目次
- 早稲田オープン・イノベーション・フォーラム2025(WOI’25)へ出展
- 高等研究所ホームカミングデーを開催
- ドイツ・コンスタンツ大学高等研究所を訪問――事務局間スタッフ・エクスチェンジを実施
- UBIAS ECR Working Groupの取り組み――キャリア初期研究者(ECR)支援の現在地
- コンスタンツ大学高等研究所との研究者相互派遣プログラムを実施
- インフォメーション
活動紹介
1. 早稲田オープン・イノベーション・フォーラム2025(WOI’25)へ出展
2025年11月26日(水)、早稲田オープン・イノベーション・フォーラム2025が開催されました。高等研究所からは自然科学・社会科学・人文科学の各領域を代表する3つのブースを出展し、以下の通り所員が最新の研究成果を紹介しました。
- 自然科学分野
テーマ:「自己進化するソフトウェア、宇宙の謎を探るデータ:ビッグデータ科学の挑戦」
発表者:尾上 匡房 講師、李 家隆 講師 - 社会科学分野
テーマ:「定量政治経済学の新展開」
発表者:深澤 武志 講師、門屋 寿 講師 - 人文科学分野
テーマ:「ウェアラブル アート&アーティファクト -人文学とファッションにおける産学連携の可能性-」
発表者:深山 絵実梨 講師、パフチャレク パヴェウ 講師
各ブースには、延べ50名以上におよぶ企業関係者、研究者、学生等が訪れ、終日盛況となりました。分野ごとに2名の研究者が共通テーマを掲げ取り組んだ今回の出展は、高等研究所らしい分野横断的な研究を発展させるプラットフォームとなったと言えます。
ご来場ならびにご参加の皆様、まことにありがとうございました。
早稲田オープン・イノベーション・フォーラム2025の様子は早稲田大学Webサイトにも掲載されています。
勢いづくスタートアップと最先端研究 – 早稲田大学
2. 高等研究所ホームカミングデーを開催
去る1月24日に、早稲田大学高等研究所3回目となるホームカミングデーを開催しました。所員幹事を務めた白井 達彦准 教授、楊 允晶 講師の報告をお伝えします。
2026年1月24日に第3回高等研究所ホームカミングデーを開催しました。本イベントは、高等研究所の所員並びに所友のネットワーキングを主な目的としております。前回の開催においても強調されていた、双方向的なコミュニケーションをさらに活発にするため、新しいプログラムを導入した企画・運営を行いました。その結果、研究テーマの交換や、それに伴った異分野交流、キャリア形成に至るまでさまざまな視点から議論を行い、参加者同士のネットワークを強めることができました。

所員幹事である白井 達彦講師(自然科学)と楊 允晶講師(社会科学)の発案をもとに企画したグループトークセッションは、新たな取り組みの一つです。全体のセッションのみでは、既に顔見知りの研究者同士のみで話してしまい、他の参加者との交流が取りにくいのではないのかという観点から、新たな関係の形成を促すようなプログラムとして企画しました。また、昨年度に続き、ブレイクタイムには所員の大湊 友也講師(自然科学)を中心に深山 絵実梨講師(人文科学)、アレクサンダー ストークス講師(自然科学)が会場でコーヒーを振る舞い、カジュアルな交流の場を支えました。
大隈会館2階にて、所員幹事の挨拶とともに幕を開けたメインセッションでは、まず所員・所友によるフラッシュトークが行われました。所友のマレト アレクサンデル准教授(早稲田大学国際教養学部)をはじめ、3名の所員(ワン リジオー 講師、大湊 友也 講師、ストークス アレクサンダー講師)が1人あたり5分のトーク・5分の質疑応答を行いました。また、会場内では所員によるポスター展示も実施され、自身の研究内容を視覚的に紹介する場となりました 。分野の垣根を越えた活発な議論の場は、イベントの冒頭を活気づけました。
所友によるキャリアトークでは、藤枝 俊宣教授(東京科学大学生命理工学院)、安中 進准教授(早稲田大学社会科学総合学術院)、コング ギャリー准教授(広島大学大学院人間社会科学研究科)の3名より、ご自身の研究やキャリア形成におけるご経験に基づいた、大変示唆に富むお話を伺うことができました。コーヒーブレイクを挟んだ後のフラッシュトークでは、フィットレル アーロン招聘研究員に続いて3名の所員(尾上 匡房 講師、ブラーデル ザビーネ ソフィア 講師、ホン シャオミン 講師)が、前半同様の手短な研究紹介を行いました。これらの発表は、その後の研究交流を盛り上げる大きなきっかけとなったと言えます。
- Professor Toshinori Fujie
- Associate Professor Susumu Annaka
- Associate Professor Garry Kong
所員・所友を交えた約6名ずつのグループに分かれ、コーヒーやドーナツを囲みながら行ったグループトーク。各テーブルで活発な議論が交わされた後、副所長の久保 克行教授(早稲田大学商学学術院)による閉会の挨拶でセッションは締めくくられました 。
