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【著作紹介】『ジェンダーのとびらを開こう 自分らしく生きるために』(文学学術院教授 村田晶子)

大和書房 初版 刊行日2022/10/5 判型 四六判 ページ数 319ページ ISBNコードISBN978-4-479-39378-8

地方の高校生3人とW大学に通う学生2人がジェンダーやセクシュアリティについて語り合い、学び合うという設定で物語が進む。統計資料や専門的な読み物も随所に入れることでジェンダー論の学術的なレベルを保ちつつ、自分の性別に違和感を覚えたり、海外で育ち日本の文化に戸惑う登場人物たちの語りを中心とする、シナリオ仕立ての本である。

近年、ジェンダーに関する研究書や一般書の刊行がめざましいが、本書は10代の若い読者が気軽に手に取り、自分たちの問題として考える手がかりとなるよう工夫した。家族との会話やアルバイト先で、「女だから」「男だから」と言われて感じた「モヤモヤ」を、取るに足らないことと流さずにまずは向き合ってみる。それがジェンダーのとびらを開く、大切な一歩となる。

目次は次のとおり。「1章 ジェンダーって何だろう? —ジェンダーと自分らしさ」、「2章 「男性/女性」だけじゃない —ジェンダーと多様性」、「3章 性の多様性をめぐる過去と現在 -ジェンダーと歴史・制度」、「4章 家族の「当たり前」を見直す」、「5章 まじめにしゃべろう、恋愛と性 ―ジェンダーと身体」、「6章 だれもが活躍できる社会へ -ジェンダーと仕事」、「7章 なんで、メイクはマナーなの? ―ジェンダーと自己表現」、「8章 「隠れたカリキュラム」 —ジェンダーと学校」、「エピローグ それぞれの未来へ」

執筆した4人は、早稲田大学ジェンダー研究所のメンバーで、教育学、歴史学、法学を専門にする。研究フィールドも、日本、ドイツ、オランダ、カナダのケベック州と多様で、英語圏中心のジェンダー論とは趣を異にしている点も本書の特徴だ。大学での授業やジェンダー研究所で開催した学内ワークショップ「何カフェ」の経験などを踏まえ、討論を重ね、登場人物のセリフ一つひとつに注意を払った。ジェンダーやセクシュアリティを学ぶ意義は、本書の副題「自分らしく生きるために」にあらわれている。そのメッセージは、エピローグにおいて登場人物の5人がそれぞれ歩んでいこうとする道にも反映されている。

刊行後、本書の読者どうしをつなげて直接に語り合う、高校生や教員対象のワークショップも開催している。海外の大学で教えている知人からは、日本文化論のテキストとしてとても使いやすいとの声も届いた。日本の大学でも、新入生向けの導入教育で取り上げたり、あるいは本書の高校生たちが実践したように、高校の探究学習の時間においてもぜひ活用してもらいたい。

早稲田大学文学学術院教授
村田 晶子(むらた あきこ)

早稲田大学文学学術院教授。博士(文学)。専門は、社会教育学、教育とジェンダー。性差別と教育・学習の関係について研究。成人女性・育児期の女性の教育・学習実践研究。社会教育職員・対人援助専門職の養成と研修。著書に『女性問題学習の研究』(未來社、2006)。『なぜジェンダー教育を大学でおこなうのか : 日本と海外の比較から考える』(村田晶子,弓削尚子編、青弓社、2017)。『ジェンダー研究/教育の深化のために : 早稲田からの発信』(小林富久子,村田晶子,弓削尚子編、彩流社、2016)、『復興に女性たちの声を-「3・11」とジェンダー』(編著、早稲田大学出版部、2012)、『「おとなの女」の自己教育思想―国立市公民館女性問題学習・保育室活動を中心に』(社会評論社、2021)

(2023年6月作成)

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