Waseda Weekly早稲田ウィークリー

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ネット販売にはない魅力がある?早稲田青空古本祭から始める古書入門

早稲田の地は日本でも有数の古書店街の一つですが、その理由は早稲田大学の存在にあると言っても過言ではないでしょう。昔から「大学のそばに古本屋あり」というのは常で、東京大学のある本郷や、明治大学・日本大学・専修大学などのある神保町は言わずと知れた古書店街です。

古書は、単に「中古」と言ってしまえばそれまでですが、「セカンドハンズ」と言ってみるとまた趣が変わり、人から人へと手渡されていくイメージが付加されます。古本屋はその橋渡し役。店ごとに棚の構成が違うのも魅力で、新刊書店にはない店主独自のこだわりが見られます。読書の秋、目的を持って図書館や新刊書店に行くのとは違った「出合い」を求めて、早稲田の古書店街を巡ってみるのはいかがでしょうか。

早稲田青空古本祭に行ってみよう!

学生にとって古本屋の敷居を跨(また)ぐのは意外とハードルが高いもの。「うかつに入って行ったらお門違いなのではないか」「下手に本に触れると強面(こわもて)の店主に怒られるのではないか」と不安を抱いている人も多いのでは!?

そんな人は早稲田キャンパス構内で春と秋の年2回開催されている「早稲田青空古本祭」を覗いてみてはいかがでしょうか。毎回、早稲田の古書店を中心に十数店舗が集まり、学生・教職員のために選りすぐりの古書が並べられます。店主との距離も近く、早稲田の古本屋入門にうってつけ。11月11日(月)から早稲田キャンパスで開催されている青空古本祭の実行委員長、「三楽書房」店主の安藤さんに古本祭や古本屋の魅力についてお話を伺いました。

「お客さんに育ててもらうのが古本屋です」

「早稲田青空古本祭」実行委員長
三楽書房 店主 安藤 章浩さん

――そもそもこの古本市が始まった経緯を教えてください。

早稲田大学構内での「早稲田青空古本祭」は「青空古本堀り出し市」という名称で1997年から始まり、今回で28回目を数えます。もともとはそれ以前から毎年10月に戸山キャンパスの向かいにある穴八幡宮の境内で行われていた古本祭ですが、「大学内でも開催したい」という当時の総長である奥島孝康先生(早稲田大学第14代総長)の願いが成就する形で、年に1回、5月に早稲田大学構内でも行われるようになりました。2014年に穴八幡宮での古本市が開催されなくなったのを機に名称変更し、2015年からは5月と11月の年に2回、「早稲田青空古本祭」として開催しています。

穴八幡宮境内で行われていた「早稲田青空古本祭」の様子

――「早稲田青空古本祭」にはどのような古書店が集い、どんな種類の本が並んでいるのですか?

今回は、早稲田にある古書店8店舗と早稲田以外からも6店舗が参加し、計14店舗が集います。お店ごとの雰囲気や扱うジャンルは本当に多種多様です。日本や海外の文学作品から、哲学や宗教、法律などの学術書、音楽や美術、サブカルチャーに関する書籍まで、オールジャンルの古本が並びます。全国各所で毎週のように古本市は開催されていますが、とりわけ他の古本市と比べると全体的に学術書の割合が多いのが特徴だと思います。『世界の名著』(中央公論社)や法律書など、他の催事ではまず売れないものが売れるのは本当に「早稲田青空古本祭」ならではだと思いますので、そうしたニーズに合うお店に私から声を掛けています。

(左)早稲田関連の図書ばかりを集めた棚が成り立つのもキャンパス内の古本市ならでは
(右)ワゴンの中には岩波文庫など、いわゆるカタめのものが多くを占めている

――大学内で古本市を開催する意義はどこにあると思われますか?

大学構内で、この規模で行われる古本市は恐らく早稲田大学だけで、大学生のニーズに応えた唯一無二の機会になっていると思います。そもそも古書店というのは、歴史ある大学の界わいに多くある学生街に根ざしたもので、学生との関係は切っても切り離せません。早稲田の街にも、神保町の古書店街に次ぐ数のお店が連なっています。まずはその存在を早大生の皆さんに知ってもらうためにも、大学内で開催する古本市は良い導入になると思っています。

屋外での催事のため、値の張る本は出しづらく、また並べられる本の数も限られることで、どうしても導入向きの本が多くなってしまいがちですが、ぜひ棚に並べられたラインナップからお店の特徴を知ってもらって、実店舗にも足を運んでほしいと思っています。そのため古本祭では、実は店頭よりも少しだけ安い価格で販売しているんです。学生さんの中には古書店そのものの認知がないこともあり、その独特な空気感から最初はちょっと入りづらい…と思う方もいるでしょう。でも安心してください。古本屋店主は強面ほど優しかったりしますので(笑)。

会期中の様子。早稲田キャンパス10号館前に張られたテントの中には約3万冊の本がひしめく

最近は、留学生のお客さんの多さも強く実感しています。日本のことを学びに来た留学生が国文学や日本史の書籍を求めてやってくる様子は、他の古本市ではあまり見られない光景です。利便性を上げるためクレジットカードや電子マネー決済にも対応しているので、ぜひ気軽に訪れてみてください。

――新刊書店やオンライン書店と比べた“古書店の良さ”はどんなところですか?

