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カードは異文化の架け橋 世界大会優勝の早大生ブリッジプレイヤー

「世界中の人々と、テーブルを囲んで生涯ブリッジがしたい」

政治経済学部 3年 廣野 真凜(ひろの・まりん)

早稲田キャンパス 3号館にて。日本代表のユニフォームと金メダルと一緒に

国際統一ルールが存在し、世界各地で社交上欠かせないたしなみとされるトランプのゲーム「コントラクトブリッジ」。他の国と比べて日本での認知度はまだ低い中、2026年8月に中国で開催された国際大会「9th World Youth Transnational Championships」で世界の強豪相手に優勝した早大生が、廣野真凜さんです。世界の大舞台へ駆け上がった道筋や、米国・ニューヨークでの留学生活、今後の展望などを聞きました。

――コントラクトブリッジ(以下、ブリッジ)はどのようなゲームですか?

2人×2チームの4人で行うトランプのゲームです。52枚のカードを13枚ずつ配り、全員が1枚ずつ出して、一番強い札を出した人がその回(トリック)の勝者となります。これを13回繰り返し、各チームが何回勝てるか競います。ゲームの最初に、各チームは「自分たちが何回勝てるか(コントラクト)」を宣言し、宣言通りに勝てば加点されるのが特徴です。さらに大会では、運要素を抑えるため、手札を相手と入れ替えた試合を別のテーブルで同時に行い、「同じ手札でどれだけ良い結果を残せたか」を競います。推理力・記憶力・集中力を駆使して戦う奥深いゲームなんです。

――ブリッジを始めたきっかけを教えてください。

母がブリッジをしていたことがきっかけです。私は高校に入学するまで、インドやマレーシアなど海外で育ちました。世界共通のルールがあるブリッジは、海外で一種のコミュニケーションツールとして定着しています。特にインドでは普及していて、駐在員の家族はよくやっていましたね。母が多様な国の友人とプレイするのを見て、「なんか面白そうだな」と思って。本格的に始めたのは大学に入ってからでした。入学当時の早稲田大学にはブリッジのサークルがなく、関東の大学生が共同で練習する場を利用して本格的な練習を始めました。

真剣な表情でブリッジをプレイする廣野さん。2025年5月、タイ・アユタヤで開かれたアジア大会にて

――世界大会優勝までは、どのような道のりでしたか?

2025年12月に日本代表選手6名を決める選考会が実施され、試しに参加してみたところ運良く選ばれたので、そこから世界大会を目指す約半年間の日々が始まりました。ですが私はちょうどその期間、ニューヨークに留学していたので、関西在住のペアの学生と直接会えたのは世界大会当日だったんです。平日は週3で1日4時間オンラインで練習し、土日は最低でも1日は丸1日試合、そこに日米間の時差が加わり体力勝負の日々でした。記憶力が問われるゲームなので、みんなラムネをたくさん食べて、頭に直接糖分を流し込むようにしながら戦っていましたね。

2026年8月の世界大会優勝時のチーム。左端が廣野さん

世界大会の会場は中国でした。中国はブリッジの強豪国の一つで、参加した26チームのうち20チームが中国、中には小学生の選手もいました。緊張で手が震えミスもしましたし、優勝が決まった時は本当に信じられなかったです。

ブリッジを始めたばかりの頃は分からないことだらけで、練習の厳しさや、自分のミスでチームに迷惑をかけた罪悪感から、「やめようかな」と思っていた時期もあったんです。でも、優勝した瞬間に「頑張ってきて良かった」という思いがこみ上げてきました。チームメイトはもちろん、協力してくださった日本全国のブリッジプレイヤーの方々への感謝もひとしおでした。

――早稲田大学を選んだ理由や、大学で興味のある分野は何ですか?

