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戦前・戦後の最初の総長【第2回】

戦後初の総長 島田孝一

大学史資料センター 助手 田中 智子(たなか・さとこ)

戦後間もない1946(昭和21)年6月10日、早稲田で初めての総長選挙が行われ、津田左右吉が当選した。しかし、この選挙はあらかじめ候補者を立てず、選挙人が適格と思う人物に投票する方式であったため、全くの寝耳に水であった津田は総長就任を固辞してしまった。そこで6月29日に第2回投票が行われ、戦後初の総長として島田孝一が当選した。

島田は1893(明治26)年生まれで、1917(大正6)年に早稲田大学大学部商科を卒業した後、早稲田大学留学生として米国ペンシルベニア大学ウォートン・スクールに留学した。帰国後、1922(大正11)年に早稲田大学講師に就任し、翌1923年には教授に昇任している。1946年6月に就任し1954年10月に退任するまで8年間総長を務め、新制大学としての早稲田の礎を築いていくことになる。

島田孝一肖像(大学史資料センター所蔵)

戦後復興と新制大学の模索

総長としての島田の最重要任務は、戦災で被害を受けたキャンパスの復興と、新制大学の構想を練ることであった。新制大学の構想が本格化したのは1946年末のことであった。12月5日に中堅教授を中心とした企画委員会が発足し、10日には島田を委員長として、各学部長・常務理事を中心とした教育制度研究委員会が発足した。両者の違いはそのメンバー構成だけではなく、企画委員会が「学校の現状および将来に関して、いろいろな夢を語る」ように活発に議論し(注1)、そこで出されたアイデアを具体化し立案するのが教育制度研究委員会の役割であった。教育制度研究委員会は1947年9月、「学制改革に関連して本大学の採るべき方策について」という答申を提出した。この答申には、新学制実施後の各組織体(高校・大学・大学院・夜間大学)の概要、新学制実施の時期、旧制の学生の措置など、新学制への移行に関する基本方針が示されていた(注2)。これらの方針は、翌10月に発足した教育制度改革委員会によって、さらに具体化されていくことになる。

(注1)『早稲田大学百年史』第四巻(早稲田大学出版部、1992年)918頁
(注2)同上、921-924頁

復興会の設立と募金活動

他方、キャンパスの復興に関しては、敗戦直前の1945年3月に設置された臨時資金部が資金調達の役割を担っていたが、戦災復興のための多額の募金を集めるには不十分であった。そこで臨時資金部を廃止し、1947年7月に島田を会長とした早稲田大学復興会を発足させた。当初の計画では、復興のために応急的に必要な経費2,000万円を2カ年にわたり募集することになっていた。この年の東京都職員の平均月給が3,542円だそうなので(注3)、2,000万円の募金というのは当時としては相当大きな金額であったことが想像できる。この金額を集めるため、復興会は演劇博物館との共催で寄付興業を行ったり(注4)、全国各地の校友会を回って寄付を求めたりした。同年7月に京都と大阪で開催された校友会大会では、島田や伊原貞敏常務理事らが出席して、母校の現状を訴え寄付への協力を求めている。

大阪校友会(島田孝一総長挨拶【上段】・大会【下段】)(大学史資料センター所蔵)

このような努力が功を奏してか、復興会が発足してから1年後の1948年9月の時点で1,460万円の寄付金が集まったのである(注5)。こうして集められた復興資金によって、戦災によって焼失・損壊した校舎の建設・修繕が進められた。1945年5月の空襲により全焼した第一高等学院校舎は、1947年中に旧戸山町グラウンド(現・戸山キャンパス)に再建され、翌1948年には本部キャンパス(早稲田キャンパス)に理工学部大教室が建設された(注6)。

以上のように、島田は戦後初めての総長として、早稲田の復興そして新制早稲田大学の発足を、ソフトとハードの両面でリードしていったのである。

(注3)『明治/大正/昭和/平成 物価の文化史事典』(展望社、2008年)399頁
(注4)「本大学復興会への寄付興業盛会に終る」(『早稲田大学彙報』第6号、1947年)3頁
(注5)伊原貞敏「復興会一ヶ年を顧みて」(『早稲田学報』復刊第1号、1948年)3頁
(注6)『早稲田大学百年史』第四巻、532-533頁

戦前・戦後の最初の総長【第1回】

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