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ウガンダの子どもたちを“主人公”に 夢を描いた絵本に込める早大生の思い

「子どもたちが、私に夢を持つ勇気をくれた」

法学部 4年 天谷 知香(てんや・ちか)

1年生でウガンダを訪れた時、現地の学校帰りの子どもたちとの一枚

アフリカと聞くと、「経済的な貧しさ」や「大変な生活環境」といったイメージを抱くかもしれません。しかし、天谷さんがウガンダで出会ったのは、エネルギッシュで笑顔がすてきな、自分の夢をまっすぐに語る子どもたちでした。天谷さんは、現地での経験をきっかけに、子どもたちを主人公にした絵本『Pearl’s Dream』を制作。クラウドファンディングを経て、実際に現地に絵本を届けました。活動の背景や絵本に込めた思い、そして自身の価値観の変化について聞きました。

――ウガンダを訪れたきっかけと、初めて現地を訪れた際の印象を教えてください。

大学1年生の時、アイセック早稲田大学委員会(公認サークル)が実施するグローバル・ボランティアプログラムに参加したのがきっかけです。海外へ行った経験がなかったので不安もありましたが、「未知の場所へ行ってみたい」という気持ちが強く、渡航先としてウガンダを選びました。また、ニュースなどで見るアフリカは、悲惨な状況ばかりが切り取られている印象でしたが、実際はどんな暮らしなのか、自分の目で見てみたいという思いがありました。現地へ降り立った瞬間、赤土の匂いや砂埃(ぼこり)の舞う空気感に包まれて、「国境って本当に越えられるんだ」と驚くと同時に、これから始まる未知の体験に胸が高鳴ったことを覚えています。

ウガンダで過ごした6週間、現地の学校Happy Times Childcare Initiativesでは、折り紙や算数を教えたり、性教育の授業やゴミ拾いプロジェクトを実施したりと、さまざまなボランティア活動に取り組みました。子どもたちは笑顔が絶えず元気いっぱいで、街は音楽やダンスにあふれていて、あたたかく活気のある場所でした。物資が豊かとはいえない環境でも、日常を楽しんで生きている人々の姿を見て、アフリカの印象がパッと明るく変わっていったんです。

写真左:小学3~4年生のクラスの様子
写真右:子どもたちと折り紙をする様子。最難関のドラゴンに挑戦し、試行錯誤している

――なぜ絵本を制作したのですか? また、絵本にどんな思いを込めましたか?

現地で出会った日本人大学生2人と、「子どもたちを主人公にした絵本を作りたい」と話したことが始まりでした。子どもたちが将来の夢を絵に描く授業があり、「夢を絵本として残せたらすてきだよね」と盛り上がったんです。そこで、3人でKilaboというグループを作って絵本を作ることにしました。

普段は元気いっぱいの子どもたちですが、時に自分のルーツに引け目を感じているような瞬間があり、悲しくなったことがありました。そんなウガンダの子どもたちに、「あなたたちは私たちに勇気をくれる存在なんだよ」というメッセージを形に残したかったというのも大きな理由です。

絵本という媒体を選んだのは、視覚的に印象が残りやすく、紙として形に残る点に魅力を感じていたからです。現地では文字を読めない子どもや大人も多く、思いを伝えるには絵が必要だと考えました。また、写真ではなくイラストにしたことで、貧しいイメージにとらわれず子どもたちの笑顔や表情に焦点を当てられるとも思いました。

写真左:Kilaboメンバー。Kilaboとは、ウガンダの現地語であるルガンダ語で「贈り物」という意味で、現地の子どもたちから天谷さんがもらったあだ名だという
写真右:制作した絵本を見せてくれた天谷さん。こだわりが詰まった絵本に、話が止まらない

――どのように絵本制作やクラウドファンディングを進めましたか?

