Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

コロナで変わった? キャンパスとオンラインで揺れる人間関係

新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年度はオンライン授業が中心となった早稲田大学。そのため、対面でコミュニケーションを取る機会が減り、人との心理的・物理的距離をこれまでになく感じながら過ごした人もいたことでしょう。そんな1年を経て、2021年度は十分な感染対策を実施し、対面授業が7割となることを目指して春学期がスタート。キャンパスに足を運ぶ学生が増えた一方で、ソーシャルディスタンスを求められ、オンラインが推奨される場面もあるなど、コロナ禍以前とは異なる状況に戸惑う学生もいるのでは? そんなコロナ禍において人間関係に見られた変化とは何か。また、人との付き合い方はどうすれば良いのでしょうか。人間関係について孤独や孤立、友人などをテーマに研究する、石田光規教授(文学学術院)に話を伺いました。

石田 光規(いしだ・みつのり)文学学術院教授。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。大妻女子大学専任講師、准教授を経て2014年より現職。人間関係について、孤独・孤立、友人などをテーマに幅広く研究する。著書に『友人の社会史』(晃洋書房)、『孤立不安社会』(勁草書房)ほか。

※インタビューは、新型コロナウイルス感染症の予防を徹底した上で行いました。

コロナ禍がもたらした人間関係の変化、早大生の変化

――コロナ禍も、はや1年。この間、学生同士の交流などの「人間関係」はどのように変化したでしょうか?

コロナ禍における人間関係の変化としては、まず、対面で会うためにはその理由付けが必要になってしまった、というのが大きいですね。この点は以前までなかったことなので、人と会うことのハードルがかなり高くなったのは間違いありません。

もちろん、感染対策をちゃんとしていれば理由付けなんて不要、私は別に気にしない…という人もいるでしょう。その一方で、こんな時期に呼び出すなんて非常識だ! と思う人、非常識と思われたらどうしようと不安になってしまう人…と、コロナに対する考え方には温度差があり、千差万別でうかがい知れない部分も大きいです。そのことを気にしなければならないことは、やはりとても気疲れしますよね。

そうなると、コロナ禍においては基本的に会うのは身近な人たちだけ、と制限することが精神衛生上にも大事になる。一方で、大学の友人関係というのは、そもそも不特定多数との交流を前提としています。さまざまな場所に住んでいる人がわざわざ電車などに乗って「早稲田大学」というキャンパスに集まり、そこを起点に友人関係を作るわけです。交流の制限を求めるコロナ社会と、不特定多数との交流が前提の大学…このせめぎ合いの中で学生生活を送る皆さんは、本当に大変だと思います。

――特に早稲田の学生が大変そうだと感じる点はありますか?

早稲田大学の場合、全国から「たくさんの人に出会いたい」と門をたたいた学生も多いはずです。そんな期待を胸に抱いて入学した人にとっては、かなり肩透かしを食らった状態になりますよね。

また、オンライン授業と対面授業が併用になると、講義内容を問わず、オンラインか対面かで授業選択をする人が出てくるでしょう。極端に言えば、キャンパスに通うことなくほぼ全ての単位を取り終える人が出てくる可能性もある。つまり、授業というものを通じて人々を強制的に結び付けてきた「場」が失われてしまいます。

このままでは、早稲田大学というキャンパスが持っていた力も相当薄れてしまう、と言わざるを得ません。そのとき、人々はどこに早大生としてのアイデンティティーを見いだすのでしょうか。皆が集まり散じて雑多な関係性を作り上げるという、ほんの数年前まで早稲田が持っていた価値は大きく損なわれる状況になってきています。

ソーシャルディスタンスを保ちながら、静かに過ごす早大生

オンライン交流の弱点、オンライン授業の悩ましさ

――コロナ禍で、孤独を感じる学生が多いという調査結果も見られます。その解消策として交流会などのオンライン企画も増えています。

そうですね。学生に限らず、社会人の間でもオンライン飲み会が話題になりましたね。オンラインイベントは増えているものの、浸透しきっていない印象があります。オンラインというのは、「遠くにいて参加できない」など、マイナスだったものをゼロに戻すことは得意な反面、ゼロからさらにプラスを積み上げていけるかというと、なかなかそこは苦手なんです。

また、オンラインを介した交流の場というのは、いきなり「目的を共有した者同士」といったつながりから始まることがほとんど。つながった後に人となりを見るという、従来の人間関係の築き方とは逆のアプローチになります。

