Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

障がい学生のためのキャリアセミナー 先輩に聞く就職活動と仕事の現場

希望の職種に異動できた経緯などを話す栗原剛さん

障がい者の就労やキャリア形成に興味のある学生を対象に6月2日(土)、早稲田キャンパス6号館のC Spaceで実施された、キャリアセンター障がい学生支援室共催のキャリアセミナー。早稲田大学では、障がい学生のための就職活動ガイダンスをCourse [email protected]で公開していますが、今回は初の試みとして、身体障がいや発達障がいのある卒業生を講師として招待しました。講演や座談会で話された内容は、仕事選びや働き方、コミュニケーションの取り方など、卒業生の経験談は障がい学生はもちろん、一般の学生にとっても参考になるアドバイスばかり。先輩たちの貴重な言葉の数々を紹介します。

外資系金融でエコノミスト
一般雇用と障がい者雇用 就職活動で感じたジレンマ

栗原 剛(くりはら・ごう)さん
2015年 大学院経済学研究科 修士課程修了

 迷ったら「二刀流」で使い分け

今の会社は一般雇用枠で応募しました。聴覚障がいがあり、面接官の声が聞こえないため、事前に手話通訳をお願いしました。二次面接後の選考プロセスで、実務を伴う1日インターンシップがあったのですが、そこから私だけ通常の選考プロセスから外れ、1対1の面接を20回ほど受けたのちに採用となりました。

一般雇用か障がい者雇用か…どちらで応募するか悩むところだと思いますが、とりあえず二刀流として使い分けてもいいと思います。入りたい会社が障がい者の募集をしていなかったり、していたとしても業務が単純作業だったりする場合は、一般雇用枠で申し込む一方で、希望の業務に必ず就くことができる会社であれば、障がい者雇用枠で申し込むという方法もありだと思います。

外資系の「自由と責任」に共感

インターンシップなどを通じて、外資系企業の「自由と責任」を重んじる風土が自分には合っていると感じました。

入社後はビジネスマネジメントを担当する部署に就きましたが、以前からマーケットなどの調査に関わりたいと思っていたので会社に希望を出し、投資戦略を立てるストラテジストとエコノミストの職へ異動することができました。今の肩書きはエコノミストで、経済レポートの執筆や、海外投資家の対応が日常業務です。

イギリス人の上司は、筆談やチャットなどでコミュニケーションを図ってくれます。障がい者だからと特別扱いせず、遠慮なく叱るときもあります(笑)。

いろいろな人の話を聞き、選択肢をたくさん持とう!

就職については、できるだけ多くの人の話を聞いてください。その中から消去法で自分の好きなことを見つけても良いと思います。

また、選択肢をたくさん持つことも重要です。私は今の会社がとても好きです。でも将来何が起こるか分かりません。自分にとっての他の仕事、生き方などを常に考えておくことが大事だと思います。今の仕事しかないと思い込むとプレッシャーになり、生きにくくなってしまうかもしれません。

転職を経てICT関連商社で人事部採用担当
障がいの「自己説明書」を用意して自分をアピール

齋藤 浩太(さいとう・こうた)さん リコージャパン株式会社
2013年 政治経済学部卒業

学生相談室で判明

採用担当の立場からアドバイスしてくれた齊藤浩太さん

私は、予定外の業務が降りかかったり、知らない人からの電話対応など、アドリブのようなスキルが必要になると頭が混乱してしまいます。そうなると日本語も「言葉」として理解できず、「音」として流れてしまいます。学生時代は空気を読むのが苦手で周囲と合わず、うつに近い症状になりました。そこで学生相談室に行ったところ、発達障がいの一つであるアスペルガー症候群と判明しました。

社会人になると、上司の指示や意図を理解できないといったことがあり、そのまま契約満了になりました。その後、一般枠で働くのは難しいと感じ、その後、「障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)」を取得しました。

就活時には「自己説明書」を準備

企業に応募する際は、「私はこういう障がいで、こんな配慮が必要です」と記載した書類、「自己説明書」を準備しました。具体的には、言葉での理解が苦手で、複数の指示が出ると理解しにくい、初めての業務では質問や確認が増える、といった内容でした。

皆さんにお伝えしたいのは、就職活動では自分の障がいを紹介できるようにしてください、ということです。単に「精神障がい」と記載しても、先方は何がどのように問題なのかまったく分かりません。「こういう配慮が必要だ」「これは自分でできる」と、自分のアピールをしっかりしてほしいです。

また、自己紹介のためには「自身のデータ」を蓄積することが大切です。他の人ができることを自分はできないけれど、それを受け入れて就職活動をしようと、客観性を持って自分と向き合えたらいいのかなと思います。そして、一人ではつらいので、相談できる人を探しましょう。

採用見送り=ダメ人間ではない!

