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「地域連携ワークショップ2020」 オンラインで石川県珠洲市の課題解決

会ったことのない5人で、行ったこともない土地にささげた夏

社会科学部 1年 小原 悠月(こはら・ゆづき)

私は2020年8月5日から開催された、教育連携課主催の「石川県珠洲(すず)市&早稲田大学 地域連携ワークショップ2020」に参加しました。このワークショップでは、学生チームが主体となり、地元の関係者へのインタビューなどを行いながら、地域が直面する課題の解決策を提案します。今回は、学部・学年・志望動機がバラバラの10人が集まり、そこから2チームに分かれて、夏休みの約1カ月半、解決に向けたアイデアを考えました。私たちのチームは、「オンラインでつながる新しい場づくりを考えよう~能登半島のさいはてで考える移住定住施策・関係人口(※)づくり~」というテーマで活動しました。今年は新型コロナウイルス感染症の影響により、ワークショップの全ての活動がオンラインで行われました。

(※)「関係人口」とは、地域に移住した人や、観光に来た人でもない、地域の人々と多様に関わる人の数のこと。

珠洲市は能登半島の最先端に位置し、本州で最も人口の少ない市(約14,000人、2018年)です。人口減少・少子高齢化が最大の課題で、高齢化率は約50%と全国でもトップクラス。ところが、地元住民の方24人のお話を伺ってみると、むしろ珠洲市の溢(あふ)れるばかりのエネルギーを強く感じました。ある方は、「珠洲の何もなさは『余白』であり、可能性に溢れている」と語り、また他の方は、「珠洲にラーメン屋がなかったからラーメン屋をつくった」と教えてくれました。

「物が無いから自分でつくる」という行為は単純な因果関係に見えますが、当事者意識と大きな勇気がなければ、簡単にできることではありません。その精神は、東京で生まれ、18年間何でも手に入る環境で育ってきた私が忘れていたものでした。そんなチャレンジ精神とエネルギーを持つ珠洲を、もっと多くの人に知ってもらいたい、そんな思いが芽生え、私たちは提案に向けて走り始めました。

私たちのチームは週3回ほどミーティングを行いましたが、学部や学年の違いだけでなく、初対面から画面上でしか会えないというオンラインの難しさも痛感する日々でした。メンバーと長い時間を共有しているにも関わらず、毎回Zoomの退出ボタンを押した瞬間、一瞬で珠洲やメンバーとの関係が途切れた感覚がしました。そんな「言葉にできない物足りなさ」を感じていた矢先に、Zoomを通して、珠洲の方に街中を案内してもらうことになりました。たまたま遭遇した地元の方同士で自然に会話が始まり、おすそ分けを渡す…そんな街の光景を目にしたとき、オンラインであることを忘れ、実際に珠洲にいる感覚を覚えました。

オンラインドライブの様子(珠洲市の外浦)

この経験がきっかけとなり、一つの提案が生まれました。近頃、珠洲市への移住を検討する方が増加している一方で、主流であるオンライン移住相談は堅苦しさが残り、双方の距離が縮まりにくい、土地のイメージが想像しにくいという課題があると聞いていました。そこで、Zoomで街案内をしてもらった経験を生かし、「オンラインドライブによる移住相談」の創案に至りました。バーチャルで珠洲をドライブして担当者と相談者が気軽に会話しつつ、テレビ番組で行われている企画「ダーツの旅」のように、市民への突撃インタビューを加えることで、地元の方と交流するという企画です。味気無い移住相談会に、美しい能登の海や伝統的町並み、人との温かいつながりを加えることで、自分たちが感じたワクワクとリアルな珠洲を伝えることができると確信しました。その後、5人で念入りに準備を重ね、最終提案直前は日付を越えて実施することもありました。そして、校友(卒業生)でもある市長に最終発表を行いました。

珠洲市の特産品が自宅に届き、喜ぶチームメンバー。珠洲のぜんざいは小豆が大きいことで有名です(右下が筆者)

最終発表を終えて、このワークショップに参加し、行ったことのない土地について、会ったこともない5人で全面オンラインで提案を作り上げたことに、驚きと感動を覚えました。そう感じられたのは、学部1年で何もかも未熟な私でも意見を出しやすいチーム作りをしてくれたメンバーのおかげだと思います(先日、やっと対面で「はじめまして」をしました!)。しかし、同時にオンラインの限界も痛感しました。新型コロナウイルス感染症の影響とIT技術の進歩により、オンライン〇〇といった企画が増え、合理性や利便性などオンラインのプラスの側面に目が行きがちです。ただそのマイナス面にも向き合い、オンラインの足りない部分をどう補填(ほてん)するか考えるべきだと学びました。オンラインでのワークショップを経験し、いわばニューノーマル時代の先駆けとなった私たち。今だからこそ学べたことを生かして、双方向の”対話”を意識し、相手のありのままの思いをくみ取れる人になりたいずっと心にとどめていたいと思います。

地域連携ワークショップ
自治体が直面する地域課題について、地域と協働して解決に向けて取り組むワークショップ。インタビューや調査、ディスカッションを通じ、地域社会を深く理解しながら、学生ならではの視点や発想を生かして解決策を練り上げる。学部学年を越えたチームを組み、地域社会を学びの場として、実在する課題の解決に携われる点が大きな特色。2021年春はオンラインで4地域(長野県木島平村、新潟県燕市、和歌山県串本町、岡山県津山市)実施予定。

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