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【著作紹介】『科学で読みとく縄文社会』(文学学術院教授 高橋龍三郎編)

同成社 初版刊行日2022年3月24日 版型 A5版 ページ総数216ページ ISBNコード ISBN9784886218865

日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費)課題の成果報告。縄文社会の大変動を、古人骨のゲノム解析、同位体分析、古病理学や考古学から検証し、縄文時代の親族構造、婚姻制度や集落構造などの変動を明らかにする。中期環状集落の解体から後期のトーテム制氏族制社会の成立を解明する。

目次:
序章 科学が縄文社会論になげかけるもの(高橋龍三郎・早稲田大学)/ 第1章 千葉県遺跡出土の古人骨DNAから見た縄文社会(脇山由基/ 太田博樹・東京大学)/ 第2章 古人骨の同位体分析から縄文社会を考える―千葉県祇園原貝塚出土人骨の放射性炭素年代測定と炭素・窒素安定同位体分析(米田穣・東京大学)/ 第3章 縄文人骨の古病理学的・形態学的特徴(藤田尚・同志社大学)/第4章 縄文中期から後期の社会大変動を考える(高橋龍三郎)/第5章 動物形象突起から見た縄紋社会(長山明弘)

〈研究内容紹介〉

編者は、縄文時代中期から後期への文化変動について、中期環状集落の解体(中期末)と分散的小規模集落の移行(後期)、多遺体再葬墓への移行、先祖祭祀などの宗教的施設・遺物の増加、動物形土製品や動物供犠に見るトーテミズムの盛行等について考古学的に検討してきた。その結果、その変動が親族構造や出自制度、婚姻システムなどの社会基盤の変動によるものだとの理解に達している。同時に生命科学分野のmtDNA分析の発達の結果、縄文後期に単系出自の母系制社会が誕生した可能性が当該分野から指摘されており、考古学と生命科学分野の融合的研究が望まれていた。そこで、2018年度に科研費課題の採択を得て、筆者らは縄文集落論や墓制論、動物形土製品の蛍光X線分析、動物形象突起などの考古学方面からの調査研究に対して、ゲノム解析や窒素同位体分析、古病理学などの生命科学分野から照射することにより、縄文時代の社会変動を総合的に解明することを目的に調査を開始した。本書は4年間にわたる研究成果を公表するものである。ゲノム科学などを縄文時代の考古学研究に積極的に導入し、社会基盤の大変動を解明する試みは、わが国では最初の研究である。

早稲田大学文学学術院教授
高橋 龍三郎(たかはし りゅうざぶろう)

1953年長野県大町市に生まれる。1986年早稲田大学文学研究科博士後期課程退学。早稲田大学文学部助手、非常勤講師を経て1990年から近畿大学文芸学部専任講師。1995年より早稲田大学文学部助教授。1999年より早稲田大学文学部教授、現在に至る。専門は日本先史考古学、亀ヶ岡式土器の型式学的研究、縄文時代の生業研究なども手掛けるが、主課題は縄文時代の社会複雑化、階層化過程の研究。トーテミズムを柱とする後期の氏族制社会の成立、先祖祭祀を中核として祭祀・儀礼の発達などについて研究している。また縄文土器型式が成立し変化する社会過程を研究するために、20年ほど前からパプアニューギニアのイーストケープおよびセピック川流域の民族誌調査を継続している。主な著書、編著に『村落と社会の考古学』(朝倉書店)、『縄文文化研究の最前線』(トランスアート社)、『縄文後・晩期社会の研究—千葉県印西市戸ノ内貝塚発掘調査報告書―』(早稲田大学考古学コース刊)などがある。

(2023年8月作成)

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