欲しい本を目掛けて古書店へと足を運ぶのもいいですが、ぜひ“欲しい本の両脇にある本”にも注目してみてください。同じジャンルの本でも、今まで知ることがなかった本に出合ったり、異なる発見があるのではないかと思います。それはインターネットでは得られない、古書店に出向いてこその魅力かもしれません。欲しい本の横へ横へと手を出していくと、どんどん興味の幅が広がっていく。戦前の名著やジャンルを深掘りした書籍まで、新刊書店にはない本に巡り合うこともありますよ。

――安藤さんが店主を務めるお店「三楽書房」の特徴についてもお聞かせください。

三楽書房は、高田馬場から早稲田に向かう早稲田通り沿いに位置する古書店です。いわゆる早稲田古書店街にあるお店の一つですね。1956年に開店し、かれこれ60年以上の歴史を刻んでいます。お店の書棚には、日本・海外文学作品、哲学・思想書、美術書などを中心に、幅広いジャンルの古書を並べています。古書店を長く続けていると売買を通じて同じジャンルの本が集まってくるものなので、深いところまで取り揃えることができていると思います。でもその背景には「お店が売りたい本を売る」というスタンスではなく、お客さんからのリクエストに応えることで古本屋もまた学んでいく、いわば古本屋はお客さんに育ててもらっているという感覚もあるのだと思います。そのような考えでやっていますので、求めている本があれば気軽に相談してみてください。

――最後に、早大生へメッセージをお願いします。

本や古書店に少しでも興味があれば、まずは恐れずにお店に入ってきてほしいですね。早稲田通り沿いを中心にこの街には個性あふれる古書店が点在しているので、いろいろ回ってみるのも楽しいと思います。世の中に多く出回っている基本書や良書ほど古本屋では安く出すという特徴がありますので、これまであまり読書になじみがなかったという方も、100円均一の本でもいいので自分が気になるジャンルのものを1冊手に取って読んでみてください。そうすれば世界が大きく広がっていくはずです。まずは、授業の合間や放課後にでも、早稲田キャンパス10号館前で開催している「早稲田青空古本祭」へ。皆さんのご来場をお待ちしています。

取材・文:原 航平

三楽書房
住所:東京都新宿区西早稲田3-21-2
TEL :03-3203-8995
Mail:[email protected]
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜・祝日
取扱分野:日本・外国文学、思想、美術、古書全般

第28回 早稲田青空古本祭
開催期間:2019年11月11日(月)~16日(土)10:00~19:00(最終日は17:00まで)雨天決行
会場:早稲田キャンパス10号館前スペース
その他 :クレジットカード・交通系電子マネー可、宅配便全国発送対応、毎日補充
Twitter:@wasedaaozora

表紙画は人気漫画家・故 永島慎二さんによるもの。裏面マップ付きの現物は「早稲田青空古本祭」会場や参加店の店舗で配付している

早稲田の古本屋に繰り出してみよう!

キャンパス内での青空古本祭が終わったら、今度は実際の店舗に足を運んでみましょう。古本祭参加店店主や利用学生の声を聞きました。

虹書店

オールジャンルを扱うことの多い早稲田では、数少ない専門書店の一つ。均一棚には1冊20円からという、他店にはない低価格設定も魅力。店名はロシアの作家ワシレフスカヤの作品で、虹が出現する美しいラストシーンに感銘を受けたことから先代が命名したそう。

店主から一言 「世界の現代史を主に扱っていますが、とりわけ沖縄関連の書籍は本州随一ではないでしょうか。大学の図書館にもないものもあると思いますよ」

店主の清水康雄さん

虹書店
住所:東京都新宿区西早稲田3-1-7
TEL :03-3203-5986
営業時間:10:00~18:00
定休日:日曜
取扱分野:法学、政治、経済、思想、哲学、近現代史、戦争、沖縄、朝鮮、アジア、学生運動等、社会科学全般

 

三幸書房

語学のテキストに力を入れている。最近では理工書籍の仕入れも少しずつ増えてきているそう。浮世絵プリントなども販売しており、興味を持つ留学生も多いとか。

店主から一言 「なるべくいろいろな人が楽しめるように屋外コーナーの入れ替えを意識しています。50~100円の文庫や漫画からでも興味を持って入ってきていただければ」

店主の飯島悟さん

三幸(みゆき)書房
住所:東京都新宿区西早稲田2-10-18
TEL :03-3203-6539
営業時間:11:00~18:30
定休日:日曜・祝日
取扱分野:文学、趣味、古書全般

 

 

浅川書店

日本・海外の文学全集を主に取り扱っている。店頭のラックには図録や雑誌のバックナンバーなどが出ることも多い。

店主から一言 「古本屋の敷居は高いと感じている方も一昔前にはいたようですが、今はどうでしょうか。本のことで分からないことがあれば、気軽にお店に立ち寄りご相談ください」

