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【著作紹介】『カント 実践理性批判』(文学学術院教授 御子柴善之)

株式会社KADOKAWA、角川選書、刊行日2024/3/21 408ページ ISBNコード ISBN978-4-04-703715-1

この本は、一種の学習参考書です。こう書くと、すでに受験を終えた学部生の方々には、もはや必要のないものと思われるかもしれません。しかし、東西の古典の状況を見比べたとき、そうでもないことを分かってもらえると思います。文学学術院の学生なら、高校生のころ、書店の学習参考書のコーナーで日本や中国の古典の参考書を手に取ったことがあるのではないでしょうか。現代語訳と詳しい注釈を参考にするためです。こうした参考書に取り組むことは、一部にせよ東洋の古典を私たちの血肉にする助けになっているはずです。

ところが、西洋哲学の古典となると、その参考書・解説書の状況は大きく異なります。もちろん多くの書物がありますが、それらは、一方で、きわめて要約的であるがゆえに原典読解の訓練に資することのない入門書に、他方で、いきなり研究者が自身にとっての細かい研究上の最先端を開陳しているがゆえに初学者には歯の立たない研究書に、二分されます。この中間に位置し、(翻訳にせよ)原典にアプローチする訓練の場を提供する書物は多くありません。西洋哲学を日本語の世界に根付かせためにこの状況は好ましくないと私は考えてきました。

そこで、2020年に『カント 純粋理性批判』と題した本を(株)KADOKAWAから出版しました。これは、カントの大著『純粋理性批判』のすべての箇所の内容を、初学者にもアプローチ可能な程度にかみ砕いてまとめた本です。同書刊行後、同社からの依頼を受けて執筆したのが、ここに紹介する『カント 実践理性批判』です。本書もまた、カントの第二批判と呼ばれる『実践理性批判』のすべての箇所について解説を試みた学習参考書です。ただし、同書のコメンタリーは世界的にも希少なので、その点で独自性あるものになったとは思っています。

〈研究内容紹介〉

私は、ドイツ近現代哲学と倫理学を研究の中心に据えてきました。前者の中心はカント哲学で、これまで『自分で考える勇気-カント哲学入門』(岩波書店)、『カント哲学の核心-『プロレゴーメナ』から読み解く』(NHK出版)、『カント 純粋理性批判』(角川選書)という本を出版するなどしてきました。現在は、カントの『純粋理性批判』のさらなる読み直しに取り組んでいます。

他方、倫理学研究の中心は環境倫理学にあり、環境倫理を主としてカント的な義務論によって根拠づけるための論文を書いてきました。現在は、環境倫理の中心的話題である世代間倫理に関するドイツ語著作の翻訳に取り組んでいます(2025年8月末刊行予定『未来への負債―世代間理論の哲学』)。

早稲田大学文学学術院教授
御子柴 善之(みこしば よしゆき)

1961年長野県生まれ、1980年早稲田大学第一文学部入学、同大学文学研究科修士課程、博士後期課程で学ぶ。博士後期課程在籍中、交換留学制度に基づき、ドイツのボン大学に留学。2001年より早稲田大学専任講師、同准教授を経て、2009年4月より現職。文学学術院では、文化構想学部現代人間論系、大学院文学研究科哲学コースに所属。

(2025年8月作成)

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