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【著作紹介】『道徳形而上学の基礎づけ(イマヌエル・カント著、御子柴善之訳)』(文学学術院教授 御子柴善之)

人文書院 初版 刊行日2022/12/30 寸法(13.5 x 2.4 x 19.4 cm) ページ数238ページ ISBNコード ISBN978-4-409-03118-6

本書は、カントが1784年までに完成させ翌年に刊行した、彼の最初の倫理学的書物の全訳です。併せて、同年に彼が執筆した有名な論文「啓蒙とはなにか」の訳文も掲載しています。いずれもまったく新たに訳出したものです。

この翻訳の背景には、現代のカント倫理学の研究動向があります。現代の規範倫理学においてカント倫理学は義務論と呼ばれますが、この立場を代表する著作が『道徳形而上学の基礎づけ』です。おそらくはそれが理由となって、近年、この著作の研究書がドイツ語や英語で実にたくさん刊行されています。今回の翻訳はそうした新たな研究動向を踏まえ、それを訳注に反映させながら作成したものです。

本書の本文の冒頭はあまりに有名です。高等学校の倫理の教科書にも必ず掲載されているでしょう。拙訳から引用してみます。「この世界の中で、いやおよそこの世界の外でも、制限なしに善いと評価され得るものは、ひとりなんらかの善い意志をおいてほかにまったく考えられない。」この訳文を読んで、なんだか冗長だなあと思った方もいるかもしれません。一般に「善意志」と訳されるところを「なんらかの善い意志」と訳しているからです。これは今回の訳文作成の方針に基づくものです。すなわち、定冠詞、不定冠詞、無冠詞を訳し分ける、複数形はそれとして訳出する、別の単語には別の訳語を充てることを方針としました。その結果、不定冠詞付きで書かれた「善意志」を「なんらかの善い意志」と訳す結果となりました。このように、原文に即してもう一度、一からカント倫理学を理解しようと思う方のために、この訳書を刊行したのです。

なお、『道徳形而上学の基礎づけ』の訳文作成は早稲田大学文学研究科の授業「哲学研究」に、「啓蒙とはなにか」の訳文作成は早稲田大学文学学術院の授業「専門特殊研究(ドイツ近代哲学(原典)講読)」に基づいています。その点で、この訳書は戸山キャンパスから産み出されたものとも言うことができるものです。

〈研究内容紹介〉

私は、ドイツ近現代哲学と倫理学を研究の中心に据えてきました。前者の中心はカント哲学で、これまで『自分で考える勇気-カント哲学入門』(岩波書店)、『カント哲学の核心-『プロレゴーメナ』から読み解く』(NHK出版)、『カント 純粋理性批判』(角川選書)という本を出版するなどしてきました。現在は、カントの『純粋理性批判』と『実践理性批判』の読み直しに取り組んでいます。

他方、倫理学研究の中心は環境倫理学にあり、環境倫理を主としてカント的な義務論によって根拠づけるための論文を書いてきました。現在は、環境倫理の中心的話題である世代間倫理に関するドイツ語著作の翻訳に取り組んでいます。

早稲田大学文学学術院教授
御子柴 善之(みこしば よしゆき)

1961年長野県生まれ、1980年早稲田大学第一文学部入学、同大学文学研究科修士課程、博士後期課程で学ぶ。博士後期課程在籍中、交換留学制度に基づき、ドイツのボン大学に留学。2001年より早稲田大学専任講師、2009年4月より同大学文学学術院教授。文学学術院では、文化構想学部現代人間論系、大学院文学研究科哲学コースに所属。

(2023年10月作成)

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