絵本のイラストは私が担当したのですが、最も苦労したのは、子どもたちの表情や顔立ちを丁寧に描くことでした。日本人の顔をそのまま描いて肌の色を変えるだけでは、本当の姿にならないと感じ、現地で撮影した写真を参考にしながら、骨格や目元、唇の特徴を研究し、何度も描き直しました。ストーリー構成にも悩み、当初は「夢が見つからない主人公が夢を見つける」という展開を考えました。でも、子どもたちと触れ合う中で「子どもたちはすでに夢を持っている」と気付き、ありのままの日常を描きながら、その中で自然と夢の話題につながっていくという、シンプルな形にしたんです。

絵本の主人公パールちゃんの顔を制作している画面。同一人物に見える顔が思うように描けず苦労したという

資金面では、絵本制作や現地へ届けに行く資金を調達するため、クラウドファンディングを実施しました。私たちの活動を日本の方々にも知ってもらえるきっかけにもなると考えたからです。最終的には、100人以上の方から80万円以上の支援をいただきました。読者からは、「童心を思い出した」「自分も夢を持ちたいと思う」という感想をいただいたことも印象に残っています。多くの方に応援していただける活動なのだと実感し、大きな励みになりました。この活動を通して、日本の方々にウガンダを身近な存在と感じてもらうきっかけにもなったことが、何よりうれしいです。

――実際にウガンダへ絵本を届けた時、子どもたちはどんな反応をしていましたか?

2026年3月、ウガンダへ絵本を届けに行くとまず、絵本の登場人物が自分たちと同じ制服を着ていることに、子どもたちがすごく喜んでくれました。「私たちの制服だ」と言いながら、何度もページをめくっていた姿が印象的で、「贈り物(Kilabo)が来た」と喜んでくれる子もいました。完成した絵本を開き、自分たちが主人公だと気付いた時の子どもたちの目の輝きは、今でも忘れられません。

最終的には、現地の校長先生が全校集会を開いてくださり、図書館で読み聞かせをすることになりました。子どもたちが何十人も集まり、一斉に絵本に聞き入ってくれた時は、本当に感動しました。さらに、「お金はなくなってしまうけれど、本は知識として残る」と校長先生が話してくださり、週に一度、本を読む時間を設けることになったんです。図書館には本がたくさんありましたが、ほとんど使われていない状態だったので、子どもたちが本に触れるきっかけになったこともうれしかったです。「やりたいことを形にしたい」という思いで活動してきましたが、結果的に、その活動が子どもたちや学校にとっても意味のあるものになったと感じています。

写真左:絵本の読み聞かせの際の一コマ。右が現地の校長先生
写真右:Kilaboメンバー3人と現地の子どもを絵本の裏表紙に描いた

――活動を通して、自身の価値観にどんな変化がありましたか?   

ウガンダで生活したことで、「どこでも生きていける」と思うようになりました。水が自由に使えない環境や、洗濯物を手洗いする生活を経験したことで、日本で当たり前だと思っていたことを見つめ直すようになったんです。また、ウガンダへ絵本を届ける前、日本で就職活動をしていたのですが、帰国後は給料などの好条件で就職する以上に、もっと自分が本当にやりたいことを大切にしたいと思うようになりました。

絵本の最後には、「あなたの夢は何?」という問いがあります。この絵本を通して私自身が改めて見つけた夢が「弁護士」でした。実は、ウガンダで読み聞かせをした際、全校生徒の前で、「私は弁護士になりたい」と宣言しました。するとある子が、「じゃあ私も弁護士になる」と言ってくれたんです。その言葉を聞いて、もう後戻りできないなと感じました。現在は法科大学院進学を目指して必死に勉強しています(笑)。

――これから新しいことに挑戦したい学生へメッセージをお願いします。

どんなことでも「やってみたい」という気持ちが少しでもあるなら、まず飛び込んでみることが大切だと思います。ウガンダに行った経験も、絵本制作も、最初は「面白そう」という好奇心から始まりました。実際に行動してみると、自分では想像していなかった出会いや価値観の変化が待っています。私自身、ウガンダの子どもたちに夢を宣言し、逆に彼らから夢を持つ勇気をもらいました。これからも自分の夢を大切にしながら、挑戦し続けていきたいと思っています。

学校の休み時間に子どもたちが折ってくれた折り紙を頭に乗せた、天谷さんお気に入りの一枚。着ている服は、現地で一目ぼれして購入したもの

第930回

取材・文:早稲田ウィークリー学生スタッフ
商学部 2年 照井 雄一朗

【プロフィール】
長野県出身。長野県長野高等学校卒業。松原芳博教授(法学学術院)のゼミで刑事法などを学ぶ。好きなワセメシは「新北京」で、安くておいしいのだそう。現在は学生運営のカフェ「知るカフェ」で働いている他、 早稲田大学躰道会(公認サークル)に所属しており、稽古に励んでいるという。    

制作した絵本を持って

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