「自分が仕事を通して成し遂げたいことは何か。それをかなえられる企業はどこかを考えるのが重要です」
就職活動において、採用側は学生のどこに注目しているのか? 多くの学生が気になるところでしょう。そこで、今回は早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)が、「株式会社ニトリ」の新卒採用担当者に就職活動の素朴な疑問を聞きに、北区にある東京本部に伺いました。
近年、就職先としても人気が高いニトリ。家具やインテリア用品の企画製造・販売というイメージが強いですが、実は市場調査や広告、物流、ITまで「一気通貫」のビジネスモデルが特徴的な企業です。インタビューを担当したSJC学生スタッフの勝部千穂さん(社会科学部3年)は、企業から求められる能力とは何か、その能力をどのようにアピールしていけばいいのかを知ることができたようです。
株式会社ニトリ
新卒採用部 採用グループ 東日本採用 津崎 捺美(つざき・なつみ)さん
(2018年 基幹理工学部卒業)

(左から)勝部さん、津崎さん。東京本部の屋上にて
勝部:御社は近年、就活生からの人気を集めていますが、その理由をどう分析されますか?

入社4年目の津崎さん。大阪や埼玉など3店舗で勤務したのち、2021年5月から現職。「いろいろな部署を経験できる『配転教育』もニトリの特徴ですが、その中でも私は、配転の頻度が高めです!」
津崎さん 独自のビジネスモデルや教育体制の充実度が就活生にも認知されはじめ、人気を集めているのだと思います。また、インターンシップ・プログラムに対する評価の高さも感じています。ニトリのインターンシップ・プログラムでは企業説明はほとんど行いません。むしろ、就活生にとってためになるプログラムとなることを担当の社員一丸となって考えています。例えば、就活の悩みを解決するための模擬面接や、業界研究の助けになるような具体的な業務説明、学生一人一人へのフィードバックなど。ニトリの仕事内容の紹介よりも就職活動の支援を優先しています。就活生の手助けをしたいという社員の思いが学生にも伝わっているのかなと思います。

インターンシップの様子(2021年)。人気の部署体験ワークの他、ニトリのビッグデータを支えるIT部門の業務を体験できるなど、「学びが多い」と評判
勝部:御社の特徴や強みについて教えてください。
津崎さん ニトリのビジネスモデルは日本唯一のもので、市場調査から原材料調達、製造、物流、IT、小売りまでの全ての工程を自社で担っています。中間業者が入らないのでマージンがかからず「お、ねだん以上。」が実現できることと、意思決定が社内で完結するため商品をお客様に届けるスピードが速いことが強みだと思います。ちなみに物流に関して、企業単体で見るとニトリが輸入量で国内1位なんですよ。最近ではグローバル展開やアプリ開発などにも力を入れていて、こうした分野も今後ニトリの強みになると思います。当然ですが、ものづくりからお客様に商品を届けるまでの全ての工程を担う部署が社内にあり、全体としての仕事の領域が幅広いです。全部で37もある部署を2〜3年ほどでジョブローテーションする「配転教育」の制度も特徴ではないでしょうか。

社内の廊下にズラリと飾られた「グッドデザイン賞」の賞状。企画・開発・実現への取り組みが評価され、寝具やタオルなどの生活に根ざした商品が2013年から9年連続受賞
勝部:御社はどのような社風でしょうか?
津崎さん いい意味で先輩後輩の上下関係がないのがニトリらしさだと思います。私が入社して最初に配属された店舗は海外からのお客様が多かったのですが、英語を話せる従業員が私しかいないという問題がありました。「この現状を変えるべきだ!」と、店長に相談に行くと、「じゃあ、どのように変えられるか企画を提案してみなよ」と、私の意見に真摯(しんし)に耳を傾けてくれて。今まで一緒に働いたどの上司も、若手だからといって意見を否定することなく、私のアイデアを応援してくれました。このように、若手や現場の社員にもどんどん責任ある仕事を任せるところがニトリらしさだと思います。

部署の垣根を越えて自由にコミュニケーションができるよう、固定席をなくし、フリーアドレスを採用。※撮影時のみマスクを外しています
勝部:御社ではどのような人材を求めていますか?
津崎さん ニトリの採用では「Change(変化)」「Challenge(挑戦)」「Competition(競争)」「Communication(対話)」の4つの人材要件を重視しています。仕事の領域が幅広いニトリだからこそ、求めるのは新しいことにワクワクしながらチャレンジしていける人材。現在ニトリでは新規事業として飲食やアパレルを開拓し、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった分野にも注力しているところです。こうした新しいフィールドに自ら飛び込んでいける人が社内で活躍しています。会社の教育制度が充実しているので、新しいことに挑戦する際も最初から専門知識を持っている必要はありません。それよりも自らチャンスをつかみに行ける人かどうかを重要視しています。

