今回の研究会では、関直子先生(本学教授、部門構成員)が「アーティストによる作品との出会いの場の創出」と題して、話題提供を行った。参加者は7名。以下、関先生ご執筆による当日のまとめである。
パンデミックの発生から間もない時期、美術作品の展示の場として多様なバックグラウンドの人に開かれた存在であるはずの美術館は臨時休館となり、再開後は展示室に軸足を置きつつも、ウェッブ空間での映像や情報の発信、そのアーカイブ化の推進へと舵を切っていくことになった。とりわけ展示やプログラムの実施においてアーティストが重要な役割を担う現代アートにおいては、美術館だけでなく、アーティス自身のHPでの、動画や画像を通した作品発表がひろがり、作品を介した作者と鑑賞者とのコミュニケーションは、その機会が増える一方で、モニター画面上の情報交換に転じていく傾向にある。
これに抗するように、コロナ禍でより鮮明となったコミュニティでの社会的な課題を主題とする作品に取り組むため、集団で活動するアーティスト・コレクティヴは、活動のスペースを作り、住民と討議し、その過程を作品化していく動きも活発である。さらに、自らのスタジオで個々に制作に取り組んできた個人で活動するアーティストは、アーティスト同士の作品を通した対話を深めるため、自身のスタジオを、複数の作家が滞在制作可能な施設へと改変したり、互いのスタジオ訪問を活発化させることも積極的に試みられている。コロナ禍を経て、ウェッブ空間の活用と並行して、作品を通した実空間での制作者同士、そして鑑賞者とのコミュニケーションにおいて、アーティストの先導的な活動は今後その意義を増していくと考えられる。(関直子記)
開催概要
- 主催:早稲田大学総合人文科学研究センター「COVID-19を経験した社会の人文学」部門
- 日時:2025年2月7日(金曜日) 18時00分 ~ 19時50分
- 方式:オンライン