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学生視点で「地方活性」に取り組む早大生 生まれ育った福井に恩返しを

「『DISCOVERY FUKUI』を、地元へのUターンやIターンを考えるきっかけにしてほしい」

人間科学部  4年 内田 建(うちだ・けん)

Uターンや Iターンをして福井県で働いている人々を取材したインタビュー動画を配信するYouTubeチャンネル「DISCOVERY FUKUI」を1人で立ち上げた福井県出身の内田建さん。この企画の立ち上げには、大学での学びやワークショップ、フィールドワークへ参加したことがとても大きかったと話します。そんな内田さんに、2021年に代表を務めていた、福井県のPR活動を行う「学生団体おちょきん」での活動や、現在行っている地元・福井での活動、今後の「DISCOVERY FUKUI」の展望、そして日々の学生生活などについて聞きました。

――内田さんが地元・福井に関する活動を始めたきっかけを教えてください。

背景ときっかけがそれぞれあります。まず背景は、大学で学んでいる「地域活性」の知識をアウトプットする機会を得たいとずっと思っていたことです。私は、大学受験の頃から地域活性に興味があったので、社会学や経済学など幅広い領域から学際的に地域活性について学ぶことができる人間科学部を志望していました。ただ、実際に人間科学部で学び始めると、授業を受けるだけでは知識をインプットするだけになってしまいがち。そこで自分がプレーヤーとしてアウトプットしてみる機会を持ちたいとずっと思っていました。

活動を始めたきっかけとしては、教育連携課が主催している地域連携ワークショップに参加したことでした。私は昨年の夏、「20代から始めたくなるローカルキャリアとは?」をテーマに政策・施策立案の活動をする石川県珠洲市のプログラムに参加。新型コロナウイルス感染症の影響で全面オンラインでの開催でしたが、実際に珠洲市民の方々にもヒアリングを行い、最終報告会では珠洲市長に施策のプレゼンテーションを行いました。活動を通して、自分の地元・福井のローカルキャリアにはどういうものがあるのかということをふと考え、アウトプットの機会をうかがっていたという背景もあり、活動を行ってみたいと思ったんです。

――「学生団体おちょきん」では2021年度に代表を務めていたそうですが、どんな活動をしていましたか。

「学生団体おちょきん」は、首都圏の大学に通う福井県出身の学生を中心とした、福井県のPRを行う学生団体です。福井県庁にもサポートしていただいていて、主な活動内容は、首都圏における福井へのUターンやIターンを支援するイベントや、ローカルキャリアを考えるイベントの開催。しかし、コロナ禍でイベントの開催や運営が難しくなってしまったのです。

そのような状況に陥り、一度立ち止まり考え直した結果、団体などの力を借りずにまずは自分の力、個人で福井に対してアクションをとってみたいと思うようになりました。そこで2021年7月に立ち上げたのが「DISCOVERY FUKUI」です。

学生団体おちょきんでのオンライン定例会の様子。おちょきんとは、福井の方言で「正座」のこと

――では、「DISCOVERY FUKUI」の活動内容を教えてください。

「DISCOVERY FUKUI」は、UターンやIターンなどをして福井県内で実際に働いている人に密着し、活動内容と福井で働いている理由を取材して、動画を作成。それをYouTubeとInstagram上で公開するプロジェクトです。これは、地方の人口問題、若者の都市流出に対して何かしらアクションを起こしたくて企画したものです。やりたくて始めたので楽しかったですが、取材交渉や密着取材、動画編集など、全く経験がなかったので最初はとても大変でしたね。現在は、中学・高校のときの同級生や、「学生団体おちょきん」のメンバー5人と協力しながら活動しています。

現在公開している動画は、計6本。取材させていただいた方は、さまざまな経歴でそれぞれの分野で福井で活躍されています。その中で一番印象に残っているのは、御子柴北斗さん。官僚を辞められた後に福井県西部の小浜市で起業して、まちづくりに関わられている方ですが、御子柴さんがおっしゃっていた「自分にしかできない仕事を、ここ福井(小浜)で見つけた」という言葉に感銘を受けました。