海外で育ったので、日本の大学、中でも特にサークル文化が豊かで、全国各地から学生が集まり留学生も多い早稲田に魅力を感じました。また、絶対に留学に行きたかったので、留学制度の充実度にも注目したんです。国際教養学部と迷いましたが、国際関係に興味があったので、政治経済学部の国際政治経済学科を選びました。国際関係はさまざまな分野が混ざり合う学問だと感じているので、政治学だけでなく、経済学と公共哲学を学際的に、そして日本語と英語両方で学べる早稲田の政治経済学部は唯一無二だと感じています。ゲーム理論や行動経済学など、人間の行動や心理を理論に落とし込んで予測する学問がとても興味深くて。学びを深めていく過程で、外交や交渉の場面にもさまざまな数理モデルがあることに驚き、政治経済学部にして良かったなと思います。

――ニューヨーク大学でどのような留学生活を送りましたか?

日米関係や日本外交を専攻しているので、「アメリカから見た日本」を知りたくて、Global Leadership Fellows Programの制度を使って留学しました。ニューヨーク大学を目指したのは、多様な背景を持つ人々が集まるニューヨークに魅力を感じたからです。現地ではアメリカ外交論やゲーム理論の他、作曲やスペイン語など幅広く学びました。特に、インドにいた子どもの頃に学んでいたスペイン語について、ヒスパニック系住民の多いニューヨークで実践的な翻訳について学ぶことができ、有意義でした。

ニューヨーク大学のプログラムで訪れた国際連合本部にて

留学中は寮で生活し、ルームメイトと一緒に部屋を抜け出してアイスクリーム屋に行く、といった日常の一コマも鮮烈な思い出として残っています。留学は大変なこともありましたが、学食で毎回違うものを食べたり、大学に行く途中で違う道を通ってみたり、どんな些細なことでも良いので毎日違うことをやってみようと意識したことで、より刺激的な日々になったと思います。

さらに、ブリッジの全米大学対抗戦「2026 Collegiate Bridge Championship」でニューヨーク大学代表として出場し3位になったのが、留学中一番の思い出です。チームメイトは出身地がバラバラで、「いろんな地域や価値観の人と会いたい」という留学の目的が、ブリッジの世界でもかなうことになりました。

ミネアポリスで行われた全米大学対抗戦にて、ニューヨーク大学代表チームでの一枚。左から2番目が廣野さん

――今後の展望を教えてください。

大学卒業までブリッジに打ち込みます! 直近では、2026年9月に、「第26回アジアパシフィック・ブリッジ・ユース選手権」に参加しました。中国に敗れ準優勝となり悔しかったものの、昨年に比べスコアの差が縮まっていること、そして私個人でチームに大きく貢献できた場面もあり、チームとしての成長を感じています。昨年のアジア大会で知り合った他国の選手に再会し、新しい友人もたくさん出来るなど、国際大会の魅力を満喫しました。

また、「早稲田ブリッジクラブ」というサークルを立ち上げたので、今年の日本代表としての活動が終わった今は、後輩の指導にも力を入れていきたいです。さらに、日本コントラクトブリッジ連盟の寄附講座「コントラクトブリッジで学ぶ数理科学入門(GEC設置科目)」ではTA(ティーチングアシスタント)を務めています。

キャリアの面では、大学での学びや語学力、国際経験など、自分の能力や経験が一番生かせる仕事に就きたいです。競技でなくても、例えば、もし将来海外で仕事をしている合間に、現地の人々とテーブルを囲んでブリッジができたら素敵だなと思います。

第938回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター
法学部 3年 金井 秀鴻

【プロフィール】

ニューヨーク大学前のWashington Square Parkにて

東京都出身。国際基督教大学高等学校卒業。幼少期はマレーシアとインドで育った。趣味は美術館巡りで、ニューヨーク留学中はMoMA(ニューヨーク近代美術館)やメトロポリタン美術館によく足を運んでいた。スペインのプラド美術館、日本の国立西洋美術館、東京都美術館、上野の森美術館もお気に入りだという。愛猫のぽーちゃんとつばき、ウーパールーパーのうーちゃんと一緒に暮らしている。

早稲田が分かる大学公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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