夜には大隈会館3階に会場を移し、立食形式のパーティが開催されました。前所長の赤尾 健一教授(早稲田大学社会科学総合学術院)の乾杯の挨拶を皮切りに、参加者は料理やドリンクを楽しみながら親睦を深めました。最後に、2020年より高等研の所長も歴任された有村 俊秀教授(早稲田大学政治経済学術院)より本イベントを総括するコメントをいただき、全日程が終了しました。
ホームカミングデーは所員と所友との交流を深める場として大変有意義なイベントであったと感じられました。とりわけ、今回新たに導入したグループトークは、従来の交流を温める場としてだけではなく、新たなつながりを生み出す機会ともなりました。今後も継続的に開催することで、さまざまなバックグラウンドをもつ研究者が集う高等研究所ならではの場として、さらに洗練されていくことが期待されます。最後に、本イベントの開催にご協力いただいた所員ならびに事務所スタッフをはじめ、関係者の皆様に感謝申し上げます。皆様のおかげで、大変素晴らしいイベントとなりました。ありがとうございました。
イベントWebサイト
高等研究所 ホームカミングデー(2026年1月24日開催)
3.ドイツ・コンスタンツ大学高等研究所を訪問――事務局間スタッフ・エクスチェンジを実施
2025年12月、久保 克行 副所長と事務所スタッフ2名が、ドイツ・コンスタンツ大学高等研究所(Zukunftskolleg:通称ZUKO)を訪問しました。ZUKOとは、UBIAS(University-Based Institutes for Advanced Study)加盟機関として交流を開始し、2019年の箇所間協定締結以降、ジョイント・オンライン・ワークショップの開催、研究者の相互派遣、月例の事務局ミーティングなどを通じて協力関係を築いてきました。
今回の訪問は、これまでの研究者中心の交流を一歩進め、事務レベルでの連携をさらに深化させることを目的としたものです。2024年5月に実施したドイツ・スイスの高等研究所視察での対話を契機に、実務に即した相互訪問が「スタッフ・エクスチェンジ」として実現しました。

11月にはZUKOコーディネーターが本研究所を訪問し、12月には当研究所からメンバーを派遣しました。双方の訪問にあたっては、事前ヒアリングをもとに日程を調整し、研究者公募、学内人事、経理手続き、広報など、実務上の課題や運営ノウハウについて幅広く意見交換を行いました。
ZUKO滞在前半は、事務所スタッフによるZUKOオフィス業務の視察を中心に実施し、後半には久保副所長が合流。Dirk Leuffen 副学長らとの協議を通じて、大学本部の戦略や取り組みについても理解を深めました。研究打合せの実施やキャンパス紹介、大学コミュニティのイベント参加など、現地ならではの交流の機会にも恵まれ、実り多い滞在となりました。
機動力と一体感に支えられた運営体制
ZUKOおよびコンスタンツ大学の各部門を視察する中で印象的だったのは、部門間の緊密な連携体制と高い機動力です。コンスタンツ大学は3学部、学生約11,000名の比較的コンパクトな大学であり、小さな大学ならではの学内協働が効果的に機能していました。ZUKOもまた、学内外との連携や学外リソースの活用を積極的に進めています。
特に強く感じられたのは、「研究所の魅力を高め、国内外から優秀なフェローを獲得し、コミュニティを活性化させる」というミッションが組織全体で共有されている点です。フェローシップの多様化・国際化、研究支援体制の充実に向けて、組織が一丸となって取り組む姿勢が随所に見られました。とりわけ海外機関とのネットワーク構築に積極的であり、研究交流を行うだけでなく、ネットワークを通じて生まれるプログラムや機会を戦略的に活用している点は大変印象的でした。
また、コミュニケーションとコミュニティ形成を重視し、週例ミーティングやセミナーに加え、所属フェローの発案によるクリスマス・クッキング・パーティー(研究者や職員の家族も参加)など、日常的な交流の機会を設けています。こうした取り組みが研究所内の結束を強め、研究コラボレーションの促進や円滑な事務支援体制の基盤となっていることを実感しました。
さらに、ZUKOオフィススタッフの温かくフレンドリーな姿勢と高いホスピタリティも強く印象に残りました。訪問メンバーも自然にコミュニティの一員として迎え入れられ、信頼関係の土台が日常的な対話の中で築かれていることを体感しました。
戦略的な研究評価制度
もう一つ印象的であったのは、独自の「研究品質マトリクス」に基づく評価制度です。「卓越した研究者による卓越した研究を生み出す卓越した研究大学」を目標に掲げ、大学の戦略目標を具体的な指標へと落とし込み、実効性のある評価体制の構築に取り組んでいます。
まず品質管理部門が、出版実績、引用数、受賞歴、競争的資金の獲得額などの共通指標を提示します。その上で、各研究部門が自らの学問的特性に応じて指標を選定し、ピアレビューを通じて評価・議論を行います。このプロセスにより、各部門の実情に即した現状把握と戦略的改善が可能となっています。
