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早稲田大学総合人文科学研究センター2018年度年次フォーラム 国際シンポジウム「東アジア文化交流―呉越・高麗と平安文化―」開催報告
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- Wed, 12 Dec 2018
早稲田大学総合人文科学研究センター2018年度年次フォーラム
国際シンポジウム「東アジア文化交流―呉越・高麗と平安文化―」
開催報告
2018年12月8日から9日の二日間にわたり、早稲田大学総合人文科学研究センター(RILAS)2018年度年次フォーラム 国際シンポジウム「東アジア文化交流―呉越・高麗と平安文化―」を開催した。本シンポジウムは、早稲田大学総合人文科学研究センター(RILAS)、同研究部門「グローバル化社会における多元文化学の構築」、中国・浙江工商大学東亜研究院、韓国・蔚山大学校人文大学日本語日本学科、早稲田大学日本宗教文化研究所、早稲田大学日本古典籍研究所、日本学術振興会科学研究費助成事業「院政期・摂関期の宗教思想研究―菅原文時と永観を起点に―」基盤研究(C)(一般)課題番号15K02087が共同主催し、早稲田大学多元文化学会、早稲田大学文化構想学部多元文化論系の共催、早稲田大学総合研究機構の後援を得て実現したものである。


早稲田大学総合研究機構に所属するプロジェクト研究所である日本宗教文化研究所(所長:吉原浩人)と日本古典籍研究所(所長:河野貴美子)は、中国・浙江工商大学東亜文化研究院と箇所間協定を締結し、これまで16回にわたり国際シンポジウムを開催してきた。また2012年度以降は韓国・蔚山大学校人文大学日本語日本学科が加わり、三箇国共同主催による「東アジア文化交流」をテーマとする国際シンポジウムを毎年開催している。前回早稲田大学で開催した当該シンポジウム(2015年)はRILAS研究部門「グローバル化社会における多元文化学の構築」の共同主催として行われたが、今回はRILASの年次フォーラムに採用され、開催する運びとなった。
「呉越・高麗と平安文化」というテーマは、東アジアの文化交流史研究において、重要な論点をさまざまに含むものでありながら、これまでそれらを集中して議論することは決して多くはなされてこなかった。しかしながら、2016年に奈良市の大和文華館において特別展「呉越国―西湖に育まれた文化の精粋―」が、また2018年には同じく大和文華館において特別展「建国1100年 高麗―金属工芸の輝きと信仰―」が開催され、関連分野の研究者の注目を大いに集めた。本シンポジウムは、これら二回の特
別展を企画された同館瀧朝子学芸係長、そして特別展を機に呉越・高麗をテーマとする東アジア文化交流のシンポジウムの開催を提案して下さった後藤昭雄大阪大学名誉教授をはじめ、中国、韓国からの代表や国内からも発表者を招き、実現に至ったものである。
シンポジウムは、初日に基調講演とパネルディスカッション、二日目に研究発表を行った。プログラムは以下の通りである。
12月8日(土)
早稲田大学27号館地下2階小野記念講堂
総合司会:河野貴美子
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《開会式》 13:00~13:20
開会の辞 吉原浩人(早稲田大学日本宗教文化研究所所長・同文学学術院教授)
祝 辞 魯成煥(蔚山大学校人文大学日本語日本学科教授)
祝 辞 江静(浙江工商大学東方語言文化学院・東亜研究院院長/教授、日本宗教文化研究所招聘研究員)
《基調講演》 13:30~15:00
司会・コーディネーター:吉原浩人(早稲田大学日本宗教文化研究所所長・同文学学術院教授)
河野貴美子(早稲田大学日本古典籍研究所所長・同文学学術院教授)
趣旨説明 吉原浩人・河野貴美子 13:30~13:40
◇瀧朝子(大和文華館学芸部係長)
「線刻鏡(鏡像)の受容と展開―呉越・遼・高麗と日本―」
