
青土社 初版 刊行日2024/8/25 ページ数188ページ ISBN 978-4-7917-7668-9
これまでドイツ語圏文学の翻訳者として、ドイツでさまざまなサポートを受けてきました。翻訳助成金をいただいたこともありますが、ベルリンで毎夏行われている翻訳者のアカデミーに参加させてもらったり、ゲーテ・インスティトゥートの招待で出版社やブックフェアの見学に行かせてもらったりしたこともあります。2016年には世界最大規模の翻訳者レジデンスを提供しているシュトラーレンの「翻訳者の家」に一か月滞在することができました。(施設の正式名称はEuropäisches Übersetzer-Kollegium。)ドイツの施設ではありますが、翻訳にドイツ語が絡んでいなくても、これまでに2冊以上の翻訳出版があるプロの翻訳者であれば無料で滞在できます。ここでの滞在はとても実り多く、日本にもこういう施設があればいいのにと思うようになりました。その後2017年と19年にも滞在させていただき、日本でも翻訳に関するイベントでこの施設のことを紹介していたところ、若い編集者の方から「それについて本を書きませんか?」というお誘いをいただき、ちょうど新型コロナウイルス流行によって海外渡航が難しかった時期に書いたのがこの本です。この施設の歴史、どんな翻訳者にそこで出会ったか、などを記しました。また世界各地における翻訳者支援についても、わかった範囲で記しています。この本は出版後、いろいろなメディアでとりあげていただきました。時期を同じくして早稲田の国際文学館でも翻訳プロジェクトが開始されました。世界文学の受容を支える翻訳者同士の交流が、こうした施設やプロジェクトを通して盛んになることを願っています。
〈研究内容紹介〉
ドイツ語圏の現代文学の研究。特に最近は多和田葉子の日独両言語による作品を研究しています。また、現代文学をドイツ語から日本語に翻訳する傍ら、翻訳論も研究しています。
早稲田大学文学学術院教授
松永 美穂(まつなが みほ)
東京大学大学院人文社会研究科博士課程単位取得満期退学。東京大学助手、フェリス女学院大学助教授を経て1998年より早稲田大学文学学術院助教授、1999年より現職、翻訳家。文化構想学部 文芸・ジャーナリズム論系で「翻訳・批評ゼミ」を担当。
(2025年9月作成)