「うそをつかない」「言い訳しない」「約束を守る」ある有名な高校ラグビー指導者がチーム作りの基本として記している。この3つの言葉を私は「人と人とのつながりの基本」と考えている。「人と人とのつながり」はデジタルで表せるような明快なものではない。特に利害と感情が複雑に絡み合うと、時に、人は自分にとって不利なことに「うそ」をつき、「言い訳」をして、「約束」を破ることを平気でしてしまう。
窮地に立たされた時に人の本性が出る。それを私は競技スポーツで経験した。競技スポーツは究極の場面を意図的に作り出す「文化ツール」である。勝敗は明確で、何のウソもなく、言い訳はきかない。現実を受け入れ、次の目標に向かって進む。自分に「ウソ」をつかず、自分に「言い訳」せず、自分との「約束」を守る。それは今も私の中の根幹となっている。
スポーツに失敗はつきものである。失敗するためにプレイしていると思う時さえある。失敗に心を奪われる選手は敗戦へと向かう。即座に正しい「選択」「判断」を取り戻し「実行する」選手は勝利を得る。考えている時間はない。瞬時の判断である。「誠実さ」「ひたむきさ」がその根底にある。次の瞬間の行動にその人の人間性そのものが現れるのが競技スポーツなのである。
「失敗は成功のもと」と人は簡単に口にする。しかし、受け入れがたい「失敗」を認めることは容易ではない。正しく「選択」「判断」「実行」できる自分でいられるよう3つの言葉を常に心にとどめておきたい。
(Y)
第1025回