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コロナ禍における留学およびオンライン留学に関する学生の意向と現状 ―授業アンケートの結果をもとにー

社会科学総合学術院 教授
鈴木 規子(すずき・のりこ)

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年3月以降、大学における学生交流の動きは止まった。3月初旬、日本政府が感染拡大の先行している中国や韓国からの入国制限措置をとったことにより、相互主義の観点から出入国が制限された。その後、欧米諸国も日本からの入国制限や入国後の行動制限などを課すようになった。早稲田大学でも、3月中に留学を中断して帰国を余儀なくされた学生、新学期になっても日本へ入国できない留学生、留学を予定しているのに渡航の見通しが立たない学生など、さまざまな影響が出てきていた。

日本に限らず、EU(欧州連合)諸国においても、ドイツをはじめとした一部の国で感染拡大防止のため、自由移動原則を一時停止して国境封鎖を実施していた。EUの「エラスムス・プログラム」の下、EU諸国の大学生は在学中に留学することが一般化しているので、加盟国間で入国が制限されてしまう影響は計り知れない。また、7月に米国政府が国内の大学に対して全ての授業をオンラインで行う場合、留学生にビザを発給しないという報道に驚いた学生もいたと思う(※1)。筆者が担当する授業内でこのような海外事情を紹介する中で、本学の学生たちがコロナ禍で留学についてどのように考えているのか聞いてみることにした。

回答数は少ないものの、新型コロナウイルス禍における学生の留学意向を伺うことのできる調査はまだ少ないことから、学生の意見や経験を情報共有することは有意義なことと考え、今回紹介したい。

(※1)参考:日経新聞電子版(2020年7月8日付)

アンケート概要
【実施期間】2020年7月14日(火)~19日(日)
【実施方法】「EU地域研究Ⅰ」(社会科学部設置)の履修生(79名)に対してWaseda Moodle上で実施
【質問項目】(1)留学に対する考え、(2)オンライン留学に対する興味、(3)オンライン留学を検討する際に重視すること、の3問で、自由記述回答を含む
【有効回答数】66(全学部の1~4年生を含む)

1.留学に対する考え

まずは、留学に対する考えを4つの選択肢から答えてもらった(※2)。「留学を考えていない」と答えた学生は24%で、残りの4分の3の学生は留学を「考えている」か「考えていた」ことが分かった。履修生はEUについて関心があり、また国際教養学部の学生も含まれているので、留学志向の強い学生が多かったといえるかもしれない。特に、「留学をしたいと考えている」と答えた学生は最も多い44%を占め、コロナ禍においても留学したい学生が多いことが分かった。その一方で、全体の3割の学生が「留学を考えていたが、新型コロナウイルスの影響で迷っている」(24%)、「留学を考えていたが新型コロナウイルスの影響であきらめた」(11%)と答えており、新型コロナウイルスによって留学計画の変更を迫られている実態が明らかになった。

学生の自由記述欄には、「大学生のうちに留学したいと強く考えていたので、このまま留学できないのだろうかと不安」といった意見や、「今回の件で自分の人生設計にかなりの狂いが生じてしまい、留学についてというより留学に行けなくなった場合の自分の進む道に不安を持っている」という意見も見られた。

(※2)この質問に対して複数回答した者は2名いるため、回答者の合計は68となっている。1名は「留学を考えていたが、新型コロナウイルスの影響で迷っている」と「留学を考えていない」、もう1名は「留学を考えている」と「留学を考えていたが、新型コロナウイルスの影響で迷っている」と答えていた。また、「考えていない」と回答した中に、昨年秋からの留学を3月に切り上げて帰ってきた者も含まれていた。さらに、「考えている」と回答した者の中には、日本で入国できないでいる外国人学生も含まれていることから、この学生は早稲田大学へのオンライン留学をしているということになる。

2.オンライン留学に対する興味

「オンライン留学」という言葉を初めて聞く学生も多かったため、日本にいながら海外の大学の授業を受けることと説明し、先方の大学で十分な科目がそろっている場合、そのような留学パターンをとりたいと思うか否かを尋ねた。その結果、3分の2(68%)の学生は、そうした条件であっても「オンライン留学したくない」と回答していた。

学生の自由記述からその理由を探ってみると、「留学は、ただ言語や知識を得るだけでなく、現地の人との交流や、文化に直接触れることもできるという点が一番の特徴」という意見に代表されるように、「実際に現地に行くこと」を重視しているため、オンラインでは「正直満足に欠ける」という意見が大半だった。学生の中には、「留学の目的は現地授業だけでなく、異国での生活・異文化体験といった、学生のうちにしかできない人生経験」を重視しているため、決まっていた留学を止め、今後もオンライン留学には応募しないと回答していた。

