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学生名人戦優勝! 自分らしい将棋を探求する、学生日本一の早大生

「幼いころのライバルとの出会いで、将棋と本気で向き合うようになった」

公認サークル「将棋部」
法学部  2年 川島 滉生(かわしま・こうせい)

早稲田キャンパス8号館の入口にて

全国各地で予選を行い、勝ち抜いた32名の学生が決勝トーナメントを争う将棋大会「学生名人戦」。学生将棋界でも有数の大会として知られており、優勝者には「学生名人」の称号と、プロの棋士たちと対戦できる「朝日杯将棋オープン戦」(以下、朝日杯)の出場権が授与されます。2022年6月には「第78回学生名人戦」が開催され、新たな学生名人が生まれました。それが、将棋部(公認サークル)に在籍する法学部2年の川島滉生さんです。大学入学以前から多くの大会で功績を残しており、現在は将棋部の一員として活動しています。そんな川島さんに、将棋を始めたきっかけや将棋部での活動、そして学生名人戦での活躍について聞きました。

――学生名人戦優勝が決まった瞬間の気持ちや、第16回朝日杯出場の感想を聞かせてください。

とても驚きました。全く実感が湧かず、夢じゃないかと思ったくらいです。もちろん、勝ちたいという気持ちは強くありましたし、大会への準備は怠っていませんでした。特に、春休みの期間は毎日将棋のことばかり考えていましたね。それでも、対戦相手は全員手ごわく、関東予選から楽に勝てる対局は一つもありませんでした。そんな中で、自分が優勝できたのはとてもうれしいことです。

第78回学生名人戦での優勝盾授与の様子。決勝では同じ早稲田大学将棋部のメンバーと対決し、見事勝利した(朝日新聞社YouTubeチャンネル「囲碁将棋TV」より)

その後出場した朝日杯では、プロ棋士の強さを痛感しました。 これまで経験したことのない異質な強さを持つ方ばかりで、どこがすごくて、何が自分より優れているかなんて具体的に言い表せない。結果としては勝利できた対局もありましたが、棋戦を通じて総合力の差を思い知らされました。プロを目指していた時期もあり、憧れの存在と公式戦で戦えたことは非常に感慨深く、彼らの強さや気迫を肌で感じられたことは自分にとって大きな経験になったと思います。

――川島さんが将棋を始めたのはいつ頃だったのでしょうか。

小学3年生の頃の川島さん(写真左)。幼い頃から多くの大会に出場してきた

僕が将棋を始めたのは5歳の頃でした。父と兄が家で将棋を指しているのを見て興味を持ったのがきっかけで、そこから将棋の面白さにハマっていったんです。小学生になってからは兄と一緒に近くの将棋教室へ通い始めましたが、本格的に将棋を習いたいという思いから、よりレベルの高い将棋教室に移ることに。当時は平日3~4時間、土日には10時間以上指す日もありましたね。中学・高校では学校の将棋部に入り、部活動を中心に活動していきました。

 

――これまで将棋を続けてきた中で、特に印象に残っている出来事はありますか?

思い出深い出来事は二つあります。一つ目はライバルとの出会いです。小学1年生の頃、移った先の将棋教室で、伊藤匠くんという同学年の男の子と対局しました。最初は全く歯が立たず、見事に惨敗。それが本当に悔しくて、彼に勝つために死に物狂いで将棋を勉強しました。そのうち少しずつ勝てるようになり、いつしかライバルのような関係になっていったんです。彼は現在、プロ棋士として将棋界で活躍しています。彼との出会いがあったからこそ、僕は本気で将棋と向き合うことができ、今もこの競技を続けられているんです。

