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【著作紹介】『未来への負債-世代間倫理の哲学(キルステン・マイヤー著、御子柴善之監訳)』(文学学術院教授 御子柴善之)

人文書院、刊行日2025/8/30、判型:四六版、ページ数:248ページ ISBNコード ISBN 9784409031421

持続可能性、SDGs、カーボン・ニュートラルなどという言葉が頻繁に語られています。いずれも、私たちの生活における行為選択の基準を、現在世代だけに限ることなく未来世代にまで広げて考えるように要求する言葉です。こうした言葉が求められる背景には、もちろん地球環境問題に代表される、人類規模の問題状況があります。こうした状況に対して、科学技術や社会政策の観点からではなく、人文学の観点から参画するとしたら、何ができるでしょうか。それは、世代を超えた倫理的関係について深く考え抜くことではないでしょうか。たとえば、私たちの誰もがけっして出会うことのない未来世代の人々の生活環境を想像して、私たちが現在の生活に変更を加えるべき理由がほんとうにあるのだろうか、と考えてみることです。これは、倫理学の世界では「未来倫理」や「世代間倫理」と呼ばれる問題領域に属する問いです。

ここに紹介する訳書、フンボルト大学(ベルリン)の実践哲学と哲学教授法の教授であるキルステン・マイヤー氏による『未来への負債-世代間倫理の哲学』は、そうした問題を倫理学上のさまざまな立場を念頭に検討した書物です。ドイツで原書が刊行されたのは2018年ですが、この領域における研究上の基盤になる書物として、受け止められています。本書は、上述の問題を、快楽主義、功利主義を含む帰結主義、権利論、ロールズの正義論、ヨーナスの未来倫理などに基づいて論じ、いずれも十分でないことを明らかにします。そうした検討に際して、著者がつねに参照するのは、英国の哲学者パーフィットの所説(「非同一性問題」など)です。しかし、著者は、さらにパーフィットの問題提起をも克服する視点を「カント的な」義務論に見いだし、それにさらに「人間らしさ」という観点を加えることで、自身の立場を鮮明にします。この重要な書物の邦訳を刊行すべく、監訳者の研究室でともに学んだ、また学んでいる若手研究者の力を結集しました。

〈研究内容紹介〉

監訳者の研究室は、ドイツ近現代哲学と倫理学を研究の中心に据えています。大学院生たちは、カントの三批判書(『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』)のいずれについても研究しています。また、カント以前の哲学(ライプニッツなど)や、カント以後の哲学(フィヒテなど)を研究する院生もいます。さらに、20世紀の神学者、ボンヘッファーの倫理学を研究している院生もいます。どの院生もドイツ語を運用できることが、今回の訳書刊行につながりました。監訳者の著書としては、『自分で考える勇気』(岩波書店)、『カント哲学の核心』(NHK出版)、『カント 純粋理性批判』(角川選書)、『カント 実践理性批判』(角川選書)などを挙げることができます。

早稲田大学文学学術院教授
御子柴 善之(みこしば よしゆき)

1961年長野県生まれ、1980年早稲田大学第一文学部入学、同大学文学研究科修士課程、博士後期課程で学ぶ。博士後期課程在籍中、交換留学制度に基づき、ドイツのボン大学に留学。2001年より早稲田大学専任講師、同准教授を経て、2009年4月より現職。文学学術院では、文化構想学部現代人間論系、大学院文学研究科哲学コースに所属。

(2025年8月作成)

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