Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

「医理工融合」ってどんなこと? 修士1年女子学生のTWInsライフ

筋肉の組織モデルを構築し、医療の進歩につなげたい

2008年4月に東京女子医科大学と早稲田大学による医理工融合研究教育拠点として創設された「東京女子医科大学・早稲田大学 連携先端生命医科学研究教育施設」、通称「TWIns(ツインズ)」。今年、設立10周年を迎えたTWInsでは、両大学による共同研究が日々行われています。この共同研究はTWInsの大きな特徴ではあるものの、共同研究に対するイメージが湧かない人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、バイオマテリアル(※1)と再生医療の研究をしている武田研究室(武田直也理工学術院教授)に在籍し、実際に共同研究に参加している、大学院先進理工学研究科修士課程1年の及川富美子さんに、共同研究や普段の学生生活などについて話を聞きました。

(※1)生体やその構成要素である細胞やタンパク質など(バイオ)と直接的または間接的に接触して用いられる材料(マテリアル)のこと。人工臓器など体に埋め込まれる材料の他に、細胞を培養する基材の材料なども含まれる。

大学院先進理工学研究科 修士課程 1年 及川 富美子(おいかわ・ふみこ)

――まずは早稲田大学に入学した理由を教えてください。

もともと医療に関心があったのですが、治療法が確立していない難病の研究や、新しいものを作り出していく再生医療に興味を抱くようになりました。また、診察や治療といった臨床の部分よりも研究への関心が強く、先進理工学部生命医科学科であれば、工学、薬学、医学、生物学など幅広い知識を吸収しながら研究し、実験を重ねて経験が積めるのではと思いました。

――現在はどのような研究をしていますか?

学部4年生から研究室に入り、運動神経を通じて脳からの指令が伝わって動く骨格筋という筋肉の組織モデルを構築することを研究のメインにしています。例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経が変性して筋肉を意識的に動かせなくなる病気です。原因不明で効果的な治療法も確立していないため、厚生労働省から難病に指定されています。原因を解明するにしてもヒトを使っての実験はできないので、同様の組織を人工的に作る必要があることから、骨格筋の組織モデルを作りたいと考えました。

研究途上の分野ですが、私が高校生のときにノーベル賞を受賞して話題になっていたiPS細胞(※2)を実際に使って実験できるなど、日々やりがいを感じながら研究しています。

(※2)人工多能性幹細胞。体のさまざまな細胞に変化する能力を持つ。2012年に京都大学山中伸弥教授が英国の生物学者ジョン・ガードンと「成熟した細胞を、多能性を持つ細胞へと初期化できることを発見した」ことでノーベル生理学・医学賞を共同受賞した。

及川さんの研究戦略(概要図)

――早稲田大学は東京女子医科大学と50年以上も協力、交流を重ね、TWInsが2008年に発足し、武田研究室も2010年から共同研究を進めています。

東京女子医科大学には、医師としての経験をお持ちの方や、臨床に特化した研究者も多くいらっしゃるので、医療の現状を知ることができます。実際に医療の現場で直面している内容を耳にすることで新たな視点が加わり、自分の研究していることが臨床に応用される可能性も高まるのではないかと感じています。

――東京女子医科大学との共同研究の良い点を教えてください。

大動物(ブタ)や小動物(マウス、ラット)の飼育などでは手術着を着用

武田先生からは工学的な視点からアドバイスをいただき、東京女子医科大学講師の高橋宏信先生からは医学的な視点からご指導をいただいています。工学的には材料の成分や性質が重視され、医学や生理学では細胞から組織が作られる際の分化、成熟の過程が重視されるといったように、異なったアプローチから指摘を受けます。そのため、ディスカッションをする度に勉強不足だと感じさせられますが、偏りなくいろいろな視点から考えられるのは貴重なことです。

また、研究で東京女子医科大学が開発した「細胞シート」(※3)を使用することがあるのですが、これも共同研究ならではだと思います。

(※3)多数の細胞がシート状に集まった構造体のこと。心臓を始めとしたさまざまな種類の細胞について作製が可能で、移植組織としての臨床応用も進み、新たな再生医療技術として注目されている。

――TWInsという教育施設をどのように感じていますか。

両大学の関係者だけでなく、企業との共同研究、最先端テクノロジーを使ったスマート医療の研究をされている方など、いろいろな方と幅広く接することができます。研究フロアは他の研究室との交流が図りやすいオープンな造りで、情報交換はもちろん、実験機器の使い方といったことでも誰もが分け隔てなく接してくれます。TWIns内の東京女子医科大学の設備や機器も利用することができます。また、研究の場以外での交流イベントも多く、6月にはバーベキューが大々的に行われ、普段なかなか話す機会のない方とも接することができます。

(写真左)実験の様子
(写真中央)神経筋組織〔筋管(赤)と神経(青)〕。及川さんが実験で構築した組織を免疫染色し、共焦点顕微鏡で観察したもの
(写真右)生命医科学研究フロア。中央の実験エリアには壁がなく、各研究室はその両サイドに位置する

――これからの研究目標を教えてください。

大きな目標は、目指している筋肉の組織モデルができ、それを使って難病研究が進んで新薬が作り出され、原因が解明されるなど、医療の進歩につながればと願っています。現時点の組織モデルは2次元的なもので、それを3次元のものにしなくてはなりません。2次元で再現できても3次元ではできないこともあり、最終的な目標に到達するのには本当にたくさんの段階を経ることが必要です。ビジョンを明確に持ち、失敗をプラスに変え、目標に至ろうとする信念を持ちながら突き進んで行く人を尊敬しているので、私も目標に向かって一歩ずつ進んでいきたいです。

(写真左)昨年開催されたバーベキュー大会。学生だけでなく教職員やその家族も参加して交流を深めた
(写真右)2月に開催された「第5回研究交流セミナー」でのポスター発表の様子(中央が及川さん)

TWIns設立10周年 早大と東京女子医大が描く医理工融合の世界地図

【次回特集予告】6月18日(月)公開「29号館・Tutorial English特集」

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