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【著作紹介】『10 代から知っておきたい 女性を閉じこめる「ずるい言葉」』(文学学術院准教授 森山至貴)

WAVE出版 初版刊行日 2023/01/21 判型 四六版 ページ数 140ページ

女性の自由を阻む「ずるい」言葉のからくりを分析する

相手を自分の思いどおりに動かそうとしたり、的はずれな善意でかえって相手を傷つけたりする発言の数々を分析した前著『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』を上梓した際、多くの女性読者から好意的な反応をいただきました。そこで、女性が日常生活の中で投げかけられ、そのたびに理不尽さを感じる言葉を集めてそれらを分析することで、会話の中に潜む女性差別をあぶり出し、そこから抜け出すためのヒントを探る続編を書いてみようと考えました。その結果、本著『10代から知っておきたい 女性を閉じこめる「ずるい言葉」』ができあがりました。

女性に理不尽を強いる「ずるい言葉」を発するのは必ずしも男性だとはかぎりません。女性が女性に対して投げかける言葉の中にも、「ずるさ」は隠れています。しかし、男性である私がそのことを批判するだけでは、自由や平等を理由に女性を仲違いさせることにとどまってしまいます。そこで本書では、互いに違う経験をしてきた女性同士が、相手を傷つけることなく尊重しあえるよう、ボタンの掛け違いを直す手伝いをすることを目指しました。もちろん、それとは別に、男性が女性に対して発するさまざまな差別発言の問題点についてもしっかり指摘するように努めました。

本書はジェンダーに関する予備知識のない中高生でも読めるように書かれていますが、それぞれの「ずるい言葉」の分析には、私自身が研究や授業準備の中で出会ってきたフェミニズムと呼ばれる思想が色濃く反映されています。その意味で本書は、フェミニズムを縁遠く感じている読者をフェミニズムの世界へ誘う、最初の「手招き」のようなものだとも言えると思います。

〈研究内容紹介〉

私自身はふだん、クィア・スタディーズの分野で研究と教育を行っています。クィア・スタディーズは1990年代生まれの性の多様性に関する領域横断的な学問分野で、演劇や文学、哲学などの人文学領域の知見に多くを負っているという特徴があります。私自身は社会科学(とくに社会学)領域のトレーニングを受けた研究者で、性の多様性について研究したい、という思いが高じて、「お隣さん」である人文学領域の概念や発想にも手を伸ばしながらクィア・スタディーズの分野で研究をするようになりました。

現在では、人文学領域の概念や発想を性の多様性の社会科学的な研究にどのように取り入れることができるのか、というクィア・スタディーズの「基礎研究」にあたる部分を、「ホモソーシャリティ(異性愛男性同士の、ときに他者排除的になる社会的紐帯)」や「ヘテロセクシズム(異性愛中心主義)」といった概念の理論的検討を中心におこなっています。

早稲田大学文学学術院准教授
森山 至貴(もりやま のりたか)

1982年神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程単位取得満期退学。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻助教、早稲田大学文学学術院専任講師を経て、現在同准教授。専門は、社会学、クィア・スタディーズ。

著書に『LGBTを読みとく──クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書)、『10 代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』『10 代から知っておきたい 女性を閉じこめる「ずるい言葉」』(いずれもWAVE出版)などがある。

(2023年4月作成)

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