大学の強みと課題を客観的に分析し、それを政府資金の獲得や研究戦略の策定に活かす姿勢は、極めて示唆に富むものでした。
今後に向けて
滞在中には、Dirk Leuffen 研究担当副学長、Peter Krause 文学学術院事務局長、キャリア初期・中堅研究者支援の専門コンサルタント Mirjam Müller 氏とも意見交換を行い、研究機関運営について多角的な視点を得ることができました。特に、分野横断的研究をいかに評価し、研究者のその後のキャリア形成をどのように支えるかという課題について、活発な議論を交わしました。
今回のスタッフ・エクスチェンジは、それぞれの国、機関の背景にある働き方や学術文化を体感し、理解を深めるとともに、どの取り組みを実務として応用・実装できるかを具体的に検討する貴重な機会となりました。大学の規模や制度に違いはあるものの、キャリア初期研究者の育成・支援という高等研究所のミッションにおいて、多くの共通課題を再確認することができました。
また、対面での滞在を通じて、研究所運営を担う事務レベルでの相互理解と協力意識が一層強まり、組織としての連携基盤がより確かなものとなりました。今後もこの相互に実りある友好的な関係を発展的に継続し、得られた知見を研究所運営に活かしていきたいと思います。
関連リンク
コンスタンツ大学高等研究所 Webサイト
4. UBIAS ECR Working Groupの取り組み――キャリア初期研究者(ECR)支援の現在地
昨年11月4日にガーナ大学で開催されたUBIAS (University-Based Institutes for Advanced Study) のDirectors’ Meetingに、当研究所の久保副所長がオンラインで参加し、WIASが共同議長を務める「ECR(Early Career Researcher:若手研究者)ワーキンググループ」の活動報告、および加盟機関を対象に実施したサーベイの結果発表を行いました。この記事では、WIASがグローバルな視点から主導するキャリア初期研究者支援の最新動向と、そこから見えてきた共通課題について報告します。
UBIAS ECRワーキンググループの発足と活動
UBIASネットワークにおけるECRワーキンググループは、2023年に名古屋大学で開催されたDirectors’ Meetingを契機に、UBIASネットワークをより実践的な連携の場として活性化させるための施策として設置されました。その背景には、次世代のアカデミアを担うキャリア初期研究者を育成する上で、各研究所が抱える課題やノウハウが十分に共有されていないという問題意識がありました。
WIASはドイツのコンスタンツ大学 Zukunftskolleg(ZUKO)と共に本ワーキンググループを主導し、発足以来、定期的なオンラインミーティングを通じて加盟機関間の意見交換を促進してきました 。また、各国のECRプログラムの実態、支援体制、直面する課題を可視化するため、詳細なアンケート調査(サーベイ)を企画・実施しました。

ECRプログラムに関する国際サーベイの実施
本ワーキンググループの活動の主軸として、2025年6月から9月にかけて「Questionnaire on ECR Programs (Selective) at University Based Institutes for Advanced Studies」と題したサーベイを実施し、UBIAS加盟約50機関のうち、半数にあたる24機関から回答が得られました。地域別ではヨーロッパからの回答が約75%(18機関)を占め、次いでアジア・太平洋地域(3機関)、北米(2機関)、オーストラリア(1機関)と続きました 。この地域的な偏りは今後のネットワーク拡大における課題を示唆するものの、高等研究所におけるECR支援の世界的潮流を把握する上で有益なデータが得られました。
サーベイ結果:3つの切り口から見るECR支援の実態
本サーベイは、若手研究者支援の取り組みを多角的に分析するため、以下の3つの主要セクションで構成されました。
1. プログラム設計と運営モデル (Program Design and Support)
各機関が定義する「ECR」は主に「博士号取得後7年以内」であり 、雇用形態は1年から7年程度の「任期付き」が主流という結果でした。
組織内での位置づけに関しては、若手研究者を研究所(IAS)独自の所属とするか、大学本体(学部等)の所属とするかで回答が分かれました。また、地域による運営モデルの特色も見られ、ヨーロッパでは多様なプログラム形態が存在する一方、アジア・太平洋地域ではECRを「フルタイムの教員」として迎えるモデルに重点が置かれる傾向がありました。
各研究所のミッションとしては、「優秀な研究者の育成」と「学際的研究の推進」が最優先事項として挙げられ、国際協力を重視する傾向も顕著でした。
2. ニーズへの対応と課題 (Support for ECR Needs and Challenges)