例えるなら、紙の辞書と電子辞書、のような違いでしょうか。紙の辞書の場合、目的の言葉以外に、その前後の言葉も見ながら調べます。でも、電子辞書の場合はいきなりその知りたい言葉だけ意味が表示される。そのショートカット感覚を便利だ、コスパがいいと捉えることもできますが、同じ「コスパ感覚」を人間関係にも当てはめて、当たり前のことにしてしまっていいのでしょうか。

ですから、本来であれば、やはり対面授業の環境を確保・整備することが重要です。早稲田大学が2021年度の授業実施方針に掲げている「対面授業7割」は、私自身、とても大事なことだと思っています。

2020年8月に早稲田大学大学総合研究センターが全学生を対象に行った、オンライン授業に関する調査では、 58.1%が「友達と一緒に学べず孤立感を感じる」と回答(出典:早稲田大学「オンライン授業に関する調査結果」

――このような人間関係の悩みについて、先生に直接相談に来る学生はいますか?

一つ深刻な問題だと思うのは、オンライン授業ばかりだった昨年度の状況では、悩みを相談しに来るほどには教員と学生も密接な関係性を築けていない、ということがあります。ゼミ生になると私の研究室に来たことがある学生も大半ですが、2年生(現3年生)以下では研究室に一度も訪れたことがない、という学生がほとんどではないでしょうか。

ただでさえ、教員に何か相談事をするのはハードルがとても高い。相談ができる人間関係というのは、それなりに密な接触を持ち、お互いが自分のことを開示し合うことでだんだんと出来上がっていくわけですが、懇親会もダメ、合宿もダメ、授業はオンラインで、という状況ではなかなか難しいですよね。

オンラインという環境は、「雑談」との相性が非常に悪く、苦手です。何か目的がある場合には有益なつながりを生みますが、その間にある余白みたいなものはなかなか生まれない。話が脱線することもあまりないですし、何かボーッと考え事をするのも難しい。でも、議論する上では、そういった「余白」「脱線」「考え事」こそが大事だったりします。そのことは学生の皆さんも肌身で感じているからこそ、今、対面授業への期待値は非常に高いと感じています。

穏やかな心持ちで、ゆったり構えた友人作りを

――学年によって抱える悩みも異なると思いますが、石田先生が気に掛けていることはありますか?

私が気になっているのは今年3年になった学生さんたちです。もちろん、どの学年もそれぞれ大変な側面はありますが、昨年度の1年生なら「入学早々大変だね」、4年生なら「最後の学年なのに大変だね」と心配されていました。また、3年生(現4年生)はゼミを通じて少ないながらも対面交流はありました。一方、2年生(現3年生)は、私の所属する文化構想学部に関して言えば、対面授業はないし、新入生でも卒業生でもないから、あまり気に掛けられませんでした。つまり、どこか忘れられた存在になってしまったわけです。

仮に今後、またコロナの感染拡大で「やはり全面オンライン授業で」という状況に戻ってしまうと、現3年生は、対面で深い議論をした経験が少ないまま就職活動に突入し、社会人になる可能性があります。また、サークル活動でも3年生は本来、幹部としての活躍が期待されるはずなのに、中堅どころの2年生のときからオンラインを強いられ、思うように活動できていない歯がゆさもあるでしょう。その大変さについて、もっと注意しなければいけないかなと思います。

――あらためて、コロナ禍で人間関係を構築していく上では、どんな点に気を配って学生生活を送ればいいでしょうか。

石田先生の近著『友人の社会史』(晃洋書房)。「親友」とは何か。新聞記事に表れた「親友」分析を通じて、「友人関係」に向けられた社会の目線を読み解く一冊

これはコロナ流行の前から言っていたことですが、友人というものは「なければいけないものだ」という感覚を若いころほど抱きがちです。でも、決してそんなことはなくて、もっとゆったりと構えて大丈夫。そこまで焦って友人を作らなくてもいいはずです。

仮に友人が少ないからといって、直ちに困るわけではありません。むしろ、そんなことを意識せずに付き合いを重ねていって、卒業するときに、または卒業後に振り返った結果、「そういえばあの人たちが友人だったな」くらいの心持ちでいいのではないでしょうか。

3、4年生でも、このままコロナで会うこともできず、深い付き合いができないことを悩んでいる人は多いと思います。でも今、関係性が薄くなってしまったとしても、それがずっと続くわけではないですから。

仮に大学時代に友情物語が少ないからといって、人生が寂しくなることもないですよ。自分にとって本当に必要な関係であれば、後からでも戻ってくるものです。そのぐらいの穏やかな心持ちで日々を過ごしていただければ、と思います。

取材・文:オグマナオト(2002年、第二文学部卒業)

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