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特集

権限によらないリーダーシップとは? 全学オープン科目で学ぶライフスキル

グローバルな視点で課題解決に貢献できる、人間力・洞察力にあふれた真のリーダーを育てたい――そんな早稲田大学が掲げるビジョンを遂行し、グローバルリーダー育成を支えるグローバルエデュケーションセンター(Global Education Center:以下、GEC)では、学部・学科の枠を超えて、約2,400科目にも及ぶ全学オープン科目を展開しています。「たくましい知性」と「しなやかな感性」を持った、人類社会に貢献するグローバル人材に必要な「人間的力量」。GECが提供する多種多様な学びの中から、今回は人間的力量の育成に欠かせない「リーダーシップ開発プログラム」について紹介します。「リーダーシップは組織のトップに立つ人だけに必要な能力ではない」と話す日向野幹也教授に、リーダーシップの意味やプログラムの内容などを伺いました。2021年度春学期の履修計画にぜひ役立ててください。

「不満を提案に変えるリーダーシップ」は、日々の行動に生かせる、誰もが身に付けるべきライフスキル

グローバルエデュケーションセンター 教授
日向野 幹也(ひがの・みきなり)

 

「リーダーシップ」の基礎を標語として掲げる日向野教授

1978年、東京大学経済学部卒業。1983年、同大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士号(東京大学)取得。1983~2005年、東京都立大学経済学部に勤務(講師、助教授、教授)。2005~2006年、立教大学社会学部教授。2006~2016年、立教大学経営学部教授。2017年3月まで立教大学経営学部BLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム)主査及び立教GLP(グローバル・リーダーシップ・プログラム)主査。2016年より早稲田大学大学総合研究センター教授。2020年より早稲田大学グローバルエデュケーションセンター教授。BLP立ち上げを機に、経済学からリーダーシップ開発に専攻をシフト。主な著訳書に『高校生からのリーダーシップ入門』(ちくまプリマー新書)、『大学教育アントレプレナーシップ:いかにリーダーシップ教育を導入するか』(増補版、Bookway)、『リーダーシップの探求』(監訳、早稲田大学出版部)などがある。

 

――「リーダーシップ開発プログラム」では、どのようなことを学ぶのでしょうか? 概要を教えてください。

このプログラムで学ぶ「リーダーシップ」とは、いわゆる組織のトップや、カリスマ性のある人だけが持つ能力ではありません。今や世界のスタンダードである、組織のあらゆる階層の一人一人が発揮すべきスキルとしてのリーダーシップ、その修得を目指すことを目的としています。

もともと、リーダーシップの最も広い定義として、「成果を達成するために、他者に影響力を与えること」があります。この影響力の源泉は、かつては「権限」にあるとされていました。それが今日では「一人一人の態度やスキル」である、という認識に変わってきたのです。

それでは、どのような「スキル・態度」が他者に良い影響力を与え得るのか。本プログラムでは、「権限によらないリーダーシップ」を発揮するための指標として、以下の三つを挙げています。

  • 目標を設定し共有する「目標共有」
  • その目標達成のため、自ら行動で示す「率先垂範」
  • チーム内でうまく活躍できていない人を支援し、自分からも支援を求める「相互支援」

履修生の皆さんには、「天賦の才能」としてのリーダーシップではなく、学生のうちから身に付けるべきスキル・態度として、この三つの習慣を学んでもらいます。

不確実で曖昧な問題を抱える今の世の中では、「人々の努力を結集し、動員すること」の価値が高まっています。こうした状況でリーダーに求められるのは、チームの調和を図り、各人がリーダーシップを発揮しやすい環境を作り出す力です。

一方で、気を付けるべきは、チームを引っ張ろうとして、メンバーを次々に論破してしまうこと。これはリーダー自身の孤立を招きやすいので、避けるべき行動です。同時に、自分だけで問題を解決しようとするのではなく、周囲に支援を要請することもリーダーシップの一種であることを、プログラムを通して学んでほしいと思います。

