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若者の酒離れを食い止める! 大学とバー、二つのフィールドでの挑戦

「お酒は単なる嗜好(しこう)品ではなく、歴史や文化も伝える存在」

政治経済学部 4年 大石 清地(おおいし・せいち)

早稲田キャンパス 3号館にて。「Moon Shine Cocktail Competition 2025」のチャンピオン賞品であるシェーカーを手に

21歳頃から本格的に酒類に関心を持ち、高田馬場にあるバー「THE HISAKA」でバーテンダーとしてアルバイトをしている大石さん。2024年10月には半年間休学し、稲とアガベ株式会社で4カ月の間、酒類製造のインターンに参加しました。また、静岡県三島市に蒸留所を持つWhiskey&CO.株式会社が主催する、カクテルコンペティション「Moon Shine Cocktail Competition 2025(以下、MSCC2025)」では、プロのバーテンダーであるファイナリスト6名を見事抑え、学生ながら優勝! 他にも、20歳以上の学生や25歳以下を対象とした酒類セミナーを主催するなど、「若者の酒離れ」を食い止めるべく活動している大石さんに、インターンに参加した経緯や大会で優勝した感想、そして今後の展望を聞きました。

――なぜ、お酒に関心を持つようになりましたか?

小さい頃からラムレーズンなどの洋酒が入ったお菓子やデザートがすごく好きだったんです。でも、母親に「お酒が入っているからたくさん食べるのはダメだ」って言われて。じゃあ、お酒を飲める年齢になったら好きなだけ食べようと思うようになり、20歳まではしっかり我慢しました。20歳になってからは、ただ酔うためにお酒を飲むということはしたくなかったので、アルバイトで稼いだお金で良いウィスキーを買うなどして、お酒を楽しんでいましたね。

カクテルに興味を持ったのは、地元のバーで、バーテンダーが作ったカクテルと自分が作ったカクテルを飲み比べたことがきっかけです。同じ材料と分量でも、作る人によってお酒のおいしさに違いが出るという魅力を知り、客としてバーによく行くようになりました。

――バーテンダーのアルバイトをするようになったきっかけは何ですか?

若者の酒離れを最近聞くことが多いので、それを止めたいという思いで始めました。自分が働いていると友達がバーに足を運ぶハードルも下がりますし、若者がもっとお酒に興味を持ってくれるようになると思うんです。結果的に酒類業界が潤って、自分もおいしいお酒を飲み続けられるのではないかという考えもありますね(笑)。

2024年7月、バーで働きはじめた時の大石さん

――酒類製造のインターンに参加しようと思った理由や、インターンで印象に残っていることを教えてください。

バーで接客をしていると、お客さまからお酒ができる過程に関する質問を受けることが多いんです。でも、インターネットで調べた知識をただ説明するだけでは、お客さまにとって付加価値にならないと感じ、自分自身の経験を基に話せるようになりたいと考えました。最初は海外でのインターンを検討していましたが、日本のお酒について説明できないまま海外へ行くことに違和感があり、まずは日本の酒造りを学ぼうと決意しましたね。

そんな中、大学2年生の時に、秋田県で日本酒の醸造技術を活用しながら新しい酒造りに挑戦している、稲とアガベ株式会社を知ったんです。ちょうど秋田県の地域おこし事業として行政が仲介するインターンの応募もあったので、参加を決めました。

インターンでは、米を洗って蒸すところから、こうじづくり、発酵管理まで酒造りのほぼ全工程に携わりました。特に印象的だったのは、通常は熟練の蔵人(くらびと)しか担当できないこうじづくりを経験できたことです。蒸した米を広げて冷まし、こうじ菌を振りかけながら最適な温度に調整する作業は、まるでゲームのような面白さがありました。また、発酵の度合いを確認する分析作業も楽しかったです。糖分とアルコールの比重差を利用してアルコール度数を測定するんですけど、その工程が理科の実験のようで好きでした。

発酵を均一に進めるために原料を櫂(かい)棒でかき混ぜる櫂入れ(左)、こうじ室で蒸した米の温度を調整する作業(右上段)、米・豆などを蒸すのに用いる甑(こしき)から蒸米を取り出す作業(右下段)

――インターンを終え、「MSCC2025」では見事優勝に輝きました。この大会を通して苦労したことや成長できたことはありますか?

