《先君石表陰先友記》旁證 - 第四場(第4セッション):15:10—16:10體制與思想:文體學研究(制度と思想:文体学研究)
主持·評議(司会·討論):李小龍,高松寿夫河野貴美子 空海『遍照発揮性霊集』所収の表・状について――唐代公文書との比較からの考察
田中史生 922年(延喜22)に日本にもたらされた後百済の牒
雷瑭洵 從《九章·思美人》章句看《文心雕龍》“解散論體”說 - 第五場(第5セッション):16:20—17:40文本與筆法:文章學研究(テクストと筆法:文章学研究)
主持·評議(司会·討論):陸 胤,山本聡美吉原浩人 句題詩序破題の方法―慶滋保胤「別方山水深」「落葉波上舟」詩序を例に―
胡 琦 從直解到代言:制藝“入口氣”體制之創生
謝文君 蘇軾與江戶時代的尺牘轉型
劉玉才 日本古文書所見早期漢籍流布輯考
11月23日(星期日/日曜日)
- 第六場·青年論壇(第6セッション·青年フォーラム):8:45—9:30
圖書與思想的跨文化旅行(越境する書物と思想の流動)
主持·評議(司会·討論):李成晴,佐々木孝浩田中亜美 真名本縁起と仮名本縁起―相模国大山『大山寺縁起』における本文表現の比較―
黃芷欣 日本平安時代類書引錄中國古小說及其書籍史意義考論
黃冬萍 博士家、僧人、幕府的交遊與《毛詩》寫本傳承——以日記文稿記載為中心 - 第七場·青年論壇(第7セッション·青年フォーラム):9:40—10:40
中古時期的文體書寫(中古期の文体表現)
主持·評議(司会·討論):李林芳,海野圭介龔凱歌 『玉葉』所載の異国牒状とその発信国について
李寅捷 李德裕會昌年間所奏密狀及其文體學意義探論
夏傑倫 万葉集と中国文学における死を悼む表現—墓誌銘と願文の場合—
陳柏謙 再論唐代澤潞地區墓誌“詩銘”之文類歸屬——兼論其誌蓋挽歌之性質 - 第八場·青年論壇(第8セッション·青年フォーラム):10:50—11:50
知識、文章與社會(知識·文章·社会)
主持·評議(司会·討論):雷瑭洵,田中亜美王 和 奈良時代の七夕詩にみる社会階層と漢文知識―正倉院文書と『懐風藻』を中心に
陳櫻巿 唐人小說“文備眾體”現象新探——論“尚奇”小說文體意識的多維呈現
龔楊飄飄 江戸時代における『呉船録』の受容―紀行文から見る蜀桟道イメージ―
張 翼 “李何之爭”與明中葉文章學發展的內在進路 -
閉幕式(閉会式):11:50—12:10
主持(司会)胡 琦
總結致辭(総括)劉玉才,吉原浩人
開催概要
- 日時:2025年11月22日(土)、23日(日)
- 方式:対面(会場:北京大学中文系李兆基人文学苑3205室)
- 主催:北京大學中國語言文學系、中國古典學研究平臺
早稲田大学総合人文科学研究センター角田柳作記念国際日本学研究所、SGU国際日本学拠点 - 共催:早稲田大学総合研究機構日本古典籍研究所、JSPS科研費基盤研究B(25K00442)、JSPS科研費基盤研究B(24K00045)