私は今、採用の仕事をしていますが、「採用見送り=ダメ人間」ではありません。企業が求める人物像とマッチしなかったり、他の応募者との比較など、選考結果はさまざまな要素で決まります。

また、入社した場合でも、精神障がい者で1年以上勤続できる方は、全体の6~7割しかいないという調査もあります。どうしても合わなかったら、一度辞めてもいいのです。「辞めても次があるんだ」というくらいの気持ちで就職活動をしてほしいと思います。

講演をする齊藤さん(右)と手話通訳のスタッフ

【Q&A】就活前の障がい学生が心配なことや、素朴な疑問に先輩が答えます

栗原さんと齋藤さんの体験談を伺った後に、お二人と現役学生との座談会が開催されました。就職活動における障がい開示について、また職場でのコミュニケーションについてなど、現役学生から質問が絶えず、座談会終了後も直接質問する姿が見られました。

ーー職業選択の際に重視したことは何ですか?

栗原さん:自分自身の力を見てくれると思い、外資系を選びました。また、学生時代からバックパッカーとして海外旅行をしていたこともあり、海外の人と交流することを軸に決めました。私は、営業のようなコミュニケーションを必要とされる仕事より、調査・分析をする方が好きだったので、現在の仕事に満足しています。

齋藤さん:私が重視したのは人事制度と業務内容です。私はあまり体力がないので、休日の多い企業を探しました。もう一つは、仕事の内容です。前の会社ではほぼデスクワークだったのですが、転職する際にハローワークで職業適性検査を受けたところ、「人前で話したり、サポートをすることが好きなので、人事や総務の仕事はどうか」とアドバイスされ、現在の仕事につながりました。

企業によっては求人票に「オープンポジション」としか書かれておらず、実際に何をやるのか分からない、ということも多いと思います。また業界も職種も多数あるので、自分に合う仕事を見つけるのは大変です。そこでお勧めなのが、ハローワークや登録制の紹介会社の利用です。プロフィールを登録すれば、人材紹介のプロが自分に合う仕事を選んでくれるのでストレス軽減になります。

ーー仕事でパニックになってしまった場合、どう対処していますか?

齋藤さん:一般雇用で入社した前社では、私は何度もパニックになり、結局向かなくて辞めることになりました。今の会社では、私が障がい者だということを周囲の方も認識しているので、理解があります。私が気を付けていることは、複数の業務がある場合、上司に優先順位を確認することです。順番を決めてシンプルにすることが大切だと思います。

ーー発達障がいで、指示されたことが理解できません。また、集中力が続かないのですが…。

栗原さん:自分の障がいを理解して、周りにしっかり伝えることが解決方法だと思います。私は聴覚障がいなので、何も言わなければ会議などでも議論が勝手に進んでしまいます。そういった場面で自分の障がいをはっきり伝える勇気が必要だと思っています。また、失敗しながら自分の障がいを理解することも大切だと思います。

齋藤さん:栗原さんと同感ですが、若いうちにたくさん失敗をして良かったと思っています。今は上司など、入社時から私のことを知っている方がいますが、やがてはそうした人もいなくなります。長い目で見ると、今のうちに失敗しておくことに意味があると考えています。

栗原さん、齊藤さんと、近い距離で直接質問する現役早大生

ーー人との関係を作るのが苦手です。仕事以外の飲み会やイベントなど、社会人としての付き合い方を知りたいです。

栗原さん:外資系の会社はプライベートを重視します。職場の飲み会は年に1回しか行っていません。欧米のカルチャーだと思いますが、プライベートを大事にするように言われますし、希望すれば長い休みも取れます。興味があればぜひ来てくださいね(笑)。

齋藤さん:私の会社も飲み会は数カ月に1回程度で、思ったより少ないです。その辺は会社のカラーがあるので、例えば説明会で聞いてもいいかもしれませんね。

ーークローズ(障がいを申告しない)で就活するかどうか迷います。

齋藤さん:身体的な障がいはほぼオープンになりますが、内臓機能障がいなどの内部障がいや精神障がいは、悩むところだと思います。そこで私が言いたいのは、自分自身がどうしたいかを大切にしてほしいということです。配慮がなくてもいいから、何が何でも入社したいという場合は、必ずしも言う必要はないと思います。私も前職ではそうでした。しかし、働き方を大切にしたいという方は、企業のフォロー体制も異なるため、間違いなく開示した方がいいと思います。

あなたは知ってる? 就活での一般雇用と障がい者雇用の違い

撮影=小野奈那子

【次回特集予告】7月2日(月)公開「夏休み旅行特集」

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