Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

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私たちが日中韓の新しい未来を切り拓く!日中韓ホンネ交流キャンプに参加して

文学部 M.S.

私が東アジア関係に興味を持ち始めたのは、K-popにハマり始めた大学1年生の頃でした。当時は音楽を聴いたり、新大久保に遊びに行ったり、テレビに映る韓流歌手やドラマを見たりして楽しんでいましたが、ある時を境に日本のメディアから韓流が消え始めたのです。それは日韓関係の悪化に伴い、いわゆる「韓流ブーム」を不快に思う人が増えていることの表れでした。また、韓国でも反日の動きが起きていることに加え、中国でも同じようなことが起こっていると知りました。私はそのような動きを目にし、どうして長い間交流を重ねてきたお隣の国である韓国や中国と、こんなにも仲が悪くなっているのだろうと不思議に思い、自分なりに勉強しました。そして、日中韓の間に横たわっている様々な歴史問題を知ることができました。しかし同時に日本では日本の都合がよいように、韓国では韓国の都合がよいように、中国では中国の都合がよいように、歴史が解釈されているのではないかとも思ったのです。だとしたら日中韓関係はこのままずっと改善されることはないのでは、と危機感を抱きました。戦争を経験していない私たち若い世代が直接話し合って、過去についてお互いが抱いている考えをぶつけ合い、その上で未来に向けてどうしていくか考えていくことが大切だと感じた私は、友人が紹介してくれた「ICC日中韓ホンネ交流キャンプ」の概要を読んで、これだ!と迷わず申し込みました。

緑豊かな軽井沢において行われたキャンプには39名の学生が参加しました。最初このキャンプが「ホンネ」をキーワードにおいていることから、本音で話して、果たして中国人、韓国人の学生と仲良くなれるのかと不安に思っていました。しかしその不安はすぐになくなりました。なぜなら、ICCのプログラムがとても考えられて組まれていたからです。最初ICCの方に「2日目の夜に領土問題や歴史認識などいわゆるデリケートな話題について話す時間があるので、それまでそのような話題について話すことは禁止」と言われたことで、参加者たちは後で話し合いの時間が確保されていると分かり、それまで安心して、ただ楽しく交流を深めることができました。外でのレクリエーションや、お互いの国に対するちょっとした疑問や誤解を解消するようなディスカッション、美味しい食事、満天の星空。それらを通じて日中韓3か国の学生がどんどん距離を縮め、お互いについて少しずつ理解し始めているのを感じました。このように事前に交流を深めたことで、2日目の夜を迎えても各々が怖気づかずに現在の日中韓関係に抱く思いや考えをぶつけ合うことができました。ただ意見をぶつけ合うのでは喧嘩になってしまいがちですが、参加者はこの2日間の交流を通してお互いの考えのバックグラウンドを理解することが出来ていたので、思いやりながらも、本音でのディスカッションが可能になったのだと思います。

私はこの2日目のディスカッションを通して、3か国の学生たちが自国の歴史認識や相手国との関係に悩み、様々なことを考えている点は同じであるということがわかりました。だからこそキャンプのような場でしっかりと向き合い、相手の国について、そして自分の国についてよく知った上で、今後自分たちがどういう風に関係を築いていったらいいのかを考え、さらに今回話し合って得た3か国の未来にプラスになるようなことを、自分たちの周りの人にも伝えていくことが必要なのだと感じました。

まとめとして、この日中韓ホンネ交流キャンプの良い点を3つ挙げようと思います。
まず、参加者たちが、まとまった時間・生活を共に過ごす点です。1日目からじっくりと時間をかけて話し、共同で様々な作業を行ったことで、多くのことに気づくことができました。例えばお互いに似ている部分があるということや、最近はネットやメディアに翻弄されがちですが自分の抱いていた相手国へのイメージのなかには、ただの誤解も多く含まれているということ。こうしてまとまった時間を共に過ごしたことで生まれる「気づき」は、人と人とが時間をかけて直接関わりあうことで、生まれるものだと思います。

次に、デリケートな話題であっても、安心して話し合える環境が整っている点です。先ほども述べましたが、最後にそのような話題について話す場が用意されているという安心感があり、あえてまだ関係ができていないうちに歴史認識などの話をして関係をギクシャクさせることはありませんでした。また、参加者は1日目から長い時間をかけて関係を構築してきていたので、「きっとこのメンバーになら、歴史や領土の話をしても嫌われないだろう」という安心感があったように思えます。

最後に、お互いがこれからも繋がっていきたい、と思う気持ちが参加者たちに自然と生まれる点です。このキャンプを終えてからも、ただ一緒にご飯を食べに行ったり遊びに行ったりする仲間として関わるだけでなく、もっとお互いの国について知りたい、学びたい、と多くの参加者が声を上げました。その結果、今年度の参加者39人中37人が自主的な「勉強会」を計画し、毎月一回開催しています。私も参加しているその勉強会では、興味のある分野ごとにいくつかのグループに分かれて、毎回2班が発表し、全員でディスカッションを行っています。キャンプ後もこうしてお互いの国の歴史や文化について学び合える関係でいられるのは、ただ参加して終わりにするのではなく、今後も繋がって、自分たちが築いた交流の輪を周りにも広めていきたいという思いを参加者たちが持ったからだと思います。キャンプが終わっても、3日間共に生活したことで築いた関係は、その後も継続しています。その関係の継続性こそが、このキャンプの生み出す最も重要な利点であり、これからの日中韓の未来を切り拓く原動力となるのではないでしょうか。

大自然の中でたくさんの思い出を共有した仲間たちと

大自然の中でたくさんの思い出を共有した仲間たちと

私は「ICC日中韓ホンネ交流キャンプのような民間交流の場が増えていけば、いつの日か民間レベルから国家レベルへの友好関係のボトムアップが可能になるのではないか」と強く実感したことを中心に据えて、「未来を切り拓く日韓民間交流に向けての一考察」というテーマで卒論を書き上げました。それほどまでに私に感動と影響を与えてくれたこのキャンプが、来年、再来年と続いて、もっと多くの3か国の学生が交流の輪を広げていってくれたらいいな、と心から思っています。

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