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- 【著作紹介】『沖縄県の政治史―基地と経済をめぐる相克(平良好利・櫻澤誠・小松寛編著)』(文学学術院准教授 小松寛)
【著作紹介】『沖縄県の政治史―基地と経済をめぐる相克(平良好利・櫻澤誠・小松寛編著)』(文学学術院准教授 小松寛)
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- 2025年11月21日(金)

法律文化社 初版 刊行日2025/11/5 判型 A5版 282ページ ISBN-13: 978-4589044327
本書は47都道府県の政治史を描くシリーズ「戦後日本の地方政治」の第1巻として刊行されました。戦後の沖縄は27年に及ぶ米国統治を経験し、今日でも米軍基地問題などをめぐって中央政府と対立するなど、特異な政治を歩んできたと一般的には思われているでしょう。確かに戦後沖縄政治では常に米軍基地と経済振興が争点となり、概して革新勢力が基地問題へ厳しい姿勢で臨んだのに対して、保守勢力は経済振興の方により重点を置いてきました。そして戦後沖縄政治は保革どちらかの一方に偏ることはなく、県知事ならびに県議会の多数派は保守と革新による交代を繰り返してきました。
このように見ると確かに独自色の強い沖縄政治ですが、別の観点からは他の地域と共有する課題も見えてきます。例えば政党組織における本部・支部関係、二元代表制における首長と議会の関係、政党政治と市民運動の関係などについてです。さらに付け加えれば、基地問題は国家安全保障と直結しているため、沖縄県の政治史を考えることは戦後日本の安全保障政策、ひいては戦後日本という「国のかたち」そのものを考える起点のひとつともなるでしょう。
本書は2部7章によって構成されています。従来の通史では1972年の「日本復帰/沖縄返還」で分けることが多かったですが、本書では冷戦終焉による県内政治の変化を重視し、その前後で分けました。各章のタイトルと執筆者は以下の通りです。
はしがき[平良好利 中京大学総合政策学部 准教授]
序 章 「沖縄県」の政治とは [櫻澤誠 大阪教育大学教育学部 准教授]
◆第Ⅰ部 冷戦期の沖縄政治
第1章 米軍政開始と戦後沖縄政治 1945~1958年 [黒柳保則 沖縄国際大学法学部 教授]
第2章 米軍統治下の「民主主義」 1958~1968年 [櫻澤]
第3章 復帰と革新県政 1968~1978年 [秋山道宏 沖縄国際大学総合文化学部 准教授]
第4章 西銘保守県政の時代 1978~1990年 [野添文彬 沖縄国際大学法学部 教授]
◆第Ⅱ部 ポスト冷戦期の沖縄政治
第5章 革新県政の再登場と政府との対峙 1990~1998年 [小松寛 早稲田大学文化構想学部 准教授]
第6章 稲嶺・仲井眞県政下の政治 1998~2014年 [平良]
第7章 翁長・玉城県政下の政治 2014~2024年 [平良・小松]
各章の執筆者は異なりますが、全体の一貫性を図るため、特に次の点に留意しました。まず政治史として、各政党・会派を総体的に把握できる記述を心掛け、政治と社会運動との連関にも目を配りました。また、単なる地域政治とならないよう、日本政府と沖縄県との関係や日米関係を含めた国際関係などについても、必要に応じて厚く記述しました。さらには、県知事選挙(米国統治時代は群島知事選挙・行政主席選挙)、県議会選挙(米国統治時代は立法院選挙)、国政選挙については必ず触れ、そのときどきの民意の変遷をたどれるようにしています。巻末には資料として各選挙一覧も掲載しました。
〈研究内容紹介〉
私の研究内容は戦後沖縄の人々のアイデンティティ、特に沖縄が平和と自立を目指す上でそのアイデンティティが果たす役割に着目しており、近年では沖縄県の地域外交(自治体外交)を研究対象としています。本書では1990年代の大田昌秀県政と、2018年以降の玉城デニー県政について論述しました。
早稲田大学文学学術院准教授
小松 寛(こまつ ひろし)
1981年生、沖縄県出身。早稲田大学社会科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。成蹊大学アジア太平洋研究センター主任研究員などを経て2025年4月より現職。専門は国際関係論、平和研究、戦後沖縄政治。共著に『「いくさ世」の非戦論 : ウクライナ×パレスチナ×沖縄が交差する世界』(2024年、インパクト出版会)、『沖縄県史 各論編7 現代』(2022年、沖縄県教育委員会)、『沖縄が問う日本の安全保障』(2015年、岩波書店)など。
(2025年11月作成)