川島さんお気に入りという早稲田キャンパス8号館の学生ラウンジにて。ここで読書をしたりオンライン授業を受けたりしているそう

二つ目は高校での全国大会優勝です。僕は私立の中高一貫校を受験することを選んだため、小学校5~6年生の頃は将棋から距離を置き受験勉強に励んでいました。その影響で腕が鈍ってしまい、中学生の頃は大会で負けっぱなし。実は、プロ棋士を目指すようなレベルの人にとって、この時期は将棋に打ち込むべき重要な時期といわれています。 中学受験を自分で選択したとはいえ、周囲にどんどん先を越されていくように感じられる日々はつらく、苦しいものでした。それでも諦めずに将棋を指し続け、高校1年生のとき出場した「全国高等学校将棋選手権大会」で優勝することができたんです。この勝利が自分にとって起死回生の一手となり、失っていた自信を取り戻すことができました。

――どうして早稲田大学法学部に入学したのでしょうか?

大学でも将棋を続けたいという思いが強かったので、将棋部が強い大学を中心に志望校を選びました。特に、早稲田の将棋部はかなりの強豪ですし、キャンパスが家から近いこともあり、以前から興味を持っていたんです。数ある学部の中で法学部を選んだ理由は、シンプルに法律に関心があったから。高校生の頃、公民の授業で憲法を学んだことをきっかけに法律を詳しく学んでみたいと考えるようになりました。

早稲田には多様なバックグラウンドを持つ人が集まっていて、自分にはない価値観との出合いは良い刺激になりますね。法律の勉強も自分にとって新鮮で楽しいです。試験期間と将棋大会のスケジュールが重なって苦しい思いをすることもありますが、その分学びも多く、実りある大学生活を送っています。

――将棋部ではどのように活動していますか?

将棋部の部室にて。普段は雑談を交えた楽しい雰囲気で将棋を指すことも多いという

将棋部には決まった活動日がないため、好きなときに部室に行き、そこにいる部員と将棋を指しています。長年将棋を続けている人はもちろん、初心者ものびのびと将棋を楽しめる環境で、僕にとっても居心地のいい場所です。

他方、団体戦メンバーの選考期間には部室がピリッとした雰囲気になることも。将棋部は部員も多いため、代表争いはかなり熾烈(しれつ)なものになります。普段は和気あいあいと将棋を指しますが、団体戦前などの重要な時期は真剣に将棋と向き合い、部員同士で切磋琢磨(せっさたくま)できる環境でもあるんです。友達同士で将棋を楽しむいい意味での「ゆるさ」と、「早稲田大学将棋部」としてチーム一丸で戦うときの緊張感がしっかりと両立しているのが、この部の強さの秘訣(ひけつ)であり、最大の魅力なのだと思います。

2021年度の「全日本学生将棋王座戦」では、将棋部の代表メンバーとして出場。部は準優勝した (最前列、左から2人目が川島さん)

――最後に、川島さんが思う将棋の魅力や今後の目標を教えてください。

自分の価値観や考え方を盤上で表現できるところが最大の魅力だと思います。将棋には絶対的な正解がありません。それは裏を返せば、全てが正解になりうるということ。だから、将棋は自分が正しいと思っていることを、盤の上で自由に表現していいんです。僕は他の方が選ばないような手を指すことが多いと言われますが、それも自分の中で正しいと思った一手を選択しているだけに過ぎません。その結果、相手の意表を突くことができればうれしいですし、自分らしさを表現できた喜びを強く感じます。

「学生名人戦」での優勝は、これまでにない大きな経験でした。しかし、僕にとって将棋はあくまでも趣味。楽しいこと、自分らしく指せることがとても大切だと思っています。大きな大会を終えて、具体的な目標はまだ定まっていませんが、今後も自分らしい将棋を指すことを目標に全力で楽しんでいきたいです。

第827回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
法学部 3年 佐久間 隆生

【プロフィール】

神奈川県出身。攻玉社高等学校卒業。家族の影響で小学校入学前から将棋を始める。高校1年生の時に「第54回全国高等学校将棋選手権大会 男子・個人の部」で優勝。 趣味は将棋の他に読書、ボードゲーム。現役のプロ棋士である伊藤匠五段とは幼い頃からの知り合いで、同じ将棋教室で競い合った仲。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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