東京本部のコミュニケーションスペース。商談や休憩などさまざまな用途で使用されている
勝部:面接では学生のどのようなところに注目していますか?
津崎さん 学生時代、何かに挑戦した経験があるかどうかを見ています。自分の苦手なことや初めてのことなど、内容は問いませんし、大会での優勝経験など大きな成果を期待しているわけではありません。むしろ注目しているのは、挑戦して何かの壁にぶち当たった際、どのようなプロセスを踏んで課題解決したかということ。そういったエピソードを熱く楽しそうに語ってくれる学生は特に印象に残りますね。
また、学生の皆さんには何より就活の軸を大切にしてほしいと思っています。就活の軸となるのは、自分が仕事を通して成し遂げたいことは何か、ということ。それをかなえられる企業はどこかについて考えることが、就活をする上では重要になってくると思うので、自分が本当にやりたいことをしっかりと考えてほしいと思います。
勝部:津崎さんご自身は何を軸に就活をされていたのでしょうか? また、就活ではどのようなアピールをされましたか?
津崎さん 「世界の人々を笑顔にしたい」という目標をかなえられるかどうかを軸に、企業選びをしていました。私は父の仕事の都合でアメリカに住んでいたことがあり、家庭環境や貧富の差、それが起因となるいじめなどを目の当たりにしてきました。そんな経験から「格差で人々が悲しい思いをする世の中は嫌だ。家庭環境や貧富の差に関わらず手に取れて、世界のみんなが笑顔になれる商品を提供したい」と思うように。また、飽き性な性格のため、さまざまな仕事を経験できるかどうかも重視していましたね。ニトリはまさにどちらもかなえることができる企業でした。
就活でアピールしたのは、大学時代に所属していた応援部の吹奏楽団での活動についてです。新人監督を務めていた私は、多くの新入部員を獲得しなければならず悩んでいました。そこで、どういう学生が入部を迷っているのか、彼らが迷う要因は何かを分析し、それらを解消するようなイベントを複数企画。約60名の団員を各企画の担当に振り分け、進捗(しんちょく)管理をしながら進めていきました。結果、当時最多の入部者数を確保することができました。課題に対し仮説を立て、分析し、周りを巻き込んで挑戦した経験が、採用担当者に響いたのかなと思っています。
勝部:最後に、就活中の学生に向けてメッセージをいただけますか。
津崎さん 学生の皆さんには、何よりも、自分が成し遂げたい夢をかなえられる企業を選んでほしいと思います。そのために、自分の強みや、自分がどのような社会人になって、どんな夢を実現したいかを考えてみてください。仕事を通して何をやりたいかを言語化できるようにすることが大切です。また、小さな経験でも必ず成長につなげることができると思うので、コロナ禍で活動や研究が思うようにできなかった方も、ぜひ「どう成長できたか」をアピールしていただければと思います。就活は精神的に苦しいこともありますし、卒業に向けて卒論執筆や研究活動が忙しくなる時期とも重なり、本当に大変だと思います。決して内定をもらうことがゴールではありませんから、どうか自分の将来に向けた選択肢の一つを選ぶような感覚で、ワクワクしながら企業選びをしてほしいです。
取材・文:萩原あとり
撮影:小野奈那子
2021年早大卒の新入社員に聞いた、就活から入社後までの理想と現実
ららぽーと新三郷店担当者 細川 泉紀(ほそかわ・みずき)さん
(2021年3月 社会科学部卒業)

細川さん。新人研修ではカーテンの知識もしっかり身に付ける。「店舗では意外と力仕事もありますが、周りに支えられて頑張っています!」
幸せな住空間をつくる仕事がしたくてニトリに決めました
大学時代に所属していたダンスサークルでは、踊ることと同じくらいに、舞台上の空間をつくることに楽しさとやりがいを感じていたこともあり、将来は「住空間をつくる」仕事に携わりたいと考えていました。それを軸に企業を研究し、大学3年の夏からニトリや大手のハウスメーカーなど、約30社のインターンシップに参加。いろいろな企業を見る中で、ニトリの将来性や、小売りだけでなくリフォームやオフィスづくりなども手掛ける幅広い事業展開を知り、多面的に住空間づくりに携われそうな点に引かれました。
現在入社して8カ月経ちますが、いい意味で意外だったのは、新人研修が半年と長かったことです。知識ゼロの赤ちゃんみたいな状態から、長い時間をかけてたくさんの知識を身に付け自信をつけることができたおかげで、お客様の声に耳を傾けた、落ち着いた接客ができるようになり、あらためて、新入社員を大切に育てる会社なのだと感じています。将来は、法人&リフォーム事業部で、オフィス空間をつくるのが夢。早稲田で労働法務を学んでいたこともあり、働く空間を快適に変えることで、労働環境の改善に貢献できたらと思っています。

【株式会社ニトリ】 1967年創業の家具およびインテリア用品販売を主とした大手小売業。2021・22・23年卒対象の「インターンシップで印象の良かった企業」調査(HR総研)で3年連続1位。「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」をロマン(志)とし、2021年11月時点で国内外に774店舗を展開。34期連続での増収増益を達成し急成長中。2032年までに3,000店舗・売上高3兆円の目標を掲げる
学生時代に何をやったかではなく、何を考え、何を学んだのかを伝えられる就活をしたい

得意の英語と中国語を生かし、海外にも活躍の場がある企業を中心に就活中の勝部さん。グローバル化が著しく海外駐在の機会にも恵まれるニトリにも大変興味があるそう
社会科学部 3年 勝部 千穂
製造から物流、小売りまでを一貫して担う特徴的なビジネスモデルと、社員の方のチャレンジ精神に溢(あふ)れた職場の雰囲気が、他社とは違うニトリの「強み」を作り出しているのだと感じました。
また、近年は海外事業展開やITなどにも力を入れているため、ハイレベルな語学能力や資格が求められるイメージがありましたが、ニトリが求めていたのはもっと根本的なところにありました。それは、「観分判(観察・分析・判断)」という、問題点を発見して分析し、解決するという考え方です。どの社員の方も、ニトリの働き方の原点である「お客様の暮らしを豊かにしたい」という想いを実現するために、「観分判」を働く上で重要視されていました。新卒採用部の方は、学生がこれまで直面した課題に対して、どのような問題を発見し、その問題について疑問を重ねていくことで、いかに解決していったのかを重視し、採用を決めているというお話が印象深かったです。
私は現在就職活動に取り組んでいますが、学生時代に自分が何をやってきたかではなく、やってきたことを通して何を考え、何を学んだのかという部分をうまく伝えられるように頑張りたいと思います。
【次回特集予告】12月13日(月)公開「箱根駅伝特集」