Waseda Weekly早稲田ウィークリー

小島よしお×宮崎宣子のブラワセダ〜早稲田の地で思い出すハングリー精神〜

お笑い芸人の小島よしおさん(2004年教育学部卒)と、元日本テレビアナウンサー・宮崎宣子さん(2002年第一文学部卒)が思い出の場所を巡る「ブラワセダ」の後編。

早稲田小劇場どらま館や、教育学部の16号館など、小島さんの思い出の場所を中心に巡った前編に引き続き、後編では、宮崎さんが学生時代を過ごした高田馬場の街や、アナウンス研究会の部室などを巡ります。十数年ぶりの早稲田散策で、一体お二人はどんなことに気付いたのでしょうか?

左から、宮崎宣子さん、小島よしおさん

ジュリア・ロバーツに憧れ、ホームシックに泣いた高田馬場の思い出

「宮崎さん思い出の場所」ということで大学からは離れた場所に来たけど、ここは…
…ほ、ホームセンター!?
うん。入学したばかりのころ、このオリンピック早稲田店で、新生活の全てのものをそろえてた。当時、この近所に住んでいて「オリンピックに行けば何でもそろうよ」って大家さんが教えてくれたんです。
何をそろえたんですか?
ガスコンロとか、小さな棚とか、プラスチックの衣装ケースも買ったな。学生はここを知っていれば絶対に便利だよ。安いし、夜まで営業しているし。
宮崎さんは宮崎県から上京してきて、ワクワクの一人暮らしですもんね。
でも、ワクワクしたのは初めの1週間だけ。それまでにぎやかな6人家族だったから、すぐに一人暮らしが寂しくなって、ホームシックになっちゃった。周りは新歓コンパで騒いでいるけど、みんな「都会の人」でしょ。変な劣等感を抱いて、なるべく東京の人とはしゃべりたくなかったんです。

千葉県出身の小島さんは、実家から大学に通っていたのでしょうか?

3年生までは実家だったけど、4年生のころから弁天町で一人暮らしを始めたんです。実は、午前中の授業に寝坊ばかりしていて、ちゃんと出席するために大学の近くに引っ越した。

当時住んでいたのは家賃4万6000円の風呂なしアパート。引っ越しの資金も持っていなかったので、「お笑いで売れたら10倍にして返すから!」と、地元の友達から10万円を借りて引っ越したんです。
その借金はちゃんと返したの?
売れてからちゃんと返しました。
すごい! えらいねえ〜。せっかくだから、当時一人暮らしをしていたアパートを見に行ってもいいかな? 確か、この細い道を入って…この道で合っていると思うんだけど…。
さっき行った商学部みたいに、すっかり変わってるかも。
この辺りにあったはずだけど…あれ、駐車場…?
本当にこの道で合ってるのかなあ…?
あ、違った! だんだん思い出してきた。もう一本先の道だ!
わ~、あったよ。このアパートっ!
すごい、ちゃんと残ってるんだ!

宮崎さんは、なぜ高田馬場に住んだのでしょうか?

当時、宮崎から出てきたばかりで電車に乗ったこともなかったから、徒歩で通えるところに住みたかったんです。大学近くの不動産屋に行って紹介してもらったのがここでした。

家探しの方法もよく分からなかったから、1軒目で決めちゃったんだけど、居心地が良くて、3年生まで住んでたんです。壁のペンキがきれいになってたりはするけど、そのまんまだな〜。

学生時代の3年間を過ごした思い出の場所なんですね。

思い出と言えば、ここから歩いてすぐの早稲田松竹にも、思い出が詰まってるんです。ちょっと行っていい?
早稲田松竹には僕もたまに来てたなあ、懐かしい。
地元の宮崎では、徒歩や自転車で行ける範囲に映画館がなかった。だから、東京に出て1人で映画館に行くことが、とても「大人」な気がしていたんです。
その気持ち、すごく分かるなあ。
学校帰りに1人で早稲田松竹に来て、2本立てを続けて観てました。『プリティ・ウーマン』とかもここで観て、ジュリア・ロバーツにすごく憧れた。ここでは本当にいろんな映画を観せてもらいましたよ。
映画を観まくるような時間の過ごし方って、大人になるとなかなかできないですよね。学生のときにはその貴重さが分からなかった。僕も、早稲田の駅前にあったレンタルビデオ屋さんでDVDを借りて、映画をずっと観ていましたね。

夢を実現できたのは、サークルがあったから学生会館でタイムスリップ

なんか…アナ研っていうとキラキラした印象があったのに、こうやって振り返ってみると、宮崎さんの生活ってあんまりキラキラしてなかったのかな?
だって、アナ研って、かなりのスポ根サークルだよ。私の時は400人くらい新入生が入ってたけど、ちゃんと基礎練に参加しないとすぐに退会させられてたし。
え、スパルタなんだ…。そんなに厳しい環境でも、アナウンサーになるっていう夢は諦めなかったんですね。
大学に入ってしばらくは東京での生活が楽しくて、アナウンサーへの夢を忘れていた。けれども、3年生になって就職活動を意識し始めたときに、母親から「アナウンサーになるんだよね?」って聞かれて、自分の夢を思い出したんです。するともう、「アナウンサーになっている自分」しか想像ができなかったの。
何の根拠もないのに?
うん。そこからは無我夢中で、アナウンサーになるために専門学校に通い、いろいろな人からアドバイスもいただいて、無事、アナウンサーになれたんです。…ところで、アナ研って今どんな感じなんだろう? 部室は開いてるかな?