アクションラーニング(熟達したコーチの下、グループで問題解決と相互支援を練習する会議手法)のセッションの様子(2018年度)。2019年度にカリキュラム改編があり、現在は「他者のリーダーシップ開発1・2(OD1・2)」で実施している

――科目について教えてください。

プログラムの基盤となる「リーダーシップ開発:理論とスキル」「リーダーシップ開発:問題解決プロジェクト」の2科目に加え、リーダーシップを日常生活で発揮したい場合や、卒業後に生かしたい場合、他者のリーダーシップ開発に携わりたい場合など、クォーター制で目的別に履修できる科目を多数用意しています。

まず、「リーダーシップ開発:理論とスキル」でリーダーシップの基本を学び、次の「リーダーシップ開発:問題解決プロジェクト」では、企業から与えられる課題に対して、グループ単位で解決策を提案するコンペティションに取り組みます。そうした一連の活動を通して、リーダーシップのスキルを活用する成功・失敗体験を重ねていきます。

プログラム成功の鍵となるのが、活動の最後に学生同士で行う「振り返り」です。というのも、リーダーシップの評価は、他人に対する影響力によるからです。つまり、チームメンバーに自分の行動がどう捉えられたかをフィードバックし合うことが肝心なのです。

しかしながら、仲間から課題点を指摘されると、人格をまるごと否定されたような気がして不安になってしまいます。そこで、最初は良かったことだけをフィードバックするというルールとし、信頼関係ができたところで徐々に改善・提案を入れていき、互いの意見を受け入れ合える「安全で安心な環境」を作っていきます。こうして、履修生はポジティブな意見もネガティブな意見も受け止め、次に生かすことができるようになるのです。

――どのような早大生にリーダーシップ開発プログラムをお勧めしたいですか?

これまで部活やサークル、クラスなどにおいて、リーダーシップを取るべき立場で苦労した人や、逆に「なぜ自分はリーダーシップを発揮できたのか?」と疑問を持っている人。あるいは、「自分は内向的で他者との協同ができない」と思っている人も学ぶ価値は高いと思います。特に内向的な人は、共通の目的の下、他者と協力することの有効性を実感できるはずです。

リーダーシップは「就職に有利だから学ぶ」というだけにとどまらず、どんな場面でも発揮されるものです。例えば、友人と二人の間に「所属しているサークルを活性化する」という共通の目標ができたら、そこはリーダーシップの出番です。リーダーシップは日々の行動一つ一つに生かせる、誰しもが身に付けるべきライフスキルです。これまでのリーダー経験の有無にかかわらず、多くの早大生に履修していただきたいと思います。

2020年度のオンライン授業の様子

――最後に、早大生へのメッセージをお願いします。

リーダーシップは、一部の限られた人だけのものではありません。将来のためになるだけでなく、在学中からすぐに活用できます。日頃から不満を抱え愚痴を言っていた人も、リーダーシップを修得すると、その不満を提案に変え、仲間と目標に向かって進めるようになるのです。

今年度はコロナ禍で授業がオンラインに移行しましたが、教員と学生の両方の努力で対面と同等、あるいは対面以上のメリットのある授業を作ることができています。それは、授業を作る過程においても、互いにリーダーシップを発揮し合うからです。こうした相乗効果を体験できるのがリーダーシップ開発プログラムです。全学オープン科目ですので学部、学年を超えて履修できます。皆さんも参加しませんか?

【履修生の声】リーダーシップ開発プログラムに興味を持ったきっかけは? 修得したスキルは?

