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人と自然に話せるロボットを開発~声、あいづち、うなずき、視線を認識~ 藤江真也 助教 (2008年5月当時)

  • 藤江 真也(Shinya Fujie)助教(2008年5月当時)

自然な会話ができるロボットを作るために

声に出すだけで行き先を設定できる、音声認識装置を搭載したカーナビをご存知でしょうか。ハンドルから手を離さずに操作できるので便利なはずですが、間が空いたり言いまちがったりすると行き先を認識してくれず、結局利用しない人が多いかと思います。機械と会話するのは思いのほか難しいことなのです。なぜなのでしょうか。
それは、機械が発話の内容、つまり言語情報しか認識していないからです。人は、ものの言い方、顔つき、目つきといった、私たちを取り巻く言語以外の膨大な情報を頼りにして会話をしています。機械と人が自然な会話をするためには、人の何気ない仕草を認識し、動作させることが大切になります。
そこで私は、声の高低・速さ・強さや、あいづち、うなずき、視線を利用した効果的なコミュニケーション機能をもった音声対話ロボットの実現に向け、研究を進めています。

声の高低・速さ・強さの認識に成功

まず、声の「高低」「速さ」「強さ」といった「韻律(いんりつ)」に着目しました。
いままでの音声認識技術では、音声を字面としてしか認識できませんでした。たとえば、ユーザ(人)がロボットにお勧めのランチを相談する場面で、音声対話ロボットが「カレーなんてどうですか」と提案します。それに対し、ユーザが「カレーか~」と答えたとします。人同士の会話であれば、抑揚のある明るい声で答えたなら賛成とわかります。しかし韻律が認識できないロボットは、賛成か反対かを判断できないのです。
そこで、韻律からユーザの発話態度が肯定的か否定的かを判断する技術を開発しました。ユーザのあいまいな発言の真意を理解できるようになり、スムーズな会話ができるようになりました。

あいづちを打つロボット

また、人は会話中に「あいづち」を打っています。そこで、会話中にロボットがあいづちを打ったり、「聞き返し」を認識するシステムを開発しました。その結果、ユーザとロボットのあいだで以下の会話ができるようになりました。

ユーザ 「お昼ご飯が食べたいなぁ」
ロボット「どんな条件がありますか?」
ユーザ 「そうだねえ。あっさりしててー」
ロボット「はい」(あいづちを打つ)
ユーザ 「量は少なめがいいかな」
ロボット「それなら、蕎麦なんかどうですか?」
ユーザ 「その店はどこにあるの?」
ロボット「明治通りを左に行って、最初の交差点を左に行って」
ユーザ 「えっ?」(ロボットに聞き返す)
ロボット「コンビニが近くにある交差点だよ」(ユーザの聞き返しを認識)

あいづちを言うタイミングを計算したり、どんな言葉であいづちを打つのかを早く定めたりすることで、ロボットが自然なあいづちを打てるようになりました。

うなずきや視線の認識も可能に

ロボットを実験に用いることで、人同士の対話の観察だけではみえなかったことがいろいろとわかってきます。たとえば、相手の発話に対して500ミリ秒後に正確にあいづちを打つことは人にはできませんが、ロボットには可能です。さまざまな条件を設定することで新たな知見が明らかになってきています。私が行った実験では、ユーザのあいづちの300ミリ秒後にロボットが話し始めることが、最も印象が良いという結果を得ました。

会話ロボット「ROBISUKE」

私が開発した音声対話システムを搭載した会話ロボット「ROBISUKE」で、実証実験を行いました。ROBISUKEには、これまでに説明した韻律、あいづち、うなずき、視線、表情の認識技術が組み込まれており、それぞれの有効性を明らかにしています。
ロボットを実験に用いることで、人同士の対話の観察だけではみえなかったことがいろいろとわかってきます。たとえば、相手の発話に対して500ミリ秒後に正確にあいづちを打つことは人にはできませんが、ロボットには可能です。さまざまな条件を設定することで新たな知見が明らかになってきています。私が行った実験では、ユーザのあいづちの300ミリ秒後にロボットが話し始めることが、最も印象が良いという結果を得ました。

人と“会話”するROBISUKE

人間らしいロボットを作りたい

早稲田大学理工学部に入学した頃から、「知的なもの」を作りたいと思っていました。自律的に振舞うコンピュータを作りたいという思いもありました。
いまあるロボットは、あらかじめ仕組まれたことを忠実に再現する人形といってもいいでしょう。私は、ロボットを人間らしい、日々成長する賢いものにしたいと考えています。ロボットの日常的な運用や、学習機能をもったロボットの実現が今後の課題です。将来、ロボットを使う人のニーズに応えられるように、人間らしいロボットに共通する普遍的な機能を作りたいですね。

取材・構成:吉戸智明/中根圭一
協力:早稲田大学大学院政治学研究科MAJESTy

 

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