浅川書店
住所:東京都新宿区西早稲田2-10-17
TEL :03-3203-7549
営業時間:10:00~18:00
定休日:日曜
取扱分野:思想、哲学、近代文学、外国文学、演劇、全集 他

 

 

 

 

戦後に大移動!?早稲田古書店街の今昔
現在、「早稲田の古本屋」といえば早稲田大学と高田馬場駅を結ぶ”早稲田通り”沿いに展開されていますが、早稲田古書店街の歴史をまとめた『早稲田古本屋街』(向井透史著)によれば、戦前は早稲田大学正門から神楽坂・江戸川橋方面に延びる”早大通り”沿いに並んでいたといいます。
同書によると、そもそも早稲田の古本屋の発祥は1903年に河鍋書肆という古書店が、現在の鶴巻町の辺りに開業したことに始まり、その後、関東大震災(1923年)後には「山の手銀座」と言われることとなる神楽坂の発展とともに、早大通り(旧鶴巻通り)(1902年開通)を中心にして、次々に古本屋が開業し古書店街を形成しました。しかし、震災以後の新宿の急速な発展、山手線の環状化(1925年)や飯田橋駅開業(1928年)、早稲田通りの拡張工事(1928年)など、さまざまな要素が絡み合い、人々の動線は次第に高田馬場駅へと延びて行くこととなりました。このような背景の中で、次第に早稲田通り沿いにも古本屋が開業し始めたといいます。
そんな折、1945年の東京大空襲で、早大通り・神楽坂は壊滅的な被害を受け、一面焼け野原となりました。その中で奇跡的に高田馬場駅へのと続く早稲田通り沿いは戦火を免れたのだといいます。以降、明治から続いてきた戦前の「早稲田古書店街」の名は、早稲田通り沿いの古書店街へと受け継がれて行くこととなりました。現在営業している早稲田古書店街の店舗は、そのほとんどが戦後の創業だといいます。参考:
向井透史『早稲田古本屋街』(未來社、2006年)
『早稲田ウィークリー』2007年10月25日掲載 「ワセ歴ー第10回 戦前・戦中・戦後の早稲田街ー」
『早稲田ウィークリー』1274号 「早稲田に歴史ありー早稲田の学生街① 戦前の鶴巻町界隈ー」

 

「フラフラ、ウロウロで楽しむ早稲田の古本屋」

大学院経済学研究科 修士課程 1年 清水 拓也(しみず・たくや)

古本屋に関する記事を、とのことですが、私は古本屋に足繁く通うへビーユーザーというわけではありません。「古本屋マニア」の方々からは、「ニワカが適当な事を言うな」と怒られてしまうかもしれません。でも、折角の機会なのでフラフラと古本屋をひやかしながら馬場歩きする楽しみを、ニワカなりにお伝えできればと思います。

早稲田から高田馬場に至る早稲田通り界隈には、たくさんの古本屋が軒を連ねています。店舗数は20を超えていて、東京三大古本屋街の一つに数えられています。その店構えは実にさまざま。

入ってみると、物々しい雰囲気に新聞から顔を上げない店主さん。最初はビビってしまってどの本もみんな同じに見えました。でもしばらくウロウロしていると、本から表情が浮き出てきます。厳(いか)めしい本、美しい本、熱い本、気取った本。内容という機能面のみを求めて購入する新品本や電子書籍と異なり、古本には本という「物そのもの」の輪郭や奥行き、大げさに言うなら「人」生ならぬ「本」生のようなものが垣間見えて、つい手に取ってしまいます。値段も手頃なのですが、どうせ読まないので買いません(笑)。よほどの掘り出し物があったら買います。その程度で良いのではないかと思っています。お店によっても扱う商品の得意分野が違うみたいですが、良ク解リマセン。贔屓(ひいき)の店を開拓していくのもきっと面白いと思います。本屋から本屋へ、目的も無く本を眺めながら歩いていると、頭が良くなった気がして、気分良く家に帰れます。それだけでも十分に古本屋の効能を享受できるのではないかと思います。

よく利用するお店として、「江原書店」さんと「古書ソオダ水」さんを紹介します。どちらも早稲田キャンパスの近くです。

たまには真面目な学生を気取って、広大な早稲田の本の杜に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

江原書店
住所:東京都新宿区西早稲田2-4-25 ハイネス早稲田102号
TEL :03-3202-1355
営業時間:不定期
定休日:日曜・祭日、その他の曜日も不定期
取扱分野:古書全般

古書ソオダ水
住所:東京都新宿区西早稲田1-6-3 筑波ビル2A
TEL :03-6265-9835
Mail:[email protected]
Twitter:@kosho_soda_sui
営業時間:11:00~20:00
定休日:水曜
取扱分野:日本・外国文学、詩歌句、芸術、人文、コミック

取材協力:「古書現世」店主 向井 透史

【次回フォーカス予告】11月18日(月)公開「ラグビー早慶・早明戦特集」

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