他方で、オンライン留学をしてみたいと答えた学生も3分の1いた。その理由には、「実際に海外に留学に行けないならこの形態は非常に斬新だと思った。詳しく知りたい」、あるいは、「興味があります。しかし、具体的なイメージがあまり湧かないため、これからはより詳しい情報を調べていきたい」という意見もあった。

3.学生がオンライン留学を検討する際に重視すること

オンライン留学ではどのような点を学生が重視しているのか回答(複数回答可)してもらった(※3)。その結果、「現地学生とオンライン交流ができる」(67%)ことや「現地教員とオンライン交流ができる」(45%)ことを重視していることが分かった。このことは、先述したように、現地で生活したり交流したりしたいからオンライン留学はしたくないという学生の意見を再確認することになった。

これに対して、「科目の充実度」(42%)、「単位認定」(33%)、「少人数授業」(23%)が続いていた。これらは留学を考える際に大学側が重視してきた事柄であるが、こうした大学が提供する教育内容よりも留学を希望する学生は、通常の留学でもオンライン留学でも、「現地との交流」を重視していることが分かる。

(※3)回答率は97%。未回答者はオンライン留学を考えていないと思われる。

4.オンライン留学に対する学生の不安

オンライン留学について、よく分からないがゆえに不安を覚える学生も複数いることが分かった。特に、時差がある国については、「リアルタイムの講義が多いのかが気になります。現地時間に合わせて日本でリアルタイム授業を受けるのは負担が大きい」といった意見があった。

また、「海外の高等教育の雰囲気を実際に経験したい」と答えた学生は、「オンラインで講義を受けることができることは興味がある」が、「未知数で不透明なので(中略)事前の講習のようなシステム無しで即受講となると、自分が想定していた内容とのギャップがある可能性があるので心配」と答えている。

なお、オンライン留学を認めるのであれば、既に他大学でも導入しているように(※4)、海外の大学と並行して日本の大学の授業も履修できるようにしてほしいという要望もあった。

(※4)例えば、東京外国語大学(http://www.tufs.ac.jp/student/NEWS/study_abroad/200603_1.html

5.オンライン留学の実態 -経験者のコメント-

回答者の中には、オンライン留学を経験した学生の意見も含まれていて、オンライン留学の現状を知ることができた。「今後留学される方の参考になればと」オンライン授業を受けた感想を述べてくれたので、紹介したい。

昨年夏からオランダの大学へ交換留学をしていた学生は、6月末までの予定を切り上げて3月下旬に帰国していた。「オンライン授業では留学は体感できない」として、「現地学生や教員との交流が本質であると考えていますが、これはオンラインでは圧倒的に不十分である」と理由を述べていた。また、「時差の問題で早朝にテストを受ける必要がありました。だから私は留学を切り上げて早稲田に復学しました」と答えていた。

そして、3月に緊急帰国するまでイタリアに留学していた学生は、現地の2学期の途中で帰国したので、その残りの授業とテストをオンラインで受けた経験から二つの問題点を指摘してくれた。

1点目は、時差の問題である。イタリアの時間で16時30分(日本時間の23時30分)に始まる授業もあり、起きているのも大変な時もあるなど、時差がとてもつらかったという。2点目は、授業の質についてである。「私の大学は早稲田大学のようにシステムが整えられておらず、それぞれの先生が(マイクロソフト社の)Teamsで授業に招待するという形でした。先生方が慣れていないことや授業中の発言が難しいことなどもあり、通常よりも低かった」と答えていた。

2点目については、ヨーロッパでは大学の学期の途中で新型コロナウイルスの感染拡大が起こったため、大学や教員が急なオンライン授業への転換に対応できなかったのではないかと考えられる。

おわりに

アンケート結果からは新型コロナウイルスの影響で、早稲田大学の学生も交換留学から予定を切り上げて帰国したり、決定していた交換留学をあきらめたり、これからの留学計画を練り直したり、大いに不安を抱えていることが分かった。

海外渡航がいまだ制限される現状では(※5)、今もなお海外留学は実現できない状態にある。そうした中、新たな留学の形として検討されているのがオンライン留学である。これに対しては、多くの学生にとっては未知数であり、留学と同じ体感を得られないとの意見がアンケート回答に見られたが、興味を持つ学生も一定数いることから、大学側もオンライン環境や国際交流などの情報提供を積極的に行うことが今後必要になるであろう。また、学生も体験者の声や大学のオンライン環境などの情報を自ら収集して、一つの選択肢として検討してほしい。