では、アナウンス研究会の部室がある現在の学生会館に行ってみましょう。

学生会館の入り口付近にあるインフォメーションセンター。

…あ、これは懐かしい、インフォメーションセンターだ! 実は僕、この学生会館でもWAGEの練習をしてたんですよ(※第二学生会館の解体が2002年に始まったため、各サークルは2001年竣工の戸山キャンパス30号館「学生会館」に活動の拠点を移した)。そうそう、名簿にサークル名を書いて、予約して部屋を取るシステムだった。今も変わってないんですね。
スタッフ
小島さん、久しぶり!
え!?
スタッフ
当時から受付に立っていたんです。アフロの髪型が印象深かったから、小島さんの学生時代のことも覚えていますよ。
本当ですか!?
スタッフ
小島さんが人気になった後も、「小島くんテレビに出てるね」って、受付のスタッフみんなで話していたの。
うれしい、覚えててくださったんですね。ありがとうございます!
スタッフ
こちらこそ、たくさん学生会館を使ってくれてありがとう。

では、続いて学生会館10階にある、アナウンス研究会の部室です。

失礼します。OGの宮崎です。
幹事長
初めまして。アナウンス研究会の幹事長を務めております、井川浩二と申します。
うわ~、私のころとは全然違う部屋だ。

こちらの学生会館の部室は初めてですよね?

そうなんです。ちょうど私が卒業したころにこの学生会館ができたから、全然使ったことがない。
資料とか機材が棚いっぱいに詰め込まれてる。宮崎さんが在籍していた当時の資料とかはないんですか?
幹事長
昔の資料はデジタル化してしまったので、ここにはないんですよ。
残念! 宮崎さんの活躍を知りたかったのに!
アナ研はみんな、実況ゼミ、MCゼミ、朗読ゼミとか、いくつかの専攻に分かれて活動していて、私はDJゼミをやってた。音楽を流しながらラジオパーソナリティーみたいにしゃべるんです。ちゃんと録音もするんですよ。

キューシート(※TVやラジオ番組のタイムテーブルを)を書いて、「ここで音を流す」「ここでトークする」と細かく指定をしながら、一つの番組を作ってました。
本格的! 宮崎さんも、アナ研で鍛えられたんですね。
ただ、私は本当にデキない落ちこぼれの学生だった…。アナ研で生まれた、人とのつながりに助けてもらったんです。TBSや日テレに入った先輩が大勢いて、テレビの仕事の裏側を教えてもらったり、あらためてアナウンサーになる決心をしたときには、先輩からアナウンスの専門学校を紹介してもらったりしました。サークルの人間関係が、夢をかなえてくれたんですよ。
僕も、そもそもお笑い芸人を目指すきっかけがそうだし、WAGEに入って周りの人が支えてくれたからお笑いの道に進むことができた。サークルの人間関係は、その後の人生に大きな影響を与えてくれますよね。
そうだね。実は、アナ研史上、私は女性で初めてキー局のアナウンサーになったんです。でも、落ちこぼれの私がキー局の内定をもらったなんて、誰も信じてくれなかった(笑)。無我夢中で頑張ったことと周りの人に恵まれたこと、それで私はアナウンサーになることができたんです。
幹事長
勉強になります。ありがとうございました!

文キャンの新名所「戸山の丘」でハングリー精神を思い出す!?

ここまで来たら、戸山キャンパスにも行けるかな? そうそう、私、毎年冬至には穴八幡宮に来てるんです。
僕も今年行きました(※本企画の収録は2018年の年末)。「一陽来復」って書かれた金運アップのお札をもらって、24時ぴったりに家に貼るんですよね。
ここに来るようになってから、一回も喰いっぱぐれてないから、ご利益があるはず。そして、穴八幡宮の向かいには戸山キャンパスがあるんだけど…あれ?
どうしたんですか?
体育館がなくなってる!?