◇魯成煥(蔚山大学校人文大学日本語日本学科教授):
「仏画からみた高麗と日本の雷神」
◇王勇(浙江大学人文学院教授、日本宗教文化研究所招聘研究員):
「入唐・渡天を決行した日本僧転智」
◇後藤昭雄(大阪大学名誉教授、日本古典籍研究所招聘研究員):
「呉越と平安朝の漢学」
《コーヒーブレイク》 15:00~15:20
《パネルディスカッション》 15:20~17:00
基調講演者全員登壇
《懇親会》 17:30~19:30
早稲田大学25号館大隈ガーデンハウスカフェテリア2階(大隈講堂裏)
12月9日(日)
早稲田大学戸山キャンパス33号館3階第一会議室
総合司会:吉原浩人
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《研究発表1》 10:00~11:30
司会:李美子(四天王寺大学人文社会学部准教授、日本宗教文化研究所招聘研究員)
◇洪性珉(早稲田大学文学学術院総合人文科学研究センター助教):
「遼宋海上交流の実態について―遼・高麗・日本における宋磁出土傾向の比較を手掛かりに―」
◇久保輝幸(浙江工商大学東方語言文化学院副教授):
「江浙地方と日本におけるボタン栽培の始まり―呉越国からの伝来の可能性―」
《昼食》 11:30~13:00
《研究発表2》 13:00~14:10
司会:洪聖牧(蔚山大学校人文大学日本語日本学科助教授)
◇江静(浙江工商大学東方語言文化学院・東亜研究院院長/教授、日本宗教文化研究所招聘研究員):
「呉越国と日本の交流に関する日中研究の諸問題」
◇崔鵬偉(早稲田大学文学研究科博士後期課程2年、日本宗教文化研究所RA):
「『往生西方浄土瑞応刪伝』と平安期往生伝―臨終描写における異同を中心に―」
《研究発表3》 14:40~16:25
司会:久保輝幸(浙江工商大学東方語言文化学院副教授)
◇洪聖牧(蔚山大学校人文大学日本語日本学科助教授):
「日韓の医療交流について―高麗朝廷による医者派遣要請をめぐって―」
◇七田麻美子(埼玉大学基盤教育研究センター准教授、日本宗教文化研究所招聘研究員):
「菅原文時「為右丞相贈大唐呉越公書状」をめぐる考察」
◇吉原浩人(早稲田大学文学学術院教授、日本宗教文化研究所所長):
「呉越・宋・高麗への返書・返牒と自讃―大江家伝来の外交文書と対外意識―」
《閉会式》 16:35~17:00
会議総括 河野貴美子(早稲田大学日本古典籍研究所所長・同文学学術院教授)
閉会の辞 陣野英則(早稲田大学文学学術院副院長・同総合人文科学研究センター所長)
*公表されたプログラムでは、《研究発表1》に安籐章仁(早稲田大学文学学術院非常勤講師、日本宗教文化研究所招聘研究員)「日本の経塚にみる呉越の仏舎利信仰の影響」、《研究発表2》に小松麻美(蔚山大学校人文大学日本語日本学科助教授)「現代絵本「かぐや姫」に描かれる天女のイメージの起源を探る─図像と服飾史を手がかりに─」が記載されていたが、病気などのやむを得ない事情で、発表者が会場に到着できないという連絡が事前にあったため、適宜時間調整を行った。
二日間のシンポジウムは、呉越国が存在した十世紀前後の時期における東アジア地域の文化交流について、歴史、文学、美術史、仏教史から医学史や植物学に至るまで、さまざまな領域、視点から講演と発表が繰り広げられ、呉越と高麗、そして平安日本の交流の様相を立体的に浮かび上がらせるものとなった。文字資料はもちろんのこと、出土史料なども豊富に紹介され、それらの文字やモノが伝えるメッセージを詳密に分析することによって、当時の各地域の政治情勢や外交に対する態度、文化の潮流や影響関係、そしてまた同時に各地域の文化の独自性もが、さまざまな角度から示される結果となった。なお、本シンポジウムの意義としては、当該の三箇国の研究者が集い、各国の研究の現状も含めて直接討論する機会が得られたこともきわめて大きい。
シンポジウムには二日間で延べ144名の参加者があり、発表に対しては活発な質疑応答がなされた。なおシンポジウムの成果は、論文集として公刊される予定である。
