「Wartime Economic Controls and Stock Market Efficiency in Japan, 1937–1943 」
日時 | 2025年6月30日(月)13:10~14:50 |
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開催方法 | ①対面 *11号館504教室にお越しください。 ②Zoom*お申込み完了の自動返信メールにて、参加用URLをお知らせいたします。 |
対象 | 学生・教職員・一般 |
講演者 | 結城 武延 氏 (東北大学 経済学研究科 准教授) |
要旨 | 本研究は,戦時期日本における統制経済への制度転換が,日本の株式市場に与えた影響を,1937~1943年の日次データを用いて定量的に検証するものである。分析対象とするのは,東京株式取引所の短期精算市場に上場していた全銘柄であり,戦前期から戦時期にかけて資本市場がどのように順応し,変容していったかについて,定量的手法を用いて明らかにする。 本研究はまず,経済史的文脈として,1931年の柳条湖事件以降の軍事拡張から1937年以降の統制経済に伴う経済状況を概観する。続いて,1937年の臨時資金調整法による民間投資の選別的統制から,1938年の国家総動員法による全面的計画経済体制への移行が,株式市場の制度的枠組みをいかに再構築したかを論じる。 分析にあたっては,(1)東京株式取引所の短期精算市場に上場していた全銘柄の日次株価から時価総額加重平均指数を構築するだけではなく,(2)短期金利(東京市中コールレート)の日次収益率を復元する。これらのデータに基づき,経済史的文脈において重要と考えられるイベントが株式市場における価格形成にどのような影響を及ぼしたかを検証する。 分析手法としては,イベント・スタディの方法を用いるが,特定の時期に株式収益率の変動が大きくなっていた可能性を考慮するため,確率的ボラティリティを考慮した資本資産価格モデル(以下,CAPM-SVモデル)をベンチマークモデルとして採用する。また,イベント・スタディを実施する際には,政府が資金配分を優先する軍需指定企業や財閥系企業と,それ以外の企業とで法制度の影響に違いがある可能性,すなわち制度リスク要因の異質性についても考慮する。 分析は三段階で行う。 • 第1段階:臨時資金調整法・国家総動員法施行などの制度変化や戦局変化といった経済史的文脈において重要なイベントが生じた時点を史料から特定する。 • 第2段階:適切なプレ・イベント・ウィンドウを設定し,軍需企業と非軍需産業,財閥系と非財閥系など属性を考慮したうえで,CAMP-SVモデルに基づいた正常リターンを推定する。これにより,制度変化が特定企業群にもたらした異質効果を明らかにする。 • 第3段階:正常リターンを推定したモデルに基づいて,イベントが生じなかった場合のリターンを計算し,実際のリターンとの差である累積異常リターン(以下,CAR)を推定する。もし,イベントの影響がなければ,CARの信頼区間がゼロを含む範囲に存在することになる。 本研究は,戦前期の比較的開放的な市場から戦時期の統制強化下へと移行する歴史的過程をふまえ,制度変容が株価形成に与えた影響を定量的に把握する点で独自性を有する。得られた知見は,戦時期日本における制度変化や戦局が市場の期待形成やリスク評価に及ぼす影響を実証的に示すとともに,現代の経済危機対応や金融政策設計への示唆を提供することが期待される。 |
世話人 | 宮島 英昭 (早稲田大学商学学術院 教授) |
参加申し込み方法 | 参加はこちらからお申込みください。※6月26日(木)17:00締切 |
その他 | 早稲田大学商学部・産業経営研究所・谷川寧彦分科会 |