総合人文科学研究センター所長 大稔 哲也
早稲田大学総合人文科学研究センター(Research Institute for Letters, Arts and Sciences)は、早稲田大学文学学術院の附置研究所であり、早稲田の人文科学研究を牽引して行く立場にあります。早稲田の目指す方向の一つとされる「研究のWASEDA」を具現する存在であり、その原動力の一つとも位置づけられるでしょう。伝統的な学問の探究で知られる文学学術院ですが、人文科学や社会科学研究全般にかかわる今日的な課題をグローバルな視点から追究することも決して忘れてはいません。様々なディシプリンにもとづく研究者たちの協働作業によって、我々なりの学際的研究の在り方を提示することも本センターの使命といえます。
本センターを構成するのは、文学学術院を本属とする全ての専任教員、任期付教員、本センター所属を含む助手/助教、そして学外からの招聘研究員らであり、さらに2023年秋からは、日本学術振興会特別研究員PD等の受入雇用もこちらで行っています。本センターは13の研究プロジェクトを稼働させており(2024年9月時点)、その活動内容はホームページから窺い知ることができます。各プロジェクトは、国際シンポジウム、国内の講演会・研究会、海外からの研究者招聘、研究成果の発信、大学院生の研究支援などを精力的に行ってきました。センター全体としても、各種シンポジウム・研究会の開催、調査研究の受託、キャリア初期研究者の支援、大型科研費による活動スペースの確保、学内学会の支援などを担っています。
なかでも、これまでの活動として特記すべきは東アジア諸国との共同研究や国際日本学研究であり、多くの国際シンポジウムや共同研究を実現させてきました。例えば、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援事業」による国際日本学拠点の貢献は大きく、コロンビア大学、UCLA、スタンフォード大学などとの交流枠組みは事業終了後も維持される予定です。今後、本センターとしては、毎年主催する国際シンポジウム「年次フォーラム」が活動の枢軸となりましょう。
キャリア初期研究者の支援も重視しており、日本学術振興会特別研究員応募チャレンジセミナーや英語論文ライティングセミナーなども本センターが主催しています。さらに、学内外の公募や各種研究助成・奨学金、留学などの情報提供も積極的に行ってきました。センターの刊行する研究誌『WASEDA RILAS JOURNAL』の存在も強調されねばなりません。本誌には査読論文に加えて、研究プロジェクトによるシンポジウム・研究会の特集、年次フォーラム報告などが掲載されています。こちらはオンライン公開されていますので、是非ご一覧ください。
文化構想学部・文学部の二学部の教員を統べる本センターは、大所帯であるがゆえに所員が互いの研究に必ずしも通じていない憾みは残ります。そのため「新任教員による研究紹介セミナー」を実施してきましたが、さらなる展開も求められましょう。また、学部・大学院の各論系・コースといった区分は、自在に越境される必要があります。相互に研究・教育の刺激をやりとりしつつ、それを研究のエネルギーへと転換する領域横断的な仕組みの構築が委ねられているに相違ありません。そして、それは学術院内だけで完結することなく、学外(国内外)へと伸長されねばなりません。幸い、本センターには多様な国際共同研究の蓄積があります。
いかにして人文科学研究をより活性化し、その環境を整えていくべきか、共に考えさせてください。内外のセクションの壁を越えて研究者をつなぎ、人文科学研究の振興をめざす本センターの活動に、なお一層のご支援を賜れれば幸いです。