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電気化学反応を使って良い電池を作りたい 門間聰之 准教授 (2008年1月当時)

  • 門間 聰之(Toshiyuki Monma)准教授(2008年1月当時)

電池のエネルギーのもと

電池というとまず思い浮かべるのは、乾電池だと思います。ところが、一口に電池といっても実はさまざまで、それは大きく2種類に分けられます。放電するだけで使い捨てのものを「一次電池」といい、乾電池はこれにあたります。また、充電してくり返し使えるものを「二次電池」といいます。
電池は、「電気化学反応」をエネルギー源として使っています。つまり、化学エネルギーを電気エネルギーに変換し、逆に電気を化学エネルギーのかたちで蓄えるのです。
私は、この電気化学反応をうまく利用してよりよい電池を作るため、その材料や構造を研究しています。

新しい電池材料を作る

最近の私の研究テーマは、リチウムイオン電池より高い放電容量と出力をもつ材料の開発です。放電容量とは電池の容量のことで、出力とは瞬間的にどれだけ大きなパワーが出せるかを表します。リチウムイオン電池は充電が可能な二次電池で、携帯電話のバッテリーなどに使われています。いまの代表的な製品は、正極の材料としてリチウム金属酸化物、負極の材料として炭素を使っています。
放電容量を上げるため、負極にスズ系金属を使うという提案がされていますが、これには1つ欠点があります。充電すると負極の体積が3倍にも膨張してしまうのです。これがなぜ問題かというと、充電・放電のたびに3倍もの膨張と収縮を繰り返すことで、電極が壊れてしまうからです。
私は電池の放電容量向上と体積膨張の欠点を克服するため、スズにニッケルを混ぜた合金を負極として用いました。すると、スズ6ニッケル4の割合のものがスズ単独より性能がよく、炭素電極から比べると2倍近い放電容量をもつことがわかりました。しかし、相変わらず体積が膨張してしまう点は克服されませんでした。そこで、あるアイデアを試したのです。

電極を蜂の巣構造に

電極はふつう単なる金属のかたまりですが、そうではなく、細かい孔がたくさん空いたものにしようと考えました。それは、なぜ電極の体積が膨張するかを考えるなかから生まれました。一般的なリチウムイオン電池、つまりリチウム金属酸化物-炭素電池の場合、充電すると炭素のかたまりの中にリチウムイオンが入り込んで膨張し、逆に放電するとリチウムイオンが出ていって縮むのです。ということは、はじめから電極の膨張分に相当する「すき間」を作っておけば、膨らんだり縮んだりしないと考えたのです。
そこで私が用いたのは「メソポーラス」構造です。これは、メソポーラス材料がご専門の早稲田大学理工学術院・黒田一幸先生との共同研究です。メソポーラス材料とは、均一で規則的な細かい孔をもつ物質のことです。私は今回、蜂の巣のように並んだ、細長い孔(直径約10ナノメートル)が積み重なったメソポーラス材料を用いました。これは、界面活性剤を使って鋳型を作り、その周囲にスズ-ニッケル合金をめっきして作ります。
このメソポーラス構造をしたスズ・ニッケル合金を負極として使うと、予想通り、体積変化の少ない電極ができあがったのです。さらに、小さな孔がたくさんあるために電池反応が進む面積が大幅に増え、結果として大きな出力を取り出せる電極となっていることがわかりました。

革新的な電池をつくりたい

私の目標は、現状の単なる改良にとどまらない革新的な電池を世の中に提案することです。例にあげた金属酸化物-スズ・ニッケルを使ったリチウム電池は、負極の重量が半分となり現状のリチウムイオン電池に比べてごくわずかの性能アップにしかなりません。しかもコストがかかるので実用化は難しいでしょう。だからといって、この研究が無駄になるわけではありません。さまざまなアプローチをしていくことで、より性能のよい電池を作るための方策を提案できると思っています。今後、高等研では、スズ・ニッケル電極のまとめをし、さらによい負極材料やメソポーラス電極という新しい電極の利用法を提案していきます。ほかに、化学電池とはまた別の、燃料電池についても研究しています。将来的には、さらに小さく効率の高い燃料電池ができるよう、電極材料や燃料電池の構造について検討を進めています。

門間先生_図

半導体技術を使ってシリコンチップの上に作り上げた幅0.3mm長さ6mmの小型燃料電池(提供/門間聰之准教授)

安全なエネルギー社会へ

電池をはじめとするエネルギーデバイスは、今後さらに需要が増していくでしょう。より高いパワーをもち、大量の電気を安全にためることができ、低コストの電池の開発が求められています。
同時に、電池を使う側が注意しておかなければならないことがあります。電池というのは本来危険なものです。携帯電話が何日も使えるほどのエネルギーを蓄えているのですから。それが電気自動車やハイブリッド自動車ともなれば、さらに大きなエネルギーとなります。その電池の性能を上げるということは、より大きなエネルギーが集中するということです。それを、電池を開発する側も使う側も十分意識して、安全なエネルギー社会をつくっていければと思います。

取材・構成:吉戸智明
協力:早稲田大学大学院政治学研究科MAJESTy

 

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