自身の言動を常に振り返り、他者に与える影響を考える姿勢が身に付いた

社会科学部 4年 佐藤 萌(さとう・もえ)

高校生まで生徒会長や部活の部長など、リーダーを任されることが多く、その役割の難しさを感じていました。そこで、1年次に履修したのが「リーダーシップ開発」です。この授業を履修したことで、目標に向かい仲間と協力するときだけでなく、友人との何気ない会話においても自身の言動を常に振り返り、他者に与える影響を考える姿勢が身に付きました。

人間関係や組織における悩みは誰もが抱えるものだからこそ、授業では学生同士で深い議論をすることができました。リーダーシップという言葉のイメージに惑わされず、漠然とでも何かを頑張りたいと思っている人や、早稲田の個性豊かな仲間と出会いたいと思っている人は、ぜひ履修してみてください。深いつながりの中で、切磋琢磨(せっさたくま)できる仲間をきっと得ることができますよ。

写真左:リーダーシップ開発プログラムの履修をきっかけに、クラスメートと参加したビジネスコンテスト「キャリアインカレ2018」にて。参加348チーム中、全国1位に輝いた(中央が佐藤さん)
写真右:2年生以降は、TA(ティーチング・アシスタント)として履修生をサポートすることも(右が佐藤さん)

組織が結果を出すために有効なチームメンバーへの傾聴の姿勢や、丁寧な質問の仕方などのスキルを修得

人間科学部  4年 鈴木 登偉(すずき・とうい)

中高生の頃、リーダーの役割を担うことが多かったのですが、学級委員の同級生が活躍しているのを見て、自分も同じように輝きたいという思いを抱えていました。大学入学後、「リーダーシップ」というキーワードに引かれて履修した「リーダーシップ開発」では、全学年・学部から学生が集まる中、多様な経験を持つ先輩や同級生の姿に大きな刺激を受けました。

その中で、組織が結果を出すために有効なチームメンバーへの傾聴の姿勢や、丁寧な質問の仕方などのスキルを修得。参加した長期インターンや、所属していたサークルでは、先輩や後輩、役職に関わらず、組織の一員として改善点や自分の意見を効果的にチームメンバーに伝えることができるようになりました。春から就職しますが、社会人1年目という立場においても、組織の全体像を捉えた上で自分の意見を効果的にしっかりと伝え、学んだリーダーシップを発揮していきたいと思います。

写真左:プログラムで使用したテキストや書籍
写真右:授業で学んだことを生かして、2019年8月に中央大学の学生と開催した「組織開発」のワークショップでの一コマ(右から3人目が鈴木さん)

学部・学年を問わずに学べる科目が2,400以上。全学オープン科目を活用しよう

GECでは、全学部の学生が、専門分野に限らず全く異なる分野も学習できる多種多様な科目を展開しています。

全ての学問の基礎となる大学生の必須スキルとして設置しているのが、アカデミック・ライティング科目(「学術的文章の作成」他)、数学科目(「数学基礎プラス(金利編)」他)、データ科学科目(「統計リテラシー」「データ科学入門」他)、情報科目(「情報科学の基礎」「プログラミング入門」他)、英語科目(「Tutorial English」「Academic Writing and Discussion in English」他)です。

データ科学科目(左)と英語科目(右)の授業の様子

また、リベラルアーツ教育として、国際教育科目(「グローバル・スタディーズシリーズ」他)、日本語教育科目(「日本語教育学入門」他)を提供しています。さらに、早稲田大学以外では学ぶ機会の少ない言語科目(「アイヌ語」「バスク語」他)や、特色ある多数のスポーツ実習科目(「ラグビー」「弓道」他)なども設置しています。

「人間的力量科目」と呼ばれる科目群には、今回紹介した、チームで議論しながら結論を導く「リーダーシップ開発プログラム」をはじめ、国内・海外での実習や、企業などと共同で実施するワークショップといった、問題解決型・体験型の実践的な学びを多く取り入れています。

ボランティア科目の実践講義

学生の皆さんは、所属学部における専門知識やスキルの修得と共に、全学オープン科目を大いに活用して充実した大学生活を送ってください。

GECのプログラムガイド

▼全学オープン科目の履修方法について

学部要項・学部の科目登録の手引きを読み、全学オープン科目履修ガイドを確認の上、所定の科目登録期間に履修申請を行ってください。

科目登録ガイド(GEC)

 

取材・文=萩原あとり

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