「自分を育ててくれた家族や地元に恩返しがしたい」
社会科学部 4年 三浦 音央(みうら・ねお)

地元の愛媛県の田んぼにて
大学3年間で卒業に必要な単位をほとんど取り終え、残りをオンデマンド授業に切り替えて、地元の愛媛県西条市で米作に携わる三浦音央さん。現在は、家族愛と地元愛を胸に、年の離れた2人の兄とおいしいお米を作り、SNSを通じて世の中に自身の活動や農業の重要性を広める活動にいそしんでいます。そんな三浦さんは、入学時から今の生活を想定していたわけではなく、ある出来事をきっかけに、地元に戻り農業に従事することを決意したそうです。自分を育ててくれた地元や家族の役に立ちたいという素直な思いで、在学しながらも愛媛県で活躍する三浦さんに、今の生活や活動に至る経緯、込められた熱い思いを聞きました。
――なぜ、地元にまつわる活動を始めたのですか?
自分が中学生の時に大学を卒業した兄たちが、農地も機械も倉庫もない状態から地元で新規就農をし農家になったので、中・高校生の時に手伝っていました。そのため、自分も何かしら愛媛に貢献し「愛媛のものを世界に広めたい」という思いが募っていたことがきっかけです。ただ、はじめは都心部や海外で働く会社員や起業家への憧れから、「兄たちと違う人生を歩みたい、絶対に農業はやりたくない」と思い、別のアプローチで事業をしたいと考えていました。大学入学後は、愛媛の特産品である今治タオルを作っているIKEUCHI ORGANICに長期インターンシップをして、ショップアシスタントをしたり、今治タオルのイベントを開催したりしていました。
また、2年生の秋から1年間ドイツに留学した際には、デュッセルドルフ稲門会の方に協力してもらいながら、兄たちが作った愛媛のお米を使ったおむすび屋さんをドイツに開こうと奔走していました。他にも留学先では、現地の学生に愛媛に関する簡単な講義も行うなど、第1次産業ではないアプローチで地元に貢献しようと活動していました。いろいろなことに体当たりで取り組みましたが、活動していく中で、やっぱり東京で就職しビジネスの経験を積み、さまざまなコネクションをつくってから愛媛に戻り事業を始めるべきなのでは、と将来に対する漠然とした不安や悩みは常に頭の片隅にあったので、よく母に相談していましたね。
写真左:IKEUCHI ORGANICのインターンシップで、お客さまに商品のバスタオルの説明をする様子
写真右:留学中の写真
――そこから地元で農業に従事することを決意したきっかけは何ですか?
転機が訪れたのは、留学中に母が亡くなったことでした。母の死は、家族の存在が当たり前のものではない、かけがえのないものだと心の底から感じた出来事で、当時将来に対して一歩踏み出せずにいた自分に、卒業後すぐに愛媛に戻る決断を後押ししてくれました。また、地元を愛し還元するには、まず、家族を愛し還元することからだと思い、家族として兄たちの農業を手伝うことの重要性に気付き、今に至ります。

最愛の母と入学式にて
――今の生活について詳しく教えてください。
今は愛媛県を拠点にしていて、実家から車で20~30分のところにある兄の家に、兄の家族と一緒に住んでいます。兄の家の近くに田んぼがあり、朝6時に起床し、日中は主に農作業に取り組みます。中山間地域にある田んぼは、小規模なものが何枚もあるのでその分手間もかかりますが、一つ一つ丁寧に管理や作業をしています。16時頃に作業を終えると、ランニングなど軽くエクササイズをしてから大学の課題に着手し、それらを一通り終えてから、動画編集などSNSの発信活動に取り組むのが、1日のサイクルです。

田植えをしている様子。自然と笑みがこぼれる三浦さん
SNSでは、「大隈米信」というアカウント名で農作業の様子や、日本の農業事情などを発信しています。定期的に動画を撮影・編集してvlogを投稿しており、年内にInstagram、TikTok、YouTubeの総フォロワー数5万人に達することが目標です。また、似たような活動をしている人や愛媛の人とつながりを作るなど、愛媛を盛り上げるためにネットワークを広げることにも力を入れてます。
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日本の農業人口に占める若手農家の割合について説明するリール動画
――地元である愛媛や家族に対して、なぜ強い愛着を持っているのですか?
地元愛を言語化するのは難しいですが、自分を育ててくれた場所が愛媛だから、というシンプルな理由です。こういった感情は理屈ではなく感覚的なもので、愛媛で過ごしている中でおのずと好きになっていったんだと思います。愛媛の美しい自然や、関わってきた人々から受けた好意に対する感謝の気持ちによって、地元愛が形成されました。
また、家族愛は身を粉にして自分を育ててくれた両親への感謝と、幼少期からの家族で過ごした時間から育まれたと感じています。三浦家は「何事も家族でやる」意識が強いので、何か決め事をする際にも必ず家族会議が開かれていました。そんな環境で過ごしたことも理由の一つですね。
自分を構成する源みたいなものは、愛媛で家族や仲間と過ごした日々から生まれたと強く感じるし、そのおかげで今の自分があると思うと、自分だけの人生じゃないという気持ちになります。だからこそ、地元や家族に対して、さまざまな形で恩返しをする。こういう好循環がいろんなところで起きたら良いな、と思います。

兄の家族との集合写真
――今後の目標や展望はありますか?
SNSを通じて、農業に対するイメージを変えたいですね。農業は過小評価されている部分があり、当たり前にあるものだと思われがちなんですよ。なので、農家のリアルな部分を発信して、少しでも農業の重要性を知ってもらい、興味を持ってくれる人を増やしたいです。
また、愛媛の農家の皆さんや農業系のインフルエンサーとつながって、自分の大好きな愛媛の魅力を世界中に届けたいです。これらの活動を通して、特に地方出身の方などに、地元や家族を大切にするという感情を抱いてほしいという願いもあります。結局そういった気持ちを持つことが、第1次産業や地方創生につながる第一歩になりますから。自分が地元を愛する若者のロールモデルになりたいです。

あふれんばかりの地元愛を胸に躍動する三浦さん。今後から目が離せない
第933回
取材・文:早稲田ウィークリーレポーター
政治経済学部 2年 和田 悠良
【プロフィール】
愛媛県西条市出身。愛媛県立今治西高等学校卒業。幼少期は、英国やイタリアに住んだこともある。大学近くに住んでいた頃は、同じ学生マンションに住む友人と共同スペースで何気ない時間を楽しんでいた。大のサッカー好きで、サッカー観戦のために現地まで赴くこともよくあるそう。現在の趣味は、ランニングやヨガなど体を動かすこと。お勧めのワセメシは、「武蔵野アブラ学会」の油そばと「キッチンミキ」のチーズハンバーグ。
Instagram:@okumakomenobu
YouTube:@大隈米信
写真左:自作のお米を手にたたずむ三浦さん
写真右:三浦さんは高校時代、サッカー部に所属していた






