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総長挨拶 混とんとする社会に立ち向かうための早稲田での学び【2021年度入学記念号】

早稲田大学総長 田中 愛治(たなか・あいじ)

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。早稲田大学は、新型コロナウイルスの感染拡大リスクを回避するため、入学式の式典への参加を新入生のみとさせていただきました。ご家族や関係者の方と迎える入学式は、格別の時であるにもかかわらず、規模を縮小しての実施となったことを大変残念に思っております。一方で、早稲田大学は、三つの重要な使命を果たす必要があります。皆さんの健康と安全を確保する教育環境を提供する使命、皆さんにしっかりとした教育を提供する使命、そして教員が研究を続けその成果を教育に反映する使命です。この三つの使命を果たすためには、入学式の参加人数を制限してでも、健康で安全な環境を新年度に向けて整えることが最優先である、と私たち教職員は考えたのです。このことをご理解いただきたく思います。

答えのない問題にも解決策を示せる「たくましい知性」

現在、人類が直面している多くの問題には、新型コロナウイルス感染症の問題を筆頭に、地球の温暖化問題、経済格差の拡大など、「正解」がありません。早稲田大学では、新入生の皆さんに、そのような答えのない問題に対する解決策を自分の頭で考え抜く「たくましい知性」を育んでいただきたいと願っています。未知の問題に挑戦して、自分自身の解決策を仮説として提案する知力と気力を身に付けてください。知識と論理的推論だけを頼りに、数分間で問題を解くことを目的とするような受験勉強とは違い、自分なりの仮説を提案するまでには、数週間、数カ月、もしくは数年といった長い時間が掛かるかもしれません。学問とは、文字ができてから約5,000年間にわたる人類の経験のエッセンスを体系的にまとめたものです。高校までの教育は、学問を理解するための重要な基礎となっています。しかし、学問には人類が過去にどのように未知の問題に挑戦したかの経験は記されていますが、人類がまだ経験したことのない問題への答えは示されていません。未知の問題に、自分なりの解決策を仮説として立て、その仮説に根拠を示して検証し、自分の仮説が誤っていれば一からやり直す。このような思考の訓練を通じて、「たくましい知性」を早稲田大学で育んでください。

早稲田キャンパスにある大隈重信像

1882年、大隈重信によって設立された早稲田大学は、「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」という建学の理念を掲げ、135年以上にわたって、学問を実社会に役立てることを重視する教育をしてきました。それをより体系的に、学部を問わず全学の学生に提供できるように、早稲田大学ではグローバルエデュケーションセンター(GEC)を中心に、全学共通の科目を提供しています。その中でも、基盤教育として位置付けられているのが、「日本語の学術的文章の作成」「英語での発信・英語の論理的文章の作成」「数学的な論理的思考力」「データサイエンスを駆使できる統計学的な理解」「情報科学を活用する能力」という五つの分野で、これらを体系的に学ぶことができます。基盤教育は、大学で学問を学ぶために必須のアカデミック・ツールであり、社会に出ても知的職業に就けば必要となるツールです。皆さん、ぜひともこれらの科目を積極的に履修してください。

多様な価値観に敬意を持って接する「しなやかな感性」

早稲田大学には、多様性を認める創立以来の伝統があります。日本全国から学生が集まり、また海外からも例年8,000名を超える学生が来ています。このため早稲田は、自分とは異なる国籍、民族性(ethnicity)、文化、宗教、信条、年齢、性別、障がい、性的指向・性自認などにかかわらず、多様な価値観を持つ人々に敬意を持って接し、理解し尊重する「しなやかな感性」を育むことのできる大学です。2017年4月にはセクシュアルマイノリティ学生の支援施設「GS(ジェンダー・セクシュアリティ)センター」を日本の大学で初めて発足させました。

多様な価値観にあふれる学生たちによるイベントの様子。写真左:ICC(異文化交流センター)、写真右:GSセンター

大学内で自分とは異なる国・地域出身の学生と共に学び、共に活動することで、「しなやかな感性」をぜひとも育んでください。そして、日本に来た留学生はこの機会がそうだと思いますし、日本で育った学生も一度は海外に留学して、さまざまな環境に身を置くことで、自国や自分自身を見つめる機会を持ってください。早稲田大学にいながらオンラインで海外の大学の授業を学ぶことも可能になりつつあります。さまざまな機会を積極的に活用してください。

世界のトップクラスの大学になる覚悟

2018年11月に早稲田大学の総長に就任して以来、私が強調していることは「世界で輝くWASEDA」を目指す、ということです。早稲田は今、世界のトップクラスの大学になるという決意を固めようとしています。私は、早稲田大学が国際的に見て学術的に意義があると思われる研究を続け、社会に送り出した人材が世界中で高く評価されるようになれば、「世界で輝くWASEDA」が実現すると思います。そのために、教職員は自分より優秀な人材を採用し、自分を追い越すように育てるべきだと提唱しています。

写真左:2020年3月に竣工した新研究開発棟・121号館(撮影: ㈱エスエス / 走出直道)
写真右:2021年秋に開館予定の国際文学館(村上春樹ライブラリー)の内部イメージ

ただし、早稲田が目指すグローバル・リーダーとは、必ずしも国際機関やグローバルに羽ばたいている企業で仕事する人材だけに限りません。どのような小さい町や村で仕事をしようとも、どのような組織で仕事をしようとも、グローバルな視野を持って、人類社会に貢献しようとしている人は、グローバル・リーダーと言い得ると考えています。

学生による自由闊達(かったつ)なイニシアチブ

早稲田大学には、国際的な多様性と並んで、もう一つ誇れる特徴があります。それは、早稲田では、どのような学生にも居場所があるということです。早稲田では、都会出身の人も地方出身の人も、奨学金が必要なご家庭の人も経済的に余裕のあるご家庭の人も、学問研究に打ち込む人も、演劇やダンス、音楽、絵画、小説など文化活動に打ち込む人も、スポーツに打ち込む人も、皆が対等で、自然に付き合っています。自分のやりたいことが、必ず学内のどこかにはあると思います。もし見つからなければ、自分自身で新しい活動を作ることもできます。そして、大学はそれも奨励しています。
新入生の皆さんには、在学中にこれだけは自分が打ち込んだと思えるものを、もしくはこういうことにやりがいを感じるだろうなと思うものを、見つけていただきたいと思います。そのことが、将来の自身の人生の中で何らかの形で生きてくると思います。

写真左:オンライン開催となった「早稲田祭2020」内で実施されたEnding Festivalの様子
写真右:早稲田大学が運営する、南門通りに建つ小劇場「早稲田小劇場どらま館」。黒一色の外観が特徴的

早稲田大学は、型にはまったルートを求めるような大学ではなく、自分でやりたいことを探し出す大学です。早稲田にいる間に、面白いと思うこと、やりがいを感じることを見つけ出してください。それは、勉強や学問研究かもしれず、ビジネスやベンチャーの起業かもしれず、政治や行政かもしれません。あるいは、将棋や小説、音楽、演劇、スポーツかもしれません。そして、心の準備ができたら、思い切って挑戦してください。在学中から、やりたいことを思い切ってやってみる。それによって得られたものを糧に、人生を切り開いていってください。それが早稲田らしいと言える生き方です。早稲田は、その準備に最も適した大学だと思っています。素晴らしい学生生活を送ってください。

 

総長撮影:飯島裕

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