以前あった戸山キャンパス記念会堂の跡地に、2018年12月「早稲田アリーナ」が完成し、その屋上には「戸山の丘」という緑化スペースが作られています。建物内にスターバックスコーヒーがオープンする予定です。

屋上ひろば「戸山の丘」から、キャンパスを望む二人。

えー、そうなんだ! 学生のころからリッチなスタバのコーヒーを飲めるなんて考えられない。私が学生だった当時は、高田馬場にスタバがあって、あそこで飲むのが憧れだった。初めてキャラメルマキアートとシナモンロールを頼んだときに、「私は都会の女」って思ったよ(笑)。
もしかしたら、これから宮崎さんのように地方から上京してきて、ここのスタバで「都会の女」を味わう子もいるかもしれないですね。
戸山キャンパス全体がきれいになっちゃって、スロープくらいしか私の記憶と一致しない(笑)。文キャンは古い校舎ばっかりだったのに…。もう、私の知ってる文キャンじゃないよ! 私が通ってたのはここじゃない!!(笑)
パニクってる(笑)。
だって、これじゃ「慶應大学です」ってウソをついても分からないじゃん!(笑)
でも、ほらカフェテリアは変わってないですよ。僕はWAGEの打ち合わせでたまり場にしていたから、文カフェ(戸山カフェテリア)にはよく来ていたんです。外の席で打ち合わせすることが多かったな。
中に入っていいかな? 私はよくここで「ほうれん草のおひたし」を頼んでた。確か50円くらいで…。

今でもありますよ、しかも、なんと64円!

安っ!!

ちなみに宮崎さんが受けていた授業の中では、どんな授業が印象的でしたか?

やっぱり中国語かなあ。その時の友達とはいまだに仲がいいですよ。毎回、厳しい課題があったから本当に大変だった。けれども、授業を受けていたみんなで支え合い、励まし合いながら頑張って単位をもぎ取りました。今でも大切な友達だし、毎年1回は必ず会っていますね。

では、最後にちょっとお茶を飲んで行きましょう。麻雀好きの宮崎さんにお勧めのいい雀荘があるんです(笑)。

え、雀荘?

早稲田キャンパス南門前にあるカフェ「早苗」。

はい。「早苗」は、以前は雀荘としても営業をされていたのですが、今はカフェとして営業をしています。

早苗には初めて来ましたが、麻雀好きな親の影響もあって私もできます。学生時代、周りの友人には、朝まで麻雀をして授業に出なかったせいで単位を落とした人もいましたね(笑)。私は当時たまに顔を出す程度でしたが、大人になった今、麻雀熱が再燃してます(笑)。
今では麻雀をする学生も珍しいでしょうね。

今日は懐かしい場所ばかりでしたが、十数年ぶりに早稲田を巡った感想はいかがですか?

変化が激しすぎです(笑)。文キャンもそうだし、小島さんと一緒に過ごした商学部の校舎も建て替わっていたので、年月の流れを感じて少し寂しかったな…。でも「やっぱり私はここから始まったんだな」って思い出しました。

学生のころは、怖いものもなかったし、守るものもなかった。今だったら絶対に考えられないけど、ミスコンに出るって決めたときも「アナウンサーにならなきゃ」って無我夢中だったんです。それなのに、年齢を重ねるとどこか守りに入ってしまいがち。当時を思い出して「今の自分を奮い立たせなきゃ」って思いました。
僕も、どらま館で当時の感覚を思い出しましたね。あのころは、友達もいないし彼女もいない、名前も知られていなくて「絶対に有名になって周りを振り向かせてやる」というハングリーな気持ちしかなかった。けど逆に最近は、そんな貪欲さを忘れがちになってる。今日をきっかけに心を入れ替えて、明日から頑張ります!
やっぱ小島さん、真面目〜(笑)。でも良いこと言うなあ。
プロフィール
宮崎 宣子(みやざき・のぶこ)
1979年、宮崎県生まれ。2002年、早稲田大学第一文学部を卒業し、日本テレビにアナウンサーとして入社。『ラジかるッ』(日本テレビ)、『ザ! 世界仰天ニュース』(日本テレビ系列)などに出演。日本テレビ退社後も、『ネプリーグ』(フジテレビ系列)、『中居正広のミになる図書館』(テレビ朝日系列)、『ナカイの窓』(日本テレビ系列)など多数のテレビ番組に出演。また、ハーバルセラピスト、紅茶シニアコーディネーター、オーガニック料理ソムリエなどの資格を持つ。趣味はゴルフ、ハーブティー、世界遺産巡り、ホットヨガなど。
小島 よしお(こじま・よしお)
1980年、沖縄県生まれ、千葉県出身。2004年早稲田大学教育学部卒業。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年より、ピン芸人として活動する。2007年に「そんなの関係ねぇ!」で大ブレーク。2014年にキッズコーディネーショントレーナーの資格を取得。2016年に初のキッズアルバム『よしおのうた』をリリース。年間100本以上の子ども向け単独ライブを行い、“日本一子どもに人気のお笑い芸人”として活躍の幅を広げている。
取材・文:萩原 雄太
1983年生まれ、かもめマシーン主宰。演出家・劇作家・フリーライター。早稲田大学在学中より演劇活動を開始。愛知県文化振興事業団が主催する『第13回AAF戯曲賞』、『利賀演劇人コンクール2016』優秀演出家賞、『浅草キッド「本業」読書感想文コンクール』優秀賞受賞。かもめマシーンの作品のほか、手塚夏子『私的解剖実験6 虚像からの旅立ち』にはパフォーマーとして出演。 http://www.kamomemachine.com/
撮影:加藤 甫
編集:松本 香織、横田 大(Camp)
デザイン:中屋 辰平、PRMO
撮影協力
オリンピック早稲田店
早稲田松竹
早苗
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