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我々の脳はどうなっている? AIの台頭で注目の 脳神経科学に迫る

卒業研究【先進理工学部設置科目】

先進理工学部 4年 竹林 誠弘(たけばやし・まさひろ)

教科書『Principles of Neural Science(カンデル神経科学)』(英語版)を開く筆者

早稲田キャンパスからほど近い夏目坂を登り、東京女子医科大学を過ぎると、「東京女子医科大学・早稲田大学 連携先端生命医科学センター」、通称「TWIns(ツインズ)」が見えてきます。その2階にある井上貴文先生(理工学術院教授)の研究室では、神経系が脳機能の仕組みにどう関わっているかという脳神経科学を研究しています。

私たち生命医科学科の学生は、4年生になると各研究室に所属し、研究テーマに沿って卒業研究を実施します。私は井上先生の研究室で、研究を開始する傍ら、「カンデルミーティング」と呼ばれる4年生対象のゼミに参加しています。「カンデル」とは、ゼミで使用する教科書『Principles of Neural Science(カンデル神経科学)』に由来します。

この教科書は、神経細胞の個々の動作・形態などの基本的な内容から、情報伝達の仕組み、さらには知覚・認知・運動などのシステム的な議論を基にした疾患・言語・思考といった高次元の内容まで網羅し、脳神経科学の学生や研究者のバイブルとまで言われています。また、内容が数年ごとに更新されるのが特徴で、最近は脳の神経回路を数理モデルにする「神経回路モデル」や、脳とコンピューターをつなぐ「ブレインマシンインターフェース」といった旬のトピックもあります。

このゼミは反転授業の形式で毎週行われます。また、今年度はコロナの影響でオンライン(Zoom)で開催されています。私たち参加者は、事前に決められた教科書の章を熟読し、ゼミでは井上先生と谷藤学先生(大学院先進理工学研究科客員教授)に、読んできた内容について質問をしたり、コメントをいただいたりして理解を深めていきます。私の場合、1章20ページを読むのに約4時間かかります。また、一度読んだだけでは理解できないため、何度も読み返し、それでも自力で理解できない箇所や質問をまとめ、ミーティングに臨んでいます。

オンラインゼミの様子(中段・左端が井上先生、上段・中央が筆者、上段・右端が谷藤先生)

井上先生と谷藤先生は、私たちの質問に答えてくださるだけでなく、ご自身の過去の研究経験や、教科書には記述されていない研究の歴史的経緯、さらには研究者としての心構えなどを丁寧に教えてくださいます。例えば、脳神経科学の分野では電気生理学的な実験手法が数多く用いられるのですが、私たちは電気生理学の知識がまだないため、神経科学の実験でよく使われる「パッチ・クランプ法」や「ボルテージ・クランプ法」といった手法の基本的原理や仕組みを、手描きの図とともに分かりやすく解説いただいたこともありました。

井上先生作成「脳神経科学俯瞰図」

カンデルミーティングには留学生も参加しており、先生はコメントを日本語と英語の両方で返してくれます。学生から多くの質問が出され、活発な議論が行われるため、予定通りに終わらず3時間を超えることもありますが、とても恵まれた環境で研究できていると感じています。研究室の雰囲気も良く、最近では学部の2、3年生がゼミに興味を持って参加してくれたり、大学院の先輩方が参観してコメントをくださったりする場面もありました。

カンデルミーティングに参加する留学生の様子

脳神経科学は台頭しているAI(人工知能)とも大きく関わることから、多くの学問との融合が著しい注目の分野です。私の卒業研究は始まったばかりですが、カンデルミーティングでの研究を通して、脳と神経科学の理解を深めていきたいと思います。

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