Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

「学生生活・学修行動調査」から分かる早大生の学びと生活の実態

皆さんは大学での自らの学びを客観視したことはありますか? 今回の特集では、2020年度に大学総合研究センターが実施した「学生生活・学修行動調査」(以下、新調査)について報告します。この調査は早大生の皆さんの学生生活・学修状況の実態を把握し、分析した結果をより適切に大学の施策に反映していくことを目的としており、これまで38回にわたって学生部が実施してきた「学生生活調査」(以下、旧調査)を継承して行われたものです。そもそもなぜ学生調査というものが必要なのか、その意義についてや、新調査の結果から分かる早大生の学びの実態と、昨年度からの学びの変化について、大学総合研究センターによる考察を紹介します。

【調査の概要】

  • 調査期間:2020年11月16日から12月7日まで
  • 調査方法:オンライン調査ツールを用いて実施
  • 実施調査対象:早稲田大学の全学生(正規生に限る)46,309名
  • 有効回答者数:10,665件(回収率23.0%)
1.なぜ学生調査が必要なのか

そもそもなぜ学生調査というものが必要なのでしょうか。ここでは2つの視点から述べたいと思います。

1つ目は、大学のさまざまな施策に対して、より詳細なデータに基づいた意思決定を行っていくためです。例えば、今日のように新型コロナウイルス感染症が拡大している中で、科学的根拠に基づいた政策は欠かせません。地域別の感染者数は何人か、感染率はどのくらいか、街中や駅での人の往来はどの程度か。それらから導かれる営業時間の短縮やテレワークの推奨など、まさに科学的根拠に基づいた政策が求められ、効果検証も必要になっています。一個人の経験談やうわさ話といったエピソードに基づくのではなく、こうしたエビデンスベースの政策が、現代社会ではより多くの場面で求められているのです。 大学もその例外ではなく、例えば、学生の満足度を高めるためには、どのような授業が望ましいのか、あるいはウィズ/ポストコロナにおけるオンライン授業はどう在るべきかについては、世界中の大学が模索しているところです。そうした背景の中で、2020年度春学期に大学総合研究センターが実施したオンライン授業アンケートは、大学の施策や授業実践の改善などにあたって、学生の声を参考にするために実施されたものでもありました。

2020年度春学期に早稲田大学の全学生(正規生のみ)を対象に実施したオンライン授業に関する調査結果報告のWeb画面(※クリックして大学Webサイト該当ページへ)

他方で、エビデンスベースの施策を実行するにも、大学のデータは各学部・研究科に散在しているため、それらを統合することは容易ではありません。早稲田大学のような大規模大学ではなおさらです。大学総合研究センターでは学内関係機関の協力を得ながら、特定の個人を識別不可能とした上で、学生の入学から卒業まで一貫したデータの分析ができるよう整備を進めています。 2つ目は、学修者本位の教育実践を支援するためです。21世紀に入り、国内では学士力や社会人基礎力、海外ではキー・コンピテンシー(※)や資質・能力といった概念が、学修成果(ラーニング・アウトカム)として注目を浴びてきました。就職率や国家試験合格率、卒業率といった数字としてのアウトプット(=出力結果)ではなく、学生が大学教育を通して「何ができるようになるのか」というアウトカム(=成果)への注目です。早稲田大学のシラバスを見ると、各授業の到達目標が設定されており、多くの授業が学生を主語とし、授業を通して何ができるようになるのかが示されています。

※特定の状況の中で心理的・社会的な資源を引き出し、動員することにより複雑な需要に応じる力のこと

では、授業だけではない学士課程全体を通して、学部生は何を身に付ける必要があるのでしょうか。現在早稲田大学では、創立30周年式典で宣言した三大教旨に基づいてディプロマ・ポリシーを設定しており、そこに定める6つの能力や素養を身に付けた学生に学位を授与することとしています。従って、学部生が早稲田大学を卒業するには、各学部の専門教育を中心に設定された授業の単位を取得するだけでなく、ディプロマ・ポリシーに定める6つの能力や素養を身に付けていることが学士という学位の取得、すなわち卒業の条件となっています。卒業に必要な6つの能力や素養を測定するために学生の学修成果をデータ化し、さらにその学修成果をより高めるための大学としての支援の在り方を検討するために、学びのプロセスである学修行動データを収集することが求められているのです。

早稲田大学がディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)に定める6つの能力(※クリックして大学Webサイト該当ページへ)

以上に述べてきましたように、新調査は(1)大学の意思決定支援をより強化するため、(2)学修者本位の教育実践を支援するために、これまで行われてきた旧調査を継承する形で企画・実施されました。続く2節、3節では、実際に収集されたデータの一部を紹介します。