若手研究者への支援として最も提供されているのは、「学際的なネットワーキングの機会」「テニュア教員やメンターによるキャリアカウンセリング」「研究資金獲得やプロジェクト立案に関するトレーニング」の3点でした。
特に「学際性」の涵養については、座学よりも異分野交流や共同研究の実践が重視されています 。また、UBIASネットワークを活用したジョブポスティング等も行われていますが、研究所内や大学内での交流に比べると、グローバルな連携活用にはまだ拡大の余地があることが示唆されました。
3. インパクトと成果 (Impact and Outcomes)
プログラム終了後のキャリアパスとして最も多いのは、国内外の他大学のアカデミックポストへの就職でした 。これは、高等研究所がグローバルなキャリアへの「スプリングボード(跳躍台)」として機能していることを裏付けています。
プログラムの有効性評価では「国際的な研究ネットワークの拡大」などで高いスコアが記録されましたが 、長期的なキャリア追跡(トラッキング)を行っている機関はまだ限定的であることも明らかになりました。
共通する課題と今後の展望
今回のサーベイを通じ、地域や機関の規模、運営モデルの違いはあるものの、ECR支援において各機関が直面している課題には多くの共通項があることが浮き彫りとなりました。特に多くの機関が挙げた課題は以下の4点です 。
1.運営資金の確保
2.優秀な若手研究者の獲得とリテンション(維持)
3.キャリアパス支援
4.メンターシップの強化
各地域の学術文化や雇用慣行が異なる中で、一足飛びに全体をカバーする万能な解決策を見出すことは容易ではありません。しかしながら、メンターシップ・ハブとしてのデジタルプラットフォーム構築や、成功事例(ベストプラクティス)の共有データベース化といった、個別の事情を超えた「連帯」の可能性も提示されました。
一朝一夕には解決できない課題ですが、まずは着手可能な取り組みから一つずつ積み重ね、WIASとして実効性のある若手支援体制の構築とグローバルな連携強化に貢献していきたいと考えています。
今回のUBIAS Directors’ Meeting 現地会場の様子はガーナ大学のサイトに掲載されています。
University of Ghana Hosts 8th UBIAS Directors’ Conference
5. コンスタンツ大学高等研究所との研究者相互派遣プログラムを実施
所員の李 家隆 講師が、本プログラムの3人目の利用者としてドイツ・コンスタンツ大学高等研究所に滞在しました。第1弾レポートとして、今回の訪問の動機や滞在中の研究活動の様子をご紹介します。約2カ月の滞在を振り返る第2弾レポートは、3月下旬に公開予定です。
インフォメーション
訪問研究員・訪問学者
高等研究所では国際的に活躍する優れた研究者を海外から招聘し、本学研究者との学術的交流やセミナー等を通じて、 本学の研究活動の活性化に寄与しています。詳細情報についてはこちらをご覧ください。
訪問研究員
- 2025年9月1日~2025年10月1日
DE BOUARD, Anne
Senior Scientist (research director)、フランス国立科学研究センター (CNRS)、エコール・ポリテクニーク(フランス) - 2025年9月17日~2025年10月17日
鹿野 晋
教授、コンスタンツ大学(ドイツ) - 2025年9月26日~2025年10月26日
BOUJU, Emmanuel
Professor、ソルボンヌ・ヌーヴェル大学(フランス) - 2025年10月1日~2025年10月31日
ELLERMANN, Antje
Professor、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ) - 2025年11月22日~2025年12月22日
YAM, Kai Chi
Jardine Cycle & Carriage Professor、シンガポール国立大学(シンガポール)
訪問学者
- 2025年9月1日~2025年10月1日
LE RICHE, Antoine
Senior Lecturer、オックスフォード・ブルックス大学(イギリス) - 2025年9月8日~2025年11月6日
SELVA, Simone
Associate Professor、ナポリ東洋大学(イタリア) - 2025年10月25日~2025年11月30日
BADESCU, Gruia
Research Fellow (Research Group Leader)、コンスタンツ大学(ドイツ) - 2025年11月30日~2026年1月27日
HOANG, Lan Anh
Professor、メルボルン大学(オーストラリア) - 2026年1月8日~2026年3月4日
上垣 渉
準教授、エディンバラ大学(イギリス) - 2026年1月23日~2026年2月22日
DZHAMAY, Anton
Associate Professor、北京数理科学・応用研究院(中国)
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