(※5)2020年8月末の時点で外務省によれば、日本からの渡航者や日本人に対して入国制限をとっている国・地域は121カ国・地域に上る。その中には中国・韓国の他、オーストラリア、カナダ、ドイツなど、学生の留学先として人気の国々も含まれている。

例えば、今回紹介した学生の他にも、春休み中に日本へ入国できなくなった早稲田大学の学生や留学生たちが早稲田へ「オンライン留学」することになった体験談が、7月20日付の『早稲田ウィークリー』にも紹介されており、授業と生活のバランスをうまくとっている様子が分かって参考になるだろう。

反面、気を付けたいのが時差である。特にヨーロッパや米国との時差(約8時間以上)は大きいので、リアルタイムでオンライン授業やテストを受ける際に身体への負担が大きいことは学生の経験談でも指摘されている。また、学生の意見の中に、オンライン留学をしながら在籍している日本の大学の授業も並行して受講したいという意見があったが、時差が大きい場合、制度的に可能になったとしても、体力的につらくなって、どちらの授業も受けられなくなることが懸念される。

筆者も、春学期中に国際シンポジウムにオンライン参加したとき、会議の開始時刻がヨーロッパの始業時刻にあたる日本時間の夕方で、真夜中を過ぎないと米国の研究者は参加せず、やっとみんながそろって議論が盛り上がる頃には、こちらの体力が限界に達した経験があった。翌日のリアルタイム授業がつらかったのは言うまでもない。この問題を解決するには現行のセメスター中心の学期体制からクォーター制中心の学期体制への移行を検討することにより身体的な影響を小さくすることができるのではないかと考える(例えば、春クォーターは日本の大学の授業を受けて日本時間で過ごし、夏クォーターはオンライン留学をして留学先の時間で過ごす)。この時差の問題は、アジア地域ではあまり関係ないが、欧米の大学を考えている場合は考慮して、コロナ禍にあっても学習や研究や交流を充実させてほしい。

今年2月に留学協定の協議のために訪問したボルドー政治学院(フランス)にて。この9月より、3名の学生を社会科学部にてオンライン留学として受入予定

今回紹介した授業アンケートの結果ならびにオンライン留学経験談を踏まえて、最後に教員の立場からコロナ禍における留学やオンライン留学について述べたい。オンラインで海外の大学とリアルタイムにつながることが技術的に可能になって、活動の可能性がこの半年で各段に広がったことは確かである。日本にいながら海外の大学が提供する授業をオンラインで受講できることは、特にこれまで就職活動のために留学をあきらめざるを得なかった3~4年生にとっては、留学の可能性を広げるであろう。

また、オンライン留学では留学を体感できないという意見もあったが、大学の国際交流はコロナ禍によってストップするどころか今後ますます展開していくことが予想される。実際、早稲田大学ではオンライン留学を希望する海外の学生を受け入れていることから、彼らとの交流機会の提供もあるように、海外の大学においても学生交流の機会はオンラインでも継続していくだろう。加えて、早稲田大学には英語学位プログラム設置学部を中心に、多くの科目が留学生向けに英語で実施されている。筆者が所属する社会科学部でもそのような科目を留学生以外の学生にも履修許可しており、留学という形態をとらなくても、学内で留学体験ができるのは大規模大学である本学の強みでもあると言える。コロナ禍においても、大学が提供するさまざまな教育を活用してほしいと願っている。

【プロフィール】
鈴木 規子(すずき・のりこ)
早稲田大学社会科学総合学術院教授。慶應義塾大学文学部在学中、パリ政治学院へ留学。同大学大学院在籍中にストラスブール政治学院大学院へ留学、DEA取得。2006年、慶應義塾大学大学院法学研究科より博士号取得。2011年より東洋大学社会学部講師、准教授、ストラスブール政治学院招聘研究員を経て、2018年より早稲田大学准教授。2019年より現職。

留学センター主催「留学相談ウィーク」10月開催

留学センターでは、留学に関する不安や悩みを抱える早大生のために、2020年10月19日(月)~23日(金)12:15~13:00に「留学相談ウィーク」をオンラインで開催します。1年生が対象となりますが、2年生以上でも参加可能です。留学を経験した「学生留学アドバイザー」が個別相談にも対応します。詳細については、決まり次第、留学センターWebサイトにてお知らせします。

海外留学って実際どうなの? 学生留学アドバイザー座談会

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