社内試験が大変でした。アルバイト先のバーテンダーとして、店のメニューにないオリジナルカクテルを提供するには合格する必要があったんです。大会で優勝したとしても、そのカクテルをお店でお客さまに提供できないと意味がないので、合格するために練習を重ねました。試験に合格してから大会までは2週間ほどしかなかったのですが、大会で作りたいカクテルのテーマはずっと頭の中で決まっていたので、それを形にすることに集中しました。

この大会はお酒の魅力をどう表現するかが評価されるコンペティションで、最終審査では、約16分で2種類のカクテルを作りながら、コンセプトやカクテルに込めた思いについてプレゼンテーションします。味や技術だけでなく、プレゼンテーション力やサプライズ性も評価されるため、会場の音響を確認したり、照明演出について相談したりと、世界観づくりにもこだわりました。準備を徹底し細部までこだわった結果、優勝することができたので、自分にとって大きな自信につながったと感じています。

写真左:「MSCC2025」最終審査でカクテルを作りながらプレゼンテーションをしている様子。大会はプロのバーテンダーだけでなく、一般の人も参加できる
写真右:「MSCC2025」で優勝したカクテル。バーボンウイスキーベースで、熟果香を立たせたショートカクテル「花時(Hanadoki)」(左)と、熟成前のウイスキーが持つスパイシーな香りにフォーカスしたホットカクテル「常磐(Tokiwa)」(右)。開催場所である三嶋大社の御祭神・大山祇命(おおやまつみのみこと)の娘、石長比売(いわながひめ)と木花之佐久夜毘売(このはなさくやびめ)のエピソードをカクテルに落とし込んだ

――大学ではどのようなことを学んでいますか?

マルティ・オロバル ベルナット准教授(政治経済学術院)の学際領域演習ゼミに所属し、主に近代宗教思想について学んでいます。「近代とは何か」「宗教とは何か」といったテーマについて議論することが多く、自分の興味関心に合わせて考えを深められるところが魅力です。

卒業論文では、お酒の「脱宗教化」について掘り下げたいと思っています。古代からお酒は神と人間をつなぐ存在として考えられていましたが、現在は科学の発展によって発酵やアルコールの仕組みが明らかになり、人の手によって酒造りをコントロールできるようになりました。そうした中で、お酒は少しずつ宗教的な意味合いから離れていっているのではと感じたので、このテーマで研究を進めようと考えています。

ゼミのメンバーとの集合写真。一番左が大石さん

――最後に、今後の展望について教えてください。

若者の酒離れを止めるために開催している、20歳以上25歳以下向けのお酒のセミナーを続けていきたいです。セミナーは開催するお店に1人約3,000円で5〜10種類試飲できるプランを組んでもらい、それに加えて、ジンの蒸留所の見学や、カクテルの味わいを画用紙に書いて言語化するといったアクティビティーも行っているので、若者がさらにお酒への理解を深められる機会になっていると思います。

学業面では大学院への進学を考えていて、将来大学で講義を担当することにも興味があります。お酒に関する研究では、健康への影響が注目されることが多いですが、私は文化的な価値にも目を向けたいです。単なる嗜好品ではなく、歴史や文化を伝える存在でもあるお酒。その価値を学術的な視点から掘り下げ、発信していきたいと考えています。また、カクテルづくりや接客を通じてお酒の魅力をお客さまに伝えていくという、二つの軸を持ち続けたいです。

セミナーの様子。「エシカルスピリッツ 東京リバーサイド」にて、ジンの蒸留所の見学をしているところ(左)。「シェリーミュージアム」にて、スペインで造られるシェリー酒を学ぶ様子(右)

第931回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター
人間科学部 4年 西村 凜花

【プロフィール】

高校で囲碁部に所属していた時の一枚

静岡県出身。静岡県立浜松北高等学校卒業。お酒以外の趣味は、囲碁とフットサルをすること。バーテンダーの他に、子ども向けフットサルコートで運営や審判のアルバイトをしている。

Instagram:@o_se_chi_7

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