理工学術院教授 坂内 博子(ばんない・ひろこ)
私は現在、夫と小学生の娘2人の4人家族で暮らしています。小学生ともなると、子どもたちは自分のやりたいことがはっきりしています。子どもは当然親と別人格ですから、彼女らがやりたいことは、私たち親とは全く違います。
例えば、「カブトムシやクワガタが飼いたい!」と言うのです。私も夫も、“カブクワ”を採ったことも、飼育したこともありません。なので、子どもと一緒に飼い方を必死で調べました。まだカブクワ博士には程遠いですが、子どもの頃には興味を持たなかったカブトムシやクワガタがとても愛(いと)おしくなりました。
またある時には、「田植えに行きたい!」と言います。一緒に人生初の田植えをしました。年齢を重ねるほどに自分の選んだ道に閉じこもりがちだったのが、行動的な2人の子どものおかげで、「絶対自分では選ばなかったであろう道」を一緒に歩く楽しみを味わっています。
子どもたちから学ぶこともたくさんあります。多くの子どもたち同様、うちの子もYouTubeを見るのが大好きです。YouTubeで「マインクラフト」というゲームの仕掛けの作り方など、いろいろな技術を学んでいるようです。最近は、アニメの作り方やぬいぐるみの作り方を自分で検索して、気が付けば作品を作っています。その作者の依頼により、私の実験動画のYouTubeチャンネルに子どもが作ったアニメを掲載したところ、チャンネル登録者が30人から52人に増えました!(実験動画よりも、授業の動画よりも、子どものアニメの再生数が多いです。)
「過ぎたこと 選ばんかった道 みな覚めた夢と変わりゃせんな」
これは『この世界の片隅に』という映画(監督:片渕須直、原作:こうの史代)で、主人公・すずさんの夫・周作さんが言ったせりふです。この言葉のように、人生は「ある分岐点を過ぎるともう片方の道には戻れない」と思われがちです。しかし現在は、「一緒に歩いてくれる人がいれば、選ばんかった道も歩けるのだ」と信じています。子どもたちがやっているように、私も3D CADソフトの使い方や新しい料理、バイオリンの演奏法をYouTubeの動画で学び、これまでできなかったことにチャレンジしています。