2.新調査で見えた早大生の学びの傾向

早速、早大生の学びの実態をデータから読み解いていきましょう。以下にいくつか事例を紹介したいと思います。新調査では、先に述べた学修成果をより細かく分解し、(1)入学時にどのくらい身に付けていたのか、そして(2)現在どのくらい身に付けているのか、についてそれぞれ尋ねました。調査は2020年11~12月に実施したので、1年生は入学して半年、4年生では3.5年経過した時点での成果を測定することになります。 図1に示したのは、入学時の修得度です。肯定的な回答(「まあまあ身につい(た)ていた」+「身につい(た)ていた」)が最も高かったのは、「相手の状況や考え方を尊重できる」(82.1%)というコミュニケーションにあたる項目でした。一方、肯定的な回答が最も低かったのは、「外国語を理解し、話せる」(43.6%)という国際性にあたる項目でした。次に、それぞれ現在ではどのくらい身に付けているのかの回答は図2のようになりました。

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図中に示しているように、全ての項目が入学時よりも高くなっています。特に、「既存の考え方にとらわれず、新しいアイデアを生み出せる」(19.3%増加)、「自分の考えを分かりやすく表現できる」(18.8%増加)という項目の伸びが大きくなりました。一方で、「外国語を理解し、話せる」(11.1%増加)の項目は最も伸びが小さい結果となりました。では、これらの項目の修得度は、学年ごとに着実に伸びているのでしょうか。その伸長を示したのが図3です。

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学年別に入学時点の修得度と、現在の修得度の平均値を取り、その差をレーダーチャートで示してみると、学年が進行するにつれ、レーダーチャートに示される線が大きくなっています。1年生はまだ入学して半年程度なので、その伸長は決して大きくはありません。4年生では平均的に、どの項目もそれぞれ伸長しています。つまり、これらの項目の修得度は早稲田大学における学習を通じて着実に伸びていると言えそうです。ただし、いずれの学年においても、「異文化を理解できる」あるいは「外国語を理解し、話せる」といった国際性に関する項目の伸長が比較的小さいことが解ります。これらは、今後の早稲田大学の教育の課題でもあります。

3.コロナ禍で早大生の学習はどう変化したか

次に、これまで行われてきた旧調査との比較を行い、新型コロナウイルス感染症拡大によるオンライン授業の実施などの影響を間接的に示したいと思います。用いる項目は、「授業出席率」と「授業の予習・復習時間」です。 図は省略しますが、前年度と比べて授業の出席状況が良くなっています。授業の平均出席率は、2019年度の旧調査では「90~100%」という回答が59.3%であったのに対して、2020年度の新調査では75.0%とかなり増加しました。コロナ禍において授業への出席率が一層高まっていたということになります。では、学習時間はどのように変化したのでしょうか? これまで日本の大学生の学習時間は海外と比較して少ないと指摘され(※1)、課題とされてきました。新調査で、2019年度と同じ質問項目で尋ねた結果を学年ごとに示したのが図4です。1日あたりの予習・復習時間が、4年生はあまり変化していないものの、1~3年生についてはそれぞれ増加しました。1~3年生では、「1時間以上2時間未満」の層が最も多く(1年:31.4%、2年:33.8%、3年:36.2%)、特に1年生においては「2時間以上3時間未満」も大きく増加しています(17.4%→23.6%)。1つの授業にかける学習時間が単位制度の趣旨(※2)に適う形で実践されたようです。

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これらの結果は、一見して、良い結果と言えるかもしれませんし、意外にも(?)真面目な早大生の実態を捉えているのかもしれません。他方で課外活動の制限や移動の自粛が要請されるなど、正課外教育・活動へ影響があったためかもしれません。大学総合研究センターが校友(卒業生)を対象に行った卒業後10年時点における卒業生調査では、授業などの正課教育に加え、さまざまな課外活動に熱心であることが各人の能力獲得に寄与していることも示されています。授業を中心とした正課教育に加え、正課外教育・活動を含めた多様な学びの場をどのように継続して提供できるか、その効果はどれほどなのか。まさに、学生生活と学修行動の双方を統合した新調査において一層の検証が求められています。

4.今後に向けて

今回は、学生調査というものがなぜ必要とされているのかを説明したうえで、早稲田大学における新調査の狙いと結果の一部を紹介してきました。今後も早稲田大学の発展と学生一人一人の成長につながるように、継続的に新調査を実施し、その結果を生かしていきます。なお、新調査の単純集計は今後公開していく予定です。学生本人はもちろん、早稲田大学のステークホルダーである校友(卒業生)や、これから早稲田大学を目指す中高生やその保護者の方々にも、在学生の学び・経験と生活の実態を積極的に発信していきます。2021年度春学期中(6~7月)に実施予定の新調査に対しても、学生の皆さんの積極的な回答をお待ちしています。

※1 財務省,2020,財政制度審議会文教・科学技術(参考資料),p.75,https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseier190516/02.pdf(2021年3月28日取得).

※2 森利枝,2010,「単位制度再考-日米両国の議論から」日本私立大学協会『アルカディア学報』https://www.shidaikyo.or.jp/riihe/research/419.html(2021年3月28日取得).

大学総合研究センター概要

2014年2月1日に設置され、早稲田大学の教育、研究、経営の質的向上に資する自律的・持続的な大学改革を推進するために、大学の理念に基づき、高等教育に関する研究および授業方法の企画・開発・普及促進とその実践を支援することをミッションとして掲げている組織。

Webサイト:https://www.waseda.jp/inst/ches/

【次回フォーカス予告】5月10日(月)公開「コロナと人間関係特集」

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