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高分子が織りなす模様を利用したデバイス開発 須賀健雄 助教 (2012年10月当時)

  • 須賀健雄(Takeo Suga)助教(2012年10月当時)

機能をもった高分子の研究

私たちの身の回りには、プラスチックやゴムでつくられたものがたくさんあります。これらの材料は小さい分子がたくさんつながってできた巨大な分子で、高分子と呼ばれています。高分子の中には、容器に使われるプラスチックなどとは異なり、電気を伝える、光るといった機能をもつものがあります。この「機能性高分子」が私の研究対象です。特に、高分子が織りなす数十nm~数百nmサイズの模様に注目して、そこにさまざまな機能をもたせようとしています。

分子の好き嫌いで模様ができる?!

人間関係で相性があまりよくないことを、「水と油の関係」と表現することがあります。これは水と油が互いに混ざらないことに由来する言葉です。分子には互いに似たものどうしは混ざり合い(好き)、逆に似ていないと混ざり合わない(嫌い)という性質があります。このため、似ていない分子を混ぜ合わせても、徐々に好きなものどうしが集まって分離してしまいます。この分子の好き嫌いを高分子に応用すると、模様をつくることができます。具体的には、水と油の関係にある分子をそれぞれ数珠つなぎにして、ブロック型高分子をつくります(図1)。ブロック型高分子は、小さな分子とは異なり自由に動くことができないので、完全に分離することができずに模様になります。分子のつなぎ方、長さを変えれば、模様をさまざまにつくりわけることもできます。

図1:ブロック型高分子がつくる模様仲の悪いAとBをつないだブロック型高分子は、A、Bそれぞれが集まろうとするため、さまざまな模様(ミクロ相分離)を形成する。模様は、AとBをつなぐ長さによって変わる。

模様と機能の両立の難しさ

私は「模様は見た目に美しいだけではなく利用価値がある」と考え、模様に機能をもたせる研究をしてきました。まず、何か機能をもつ分子を設計します。それをつなぎあわせてブロック型高分子にして、模様をつくります。その結果、機能がどのように現れるかを評価していました。これは、電子を蓄積する分子を設計すれば電池をつくることができ、二酸化炭素に反応する分子を設計すれば二酸化炭素センサーをつくることができるという、応用範囲の広い研究です。しかし、実際にはなかなか思ったように機能するものをつくれませんでした。その理由を探っていくと、高い機能をもたせようと分子設計にこだわるときれいな模様ができず、反対に、きれいな模様をつくるように設計したブロック型高分子は単純な分子ばかりで十分な機能を備えていないことがわかりました。

模様の中に機能分子を入れ込む

このジレンマを解決するために、高等研で研究をするようになった頃から、模様をつくる分子と機能を担う分子(機能分子)を別々に準備することにしました。新しいコンセプトでは、模様をつくるのにポリスチレンとポリエチレンオキシドのような、一般的によく知られている分子の組み合わせを使います(図2)。この組み合わせでは、どのような模様ができるかすでにわかっている上に、大変きれいな模様ができます。そこに機能分子を入れ込むと、「機能をもつきれいな模様」がつくれました。これなら、模様がどのように機能に影響するかも検討できます。
機能分子を入れ込むのにも、分子の好き嫌いを利用しました。つまり、模様をつくっている高分子を好む分子に、機能分子を運ばせるのです。例えば、ポリエチレンオキシドがつくる模様に機能分子を入れ込むには、イオン液体のようにポリエチレンオキシドを好む分子につなぎます。
この方法で、私は最近、メモリを試作しました。そして、模様によって、1回データを書き込むとずっとそれを保持するもの、何度でもデータを書き換えられるもの、メモリとして機能しないものの3種類につくりわけられるという、興味深い結果を得ました。このことから、機能に模様が影響することが明らかになりました。

無題2図2:新しいコンセプトによるメモリ試作ポリスチレン(PS)とポリエチレンオキシド(PEO)の組み合わせで模様をつくり、ポリエチレンオキシドの部分に、電子を運ぶ機能分子を入れ込んだ。ドット状の模様のスフィアだけ、書き換え可能なメモリになった。PS-b-PEO(xy)のxyは、それぞれつなぎ合わせたスチレン分子とエチレンオキシド分子の数を表す。

高分子が織りなす模様の応用とその展望

このような模様と機能の研究は、例えば、有機太陽電池にも応用可能だと考えられます。有機太陽電池では、2種類の半導体の接合部分の模様が発電効率に大きく影響するからです。そのほかにも、電子の受け渡しが速い機能分子を使えば、キャパシターという瞬時に充電可能な薄型電池がつくれると思います。いずれも、実現にはさまざまな課題を克服する必要がありますが、模様をもつ高分子がデバイス材料として大きな可能性を秘めていることは明らかです。
今回「きれいな模様の中に機能分子を入れ込む」という、これまでにやられていない方法でメモリをつくりました。私は「高分子材料の価値をさらに高めたい」といつも考えています。この成果を受けて、多くの研究者が、高分子材料を使ったものづくりの重要性を改めて感じ、積極的に取り組むようになってくれることを願っています。

取材・構成:池田亜希子
協力:早稲田大学大学院政治学研究科J-School

 

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