Waseda Institute for Advanced Study (WIAS)早稲田大学 高等研究所

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国境を越えて:個人の移動から北東アジアにおける知識外交へ
ワン リジオー 講師

ワン リジオー 講師

現在の研究に至る背景

私の研究の歩みは、自身の人生経験と深く結びついています。私はこれまで、国、学術システム、そして人生のさまざまな段階をまたぎながら、移動を続けてきました。このような経験から、現在の研究を方向づける一つの問いが自然に生まれました。それは、「国境を越える」とは、単なる物理的な移動にとどまらず、社会的・知的にどのような意味を持つのか、という問いです。

この問いは、私の国際高等教育研究の中心に位置しています。私は、人・知識・制度が国家や文化の境界を越えてどのように相互作用し、それが個人の人生やより広い学術システムにどのような影響を与えるのかに関心を持っています。

具体的な研究活動

近年の研究は、大きく二つの相互に関連する領域に焦点を当てています。すなわち、「個人の経験」と「国際共同研究」です。

第一の研究では、西洋諸国のエリート大学で学ぶアジア人女性学生の経験を分析しています。彼女たちは一般に、学業成績が優秀で、グローバルに移動し、国際高等教育の中で可視性の高い「成功した存在」として捉えられがちです。しかし、インタビュー調査を通じて明らかになったのは、その経験がこうした単純な成功物語では捉えきれない、はるかに複雑なものであるという点でした。

多くの学生が、成果を上げているにもかかわらず、不安や自己不信、いわゆるインポスター症候群を経験していると語りました。また、明示されていない暗黙の期待や、必ずしも分かりやすく説明されない学術文化の中で、適応を求められる状況にも直面していました。

これらの経験を理解するために、私は「ハビトゥス」(過去の経験が思考や行動様式をどのように形成するか)や「インターセクショナリティ」(ジェンダー、人種、国籍といった複数の社会的属性の交差)といった概念を用いて分析を行っています。これらの視点は、なぜ能力の高い学生であっても新しい環境で困難に直面し得るのかを説明するのに有効です。同時に、多くの学生はこうした過程を通じて自己理解を深め、より省察的で柔軟な視点を獲得していくことも明らかになりました。

第二の研究では、分析の焦点を個人からシステムへと移し、中国・日本・韓国の三カ国間における過去25年間の研究協力を、大規模なWeb of Scienceの論文データを用いて検討しています。歴史的な緊張関係や近年の地政学的課題にもかかわらず、これら三カ国間の研究協力は顕著に増加していることが確認されました。

研究の知見

これら二つの研究は共通して、「移動」は人であれ知識であれ、機会であると同時に課題でもあることを示しています。

個人レベルでは、移動は異なる文化的・学術的期待の間に緊張を生み出す一方で、新たな視点や自己成長の契機ともなります。また、身体的・社会的に異なる形態の移動を経験する多様な人々が、類似した変容を経験し得ることも示唆されています。

システムレベルでは、国際共同研究は政治的・経済的条件の影響を受けつつも、研究者間の関係性によって支えられています。地政学的な緊張が高まる状況においても、信頼や共有された目標、長期的な関係性に基づいて、協力関係が維持されることが多いのです。

特に興味深い点として、中国・日本・韓国を含む共同研究は、世界平均と比較して高い学術的インパクトを持つ傾向が見られました。これは、地域内協力が量的に拡大しているだけでなく、質的にも高い潜在力を有していることを示しています。

今後の展望

これらの知見を踏まえ、今後の研究では大規模データと個人の経験との間にあるギャップを架橋することを目指しています。論文データは、誰が誰と協力し、どのような成果を生み出しているのかといったパターンを明らかにすることはできますが、研究者自身がその協力関係をどのように経験しているのかまでは捉えることができません。

研究者はどのように地政学的緊張を乗り越えているのか。何が国境を越えた協力の動機となっているのか。日常的な研究活動の中でどのような課題に直面しているのか。

これらの問いに答えるため、今後の研究において、私は中国や韓国の研究者との国際共同研究に関わる研究者を対象とした新たなプロジェクトを開始する予定です。インタビュー調査を通じて、グローバルな知識生産の「人間的側面」をより深く理解したいと考えています。

分断がより可視化されつつある現代において、学術的協働は重要な代替的可能性を提示します。それは、異なる背景を持つ人々が共に働き、知を交換し、相互理解を築く場を生み出します。こうしたプロセスを研究することは、学術的意義にとどまらず、社会的にも重要な貢献につながると考えています。

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