内田さんが一番印象的だと話す、株式会社まちづくり小浜 おばま観光局 代表取締役の御子柴北斗さんを取材し作成した動画

――動画を制作する上で意識していることを教えてください。

動画は、取材を引き受けてくださった方の日々の様子と、なぜ福井を選んだか、という二つの要素を特に詳しく入れています。首都圏の大学生にとって、地方で働く人の仕事内容や仕事の面白さを知る機会は少ないと思います。だから、福井でどのような仕事をしているのかは、できるだけ細かく動画に取り入れるようにしていますね。そして、なぜ福井を選んだかということは、最も力を入れています。やはり地方と比べて、都市部の方が人や場所の数・職業の種類が多く、選択肢が多いことは事実です。その上で、なぜ福井で仕事をすることを選んだのかは深く掘り下げるようにしています。

昨今の状況で、UターンやIターンに注目が集まっていると思います。しかし、実際に地方で働いている人の生の声を聞くことができる機会は少ないはず。福井出身でなくても、UターンやIターンに興味を持っている学生にぜひ「DISCOVERY FUKUI」の動画を見て、自分の働き方を考えるきっかけにしてもらえたらうれしいですね。

写真左:早稲田大学の校友(卒業生)でもある、時岡壮太さん(株式会社デキタ 代表取締役)に取材している時の様子
写真右:「DISCOVERY FUKUI」で共に活動する学生と

――現在、人間科学部では何を学んでいますか?

浅川達人教授(人間科学学術院)のゼミに所属し、都市社会学や社会調査・データ分析などについて幅広く学んでいます。特に深く学び、研究しているのは、地域の空間構造と若者の社会移動について。ゼミでの学びから、福井県の空間構造を社会地図(社会調査によって明らかになった地域の「見えない現状」を可視化した地図)で表し、福井における若者の地域移動や定住人口動向に焦点を当てた研究を、卒業論文でも扱いたいと考えています。人口移動に関する研究は多々ありますが、それぞれの地域、特に福井における研究はあまり行われていないことが現状です。自分の活動はもちろんですが、これからも卒業論文などで発見・考察したことを福井の地方活性に活用してもらうことができればうれしいです。

浅川教授のゼミの様子

――今後は、福井に対してどのような活動をしていきますか?

福井に対して行いたい活動は二つあります。まず一つは、私が企画・活動している「DISCOVERY FUKUI」において、UターンやIターンを経て福井の企業に入社した人を取材し、動画を制作したいと考えています。今まで「DISCOVERY FUKUI」で取り上げた方々は、ほとんどが自ら起業された方だったんです。今後は起業に限らず、若者にとってより身近な就職や、福井での多様な働き方を紹介できたら良いなと考えています。

二つ目は、今行っている情報発信のネクストステップとして、視聴してくれた学生のアクションにつなげるサービスをつくることです。具体的には、福井で実際に働く人たちと学生がつながることができるサービスを提供すること。例えば、首都圏の大学に進学した後、地元に帰って就職したいと考えても、その土地で働く先輩に話を聞くことができる機会はなかなかないのが地方就職の現実ですが、そんな理由で地元へのUターンやIターンを諦めてしまうのはもったいない! まずは興味を持ったときに、すぐに話を聞くことができるきっかけを提供できるようなシステムをつくってみたいと考えています。また、そのサービスの中で大学生に対してUターンやIターンを支援するイベントも定期的に開催したいですね。今後は、「DISCOVERY FUKUI」の事業主体を学生団体おちょきんに移し、他のメンバーと一緒に取材や動画作成を行い、いろいろな経験ができればと思っています。

学生団体おちょきんは、2022年1月18日都内にて「福井人と語る会」を開催。写真は代表としてあいさつをする内田さん

学生視点だからこそ、地元・福井に対して働きかけられることはいろいろとあると思います。生まれ育った福井に対しても、少しでも課題解決という恩返しができるような活動をこれからも続けていきたいですね。

第813回

取材・文:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
人間科学部 3年 佐藤 里咲

【プロフィール】

福井県出身。県立藤島高等学校卒業。2021年12月まで、大学公認のストリートダンスサークル「Waseda University Breakerz」で代表を務めていた。先日はダンサーとして、Foi の「BOYFRIEND」のMVに出演。人間科学部でお薦めの授業は浅川先生が担当する「社会学」。

写真左:所属したダンスサークルでの集合写真
写真右:MV撮影の際